本記事は、小林 大祐氏の著書『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋・編集しています。
中国経済の行方は、常に日本に飛び火する
我々日本人にとって最も重要なことは、中国経済の低迷は決して他人事ではないということだ。米中貿易戦争の影響で以前よりも付き合いづらい存在になってしまったとはいえ、中国は依然としてサプライチェーンや貿易において日本と密接に関わり合う存在だ。
また、日本は安倍政権のときからインバウンド戦略に政策的依存を深めてきた。
しかし、高市首相の台湾有事をめぐる国会答弁に端を発して、2025年12月の訪日客数は前年同月比で45%減と急減した。日中関係の悪化に加えて、日中関係の悪化に加えて、中国家計の可処分所得が細って訪日需要が落ちれば、日本における地域経済への影響は無視できないだろう。
中国経済は強すぎると資源価格の高騰や輸入インフレを招く可能性もあるが、弱すぎると日本の製造業や輸出産業に直接的な打撃を与える。要するに、弱すぎても強すぎても困るという、非常に難しい存在なのだ。
現在でも中国は「世界の工場」として機能しており、我々の身近な生活に浸透している。たとえば100円ショップに並ぶ多くの商品や、さまざまな電化製品の部品は中国製だ。
中国国内では、トランプ大統領による追加関税と産業政策の締め付けで、価格引き下げ圧力から収益悪化、そして賃金・雇用への逆風という負のサイクルが止まらない。企業業績の劣化は家計の購買力を削ぎ、さらに内需を冷やしている。
迂回輸出のコスト増も中国経済を圧迫している。アメリカと西側諸国が対中依存の低減を迫られる中、第三国を通して輸出するパターンが増え、そのためのコストが積み上がっているのだ。
当然、中国製品の「安さ」という付加価値が剥落し、サプライチェーンの効率も悪化する。これがサプライチェーン崩壊へとつながれば、日本への供給に悪影響が及ぶのは避けられない。
だが同時に、これは国内生産への回帰を促す契機にもなり得る。とりわけ半導体や精密機器といった分野では、中国から日本へと製造機能の一部が戻ってくる可能性は高い。円安が進行する中で、海外で製造するよりも日本で作ったほうがコスト的に有利という局面も増えてきた。この流れが加速すれば、国内の雇用創出や収入増加といった副次的効果も生まれてくる。
ただし、これはあくまで製造業の一部に限られるので、給料が上がるとか生活必需品の価格がすぐに安くなるようなメリットが即座に現れるわけではない。
一方で、受け皿となる日本側にも課題がある。雇用が生まれる余地があっても、そもそも労働力が足りていない、ましてや高度な製造に携われる人材はさらに不足している。
そもそも、円高時代に海外へ移転した製造インフラの日本国内における整備が追いつかない可能性もあり、この点をDXや自動化で補うことができれば、経済的な好循環が期待できるのだが、そう簡単なものではなく、どうなるかはわからない。
かつてのリーマンショックと中国恒大集団の破綻を比較すると、リーマンショックはアメリカ発の自由経済の中で“毒饅頭”が世界中にばら撒かれた結果だが、一党独裁体制が敷かれる中国のバブル崩壊は影響が国内に限定されやすいという性質がある。それでも、中国が世界経済において果たす影響力は依然大きい。
ここまで多くの問題を抱える中国は、かつての日本が経験したバブル崩壊とその後の失われた30年といわれた長期停滞を辿っていくように見える。
現実には、国の規模が日本とはケタ違いに大きいだけに、そのダメージも日本のバブル崩壊とは比較にならないほど深刻になるだろう。人類史上最悪の経済停滞に陥ったと言ってもおかしくない。
そうなれば当然、日本はもちろん世界にも非常に大きな悪影響が及ぶ。内政の不満を外に向けるというのは中国の得意技のひとつだが、国民の不満が蓄積すればガス抜きとして台湾有事に走る暴発リスクは無視できない。
もし現実化すれば、地理的にリスクの高い日本の株価は暴落し、シーレーンの断絶による原油やガスの供給不安から資源価格はさらに高騰し、物流混乱が連鎖するだろう。
今後中国経済が崩壊するにせよ、再生するにせよ、その過程で必ず、多かれ少なかれ日本にも火の粉は飛んでくる。これは経済の相互依存構造上、避けられない現実なのだ。
ちなみに、現状の政権が長く続くかといえばそれも不確実で、共産党に対するクーデターが起こる可能性はゼロではない。
習近平が自身の任期を延長し絶大な権力を握り続ける状況は、当然反発を生む。
歴史を振り返れば、民衆の平穏が保てない政権は滅ぶものであり、若者の多くが職に就けないような国で秩序が長く保たれる保証はないのだ。
もし我々の生きているうちに共産党体制の転覆が起これば、それは歴史の転換点になるだろう。だからこそ、中国の動向から目を離してはならない。
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