本記事は、いぐぞー氏の著書『ToDoリストですら使えなかった僕が見つけたすごい仕事術』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
「言われたことだけやる人」で終わらないための、魔法の一言
入社して数年が経ち、少しだけ仕事に慣れてきた頃。僕は、社内でも特に尊敬を集めている「シゴデキ」の上司から、ある比較資料の作成を頼まれました。尊敬する上司の役に立ちたい。その一心で、僕は自分としては珍しく、残業までして完璧な資料を作り上げました。データに漏れはないか、グラフは見やすいか、隅々までチェックして提出したのです。
翌日、上司は僕を呼び、「資料、ありがとう。すごくわかりやすいよ」と褒めてくれました。努力が報われたと、心が踊った束の間、上司はこう続けたのです。
「ただ、いぐぞーくんの仕事には、肝心なものが欠けているね」
頭が真っ白になりました。完璧だと思ったのに、何が足りないのか。呆然とする僕に、上司は静かに言いました。
「この資料を作ったのは君だ。データを集めて、比較して、作っているときに『自分ならこっちを選ぶな』とか『この数字は思ったより低いな』とか、いろいろ考えたはずだ。その『君の意見』を持って来なよ。それが俺の本当に欲しかったものだ」
衝撃でした。僕は、「仕事とは、言われたことを完璧にこなすことだ」と思い込んでいたのです。しかし、それは大きな間違いでした。上司の言葉は、それが「仕事ができない人」の発想そのものだと、僕に突きつけました。
考えてみれば当然です。上司はただ「作業」をしてほしいのではなく、何らかの「決断」をするために、その材料と、それに基づく「現場の意見」を求めています。単なるデータ収集なら、極論、AIにでも任せられます。上司は、その資料を作った「あなた」の頭脳にこそ、価値を感じているのです。上司は、必ずしも答えを持っていません。むしろ、部下が答えのヒントを持ってきてくれることを望んでいます。
もちろん、仕事の大前提として「事実(ファクト)」を正確に押さえることは重要です。しかし、上司が本当に欲しかったのは、その「事実」を踏まえた上で、そこからどのような意味を見出したのかという「あなた独自の意見(= 付加価値)」だったのです。
それ以来、僕は何かを依頼されたとき、必ず「魔法の一言」を添えるようにしました。それは、「個人的な意見ですが」という前置きです。
「ご依頼の比較資料です。個人的な意見ですが、コストと導入の手間を考えると、A社よりB社のほうが、今の僕たちには合っていると考えます」
「調査結果をまとめました。個人的な意見ですが、この機能は想定よりも使われないリスクがあると感じています」
「よけいなことを言って、もし的外れだったら怒られるかもしれない」─ そう不安に思う人もいるかもしれません。僕も怖かった時期もありました。しかし、その恐怖を乗り越える基準はシンプルです。「自分がこれを言うことで、会社のためになるか?」を考えること。
そのフィルターさえ通していれば、あなたの「意見」は、単なる感想ではなく、その仕事の価値を何倍にも高める「貴重な付加価値」になります。
あなたの仕事は、情報を右から左へ流す「作業」ではありません。もし、部下が会社のことを真剣に考えて進言した意見を、面倒くさそうに邪険にする上司がいるとすれば、自信を持ってください。その上司こそが「仕事ができない上司」です。恐れずに、あなたの「意見」を仕事に乗せてみてください。その一言こそが、あなたを「言われたことだけやる人」から、「信頼されるビジネスパーソン」へと変える魔法の一言となるのです。
上場企業でITエンジニアとしてチーム開発に従事し、プロジェクトリーダー経験も持つ。
かつては「指示の意図が読めない」「忘れっぽい」「簡単な事務作業でミス連発」の常習犯だった。新人時代、上司に「今まで何十人も見てきたけど、お前が一番使えない」と宣告され、自信を完全に喪失。しかし、「気合い」や「根性」で克服することをあきらめ、エンジニアらしく「弱みを仕組みでカバーする」スタイルへ転向した。
自分の特性に合わせて仕事の手順を再設計し、記憶や意志力に頼らない「型」を運用した結果、状況が一変。プロジェクトの危機を独自の工夫で救い、尊敬するリーダーから「外注なら2,000万円かかった仕事だ」と絶賛されるまでに成長した。本書は、自らが確立した、才能もやる気もいらない「現場の生存戦略」を体系化した初の著書。
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