本記事は、新名 史典氏の著書『成功率が圧倒的に高まる プレゼンの強化書』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

成功率が圧倒的に高まる プレゼンの強化書
(画像=Metro_Hopper/stock.adobe.com)

組織内にも多くのプレゼンテーションが存在する

大きな組織では社内プレゼンテーションがより重要になる

大きな組織では、社内プレゼンテーションの重要性は想像以上に高いものです。社外向けのプレゼンは、相手企業のメリットをしっかり示せば、合理的な判断で進むことも多いのですが、社内向けはそうはいかないこともあります。合理性だけではない、さまざまな力が働くからです。
私も多くの大企業でプレゼン研修を行ってきましたが、現場の方々からよく聞くのが「社内が一番大変なんです」という声です。
管理職になると部下指導やマネジメントだけでなく、経営層を含む上層部との関わりに多くのエネルギーを割かねばならず、その大変さはさらに増します。
こうした状況は一見ナンセンスにも思えますが、無視はできません。
組織というものの構造や力学を理解し、適切に振る舞うことが、最終的に自分の仕事を進めやすくするのです。

社内プレゼンの最大の目的は、顧客のように「相手のメリットになるかどうか」だけではなく、決裁を取り、GOサインをもらうこと。もう少し本音で言えば、「ちゃんとやるから邪魔しないでね」という状態を作ることです。

実利的な側面だけでなく、関係者のプライドを意識する

大きな組織で提案や新しい取り組みを進める際には、関係者や関係部署の「実利的なメリット」をしっかりと押さえることが第一歩です。
私自身、管理職だった頃、部下の提案を上層部に上げる際、本気で良いと思えば力を込めて伝えましたが、「まあ一応上げておくか」という提案は、やはり熱量が低くなりました。
巻き込む相手が本気になってくれなければ、提案はなかなか通らないのです。
例えば、相手部署の仕事が少しでも合理化される配慮や、負担が軽減される施策は非常に歓迎されます。また、その部署が望んでいることをサポートできる提案であれば、より協力を得やすくなるでしょう。

しかし、実利だけでは人は動かない場合があります。そこには必ず「感情」が絡むからです。特に、感情的に反発している相手に対しては、理屈で押し切ろうとしても逆効果になります。そこで重要になるのが、相手の「プライドを立てる」ことです。

私がかつて勤めていた会社は製造業でありながら、商社的な要素もあり、他社製品を仕入れて販売することもありました。しかし、製造部門の人々にとっては、自社製品こそが誇りであり、それが自社の社会的貢献だと信じています。そこに他社製品を持ち込むことは、彼らのプライドを傷つけかねません。
そこで私は、他社製品の取り扱いと並行して、製造部門の誇りを保てる案件を用意しました(いわば交渉カードでいう「別件でのサポート」)。また、他社製品の取り扱いが結果的に自社製造にもプラスの影響を与えることを示すことで、理解を得ることに成功しました。
こうした「プライドを立てる工夫」は、単なる気配りではなく、社内プレゼンテーションや提案を通すための戦略の一部なのです。

この「プライドを立てる」考え方は、私が他部署の上層部を動かすスキルの参考にした『ミドルからの変革』(長谷川博和、池上重輔、大場幸子、SAPジャパン共著 プレジデント社)にも表現されています。そこで紹介されていたのは、組織を動かす際にミドル層が果たすべき役割を整理したアプローチです。
まず前提として、組織内には必ず「賛成派」「反対派」「中立派(もしくは無関心派)」が存在します。それぞれに対して同じアプローチを取るのではなく、立場に応じた関わり方が必要です。
賛成派には積極的に協力を仰ぎ、推進力を強めます。
一方、反対派には正面衝突せず、相手の懸念や不安を理解した上で、納得できる材料を少しずつ提供します。
そして中立派に対しては、こちらの意図や全体像をわかりやすく伝え、賛同へと引き込みます。もしくは邪魔だけはされないようにします。

「実利」と「感情」の両面への配慮です。実利的メリットだけでなく、関係者の面子や誇りを尊重することが、社内の巻き込み力を高める鍵となります。
相手のプライドを守ることは、長期的な協力関係を築くための投資でもあるのです。

キーパーソンそれぞれへの対応法を整理する

組織内で物事を進める上で重要なのは、「キーパーソン」と呼ばれる人たちの存在です。
キーパーソンは決して一人ではありません。部署や役職によって立場や視点が異なり、当然ながら考え方や価値観もさまざまです。そのため、すべての人に同じアプローチで臨むのではなく、それぞれに合わせた対応方法をあらかじめ整理しておくことが欠かせません。
ここで有効なのが「コミュニケーションリスト」の作成です。関係者の名前、役割、影響力、関心事、そして好むコミュニケーションのスタイルなどを一覧化し、見える化しておくことで、誰に何を、どのように伝えればいいかが明確になります。これにより、社内プレゼンテーションの準備段階から効果的に動くことができ、巻き込み力を最大限に発揮できるようになります。
以下に事例を活用して説明していきましょう。
主に食品産業向けに洗浄剤や消毒剤を提供するという仕事をしていた私は、その効果的な使い方や現場でのオペレーションをお客様に提案していました。そのとき、自社商品だけではなく、良い商品であれば他社商品も組み合わせた提案を進めていました。
その中で、消毒剤を販売するのではなく、消毒効果のある機能水(特定の機能を持たせた水)を作り出せる他社の機械を現場に設置して使ってもらうという方法に活路を見出していました。機械製品を設置していただくことは必要ですが、それによって低コストでしかも効果をより発揮できることが見込めると考えたのです。
しかし、それは自社の消毒剤のポジションを奪うおそれもあります。
当然ながら反対意見も大いに予測されます。そこで、まずは鍵となるであろう利害関係者をリストアップし、その方々の考えと心情を予測してみました。
主な利害関係者は、6名ほど考えられました。それぞれにお考えはあるわけですが、整理してみた結果、大きく分けると3つのパターンで整理することができました。

  • 今回の提案に賛成、もしくは比較的前向きに捉えてくれそうな方
  • 今回の提案に明らかに反対、もしくはやや否定的に捉えそうな方
  • 今回の提案に賛成も反対もなく、無関心だと思われる方

それぞれへの対応の事例としてコミュニケーションのリストを示します。
それぞれに関わり方は異なります。しかし、社内での巻き込みがうまくできない方は、誰にでも同じパターンで説明をしようとしてしまいます。異なる関わり方をするためにもまずは相手を知り、整理することが第一歩です。

成功率が圧倒的に高まる プレゼンの強化書
(画像=成功率が圧倒的に高まる プレゼンの強化書)

使える資源は何でも活用する

周囲を動かすためには、自分が汗をかくことはもちろん大切です。しかし、すべてを一人で抱え込む必要はありません。むしろ、適切に資源を借りて動くほうが、結果的に早く、しかも確実にゴールに近づけます。

例えば、自分がどうしても説得できない相手がいるとしましょう。その場合は、その相手を説得できる人の力を借りればいいのです。直接同行してもらうのがベストですが、それが難しければ「●●さんがおっしゃっていたのですが……」と名前を借りるだけでも、相手の態度が変わることがあります。
また、判断材料として過去の成功事例や他社事例を提示することも有効です。これは特に、新しい取り組みに対して慎重な人に効きます。
さらに、わかりやすい資料を準備しておけば、説明がシンプルになり、余計な反論を受けにくくなります。

大事なのは、「今、自分に何が足りていないのか?」を冷静に判断することです。足りない部分を補うために、人的・物的資源を上手に組み合わせましょう。人的資源だけでも、以下のように分類できます。

  • 自分にない肩書きの力(上司や役職者から発信してもらう)
  • 自分にない専門性(専門知識や経験を持った人)
  • 自分にない人脈(接点を持っていない部署や外部とのつながりを持つ人)
  • 自分にない信頼感(相手から厚い信頼を得ている人)
  • 自分にない強制力や圧力(状況を動かせる権限や影響力を持つ人)

社内プレゼンは「自分一人の戦い」ではありません。使える資源をフルに活用することが、巻き込み力の真骨頂です。

成功率が圧倒的に高まる プレゼンの強化書
新名 史典(しんみょう・ふみのり)
株式会社Smart Presen代表取締役。
1971年生まれ。大阪府出身。大阪府立大学(現・大阪公立大学)大学院農学研究科修了後、サラヤ株式会社にて、営業・マーケティング・商品開発部門を約15年担当。大手コンビニエンスストアの食品安全保証プロジェクトでは、外資系大手との競合におけるプレゼンコンペで、18戦17勝という高い成果を収める。入社4年目には新規事業の営業統括部長に指名され、3年で年商24億円の部署に育てることに成功。
2011年10月に独立起業し、プレゼンテーション支援を主業とする「株式会社Smart Presen」を設立。研究、営業、企画、経営者と多様な立場でのプレゼン経験を基盤に、実践的な指導を展開。そのノウハウを体系化し、企業の新規事業創出・マーケティング・リーダーシップ・ネゴシエーション・部下育成など、多様なテーマでコンテンツを開発。
現在は、企業研修講師および新規事業創出プログラムの講師として、年間300回近い登壇や個別支援を行っている。研修では「丁寧な解説」「豊富な実体験」「面白い!」を追求。信条は「ビジネスは伝わってナンボ!」
主な著書に『顧客に必ず“Yes”と言わせるプレゼン』『上司を上手に使って仕事を効率化する「部下力」のみがき方』(ともに同文舘出版)などがある。

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