本記事は、いぐぞー氏の著書『ToDoリストですら使えなかった僕が見つけたすごい仕事術』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
エナジードリンクは「未来の体力」を担保にした借金
カシュッ、プシュッ
この小気味良い音を聞くと、今でも少しだけ背筋がゾクゾクします。まるで魔法のポーション(回復薬)を手に入れたような、あの万能感。
締め切り前の正念場。ランチ後の猛烈な眠気。「あと3時間、何とか集中力を持たせないと……」─ そう思って自販機に向かい、あの特徴的なデザインの缶を握りしめる。かつての僕は、この「魔法のポーション」の常用者でした。
ある日の午後2時。クライアントに提出する大事な企画書が、まだ半分も終わっていません。ランチで食べたカツ丼のせいか、頭に分厚い霧がかかったようにボーッとして、1行も進まない。
「まずい、このままでは間に合わない」
焦った僕は、例のドリンクを一気に飲み干しました。甘い液体が喉を通りすぎると、数分後、カッと目が開き、世界に色が戻ってきたような感覚に陥ります。
「よし、いける!」
そこからの1時間は凄まじかった。キーボードを叩く指は止まらず、自分でも驚くほどのスピードで企画書が仕上がっていきます。
しかし、本当の地獄はそこからでした。
午後4時。提出まであと1時間という、まさに最終確認をすべき一番大事な時間帯。突如、ブツッと脳の電源が落ちたような感覚に襲われました。さっきまでの万能感は跡形もなく消え去り、代わりに鉛のように重い疲労感と、焦りだけが襲ってきます。
比喩ではなく、本当に「頭が動かない」のです。文字は読んでいるのに、意味が頭に入ってこない。さっきまで完璧だと思っていた企画書が、急に穴だらけに見える。
結局、集中力が戻らないまま企画書を提出し、その日は疲労困憊で帰宅しました。
そして翌朝。目覚ましが鳴っても、体が泥のように重くて起き上がれない。昨日、あれだけ前倒しでエネルギーを使ったのだから、当然です。そして、その重い体を引きずって出社した僕が、午前10時に何を手に取ったか?
そう、昨日と同じエナジードリンクです。
このとき、僕は気づきました。エナジードリンクは「回復薬」ではありません。あれは、「未来の体力」を担保にして、「現在の集中力」を無理やり前借りする「借金」なのだと。
カフェインと大量の糖分で、脳と体を一時的にブーストさせる。そのエネルギーは、どこかから湧いてくるのではなく、あなたが明日、あるいは週末に使うはずだった体力を「前借り」しているにすぎません。
そして、借金には必ず「利子」がつきます。エナジードリンクにおける利子とは、ブーストが切れた後の、より深刻な集中力の低下、気分の落ち込み、そして翌日の猛烈な倦怠感です。
この借金地獄から抜け出すのは、本当に大変でした。もしあなたが、かつての僕のように「あれがないと仕事が始まらない」と感じているなら、まずはその一本を「ゼロシュガー」のものに変えるか、あるいは代わりに冷たい水を一杯飲むことから始めてみてください。
僕たちが本当にすべきなのは、未来の自分から体力を奪うことではありません。ランチで炭水化物をドカ食いするのをやめること。5分だけ目を閉じて仮眠すること。立ち上がって軽くストレッチをすること。
エナジードリンクで「返すあてのない借金」を膨らませるより、今あるエネルギーを「浪費しない」工夫をするほうが、よほど賢明な生存戦略なのです。
上場企業でITエンジニアとしてチーム開発に従事し、プロジェクトリーダー経験も持つ。
かつては「指示の意図が読めない」「忘れっぽい」「簡単な事務作業でミス連発」の常習犯だった。新人時代、上司に「今まで何十人も見てきたけど、お前が一番使えない」と宣告され、自信を完全に喪失。しかし、「気合い」や「根性」で克服することをあきらめ、エンジニアらしく「弱みを仕組みでカバーする」スタイルへ転向した。
自分の特性に合わせて仕事の手順を再設計し、記憶や意志力に頼らない「型」を運用した結果、状況が一変。プロジェクトの危機を独自の工夫で救い、尊敬するリーダーから「外注なら2,000万円かかった仕事だ」と絶賛されるまでに成長した。本書は、自らが確立した、才能もやる気もいらない「現場の生存戦略」を体系化した初の著書。
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