本記事は、小林 大祐氏の著書『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋・編集しています。
「会社」は“お金がもらえる専門学校”だ
ー仕事への向き合い方が“自分のステージ”を変える
程度の差はあっても、勤務先に不満を持つ人は多いだろう。しかし私に言わせれば、会社とは給料をもらいながら勉強できるというおトクすぎる専門学校なので、文句を言う前にもっと活用するべきだ。
現実として、どんなに給料が安くても待遇が悪くても、自分一人で同じビジネスをやろうとしたらほとんどできないはずだ。取引先だって、会社の看板があってその名刺を持っているからこそ会ってくれるし、商談や交渉に応じてもらえる。
会社員だったころの私だって、富士ゼロックスの看板のおかげでトヨタ自動車にアクセスできたわけで、仮に「小林商店」だったら受付も通してもらえなかっただろう。
つまり、会社というのは給料をもらいながらビジネスの勉強をさせてもらったり、経験を積ませてもらったりできるありがたい場だ。自分が取ってきた契約は自分一人の手柄のように感じるかもしれないが、実際は3分の1程度しかない。残る3分の2は会社の看板と会社のリソースによるものである。
もちろん、会社という場には理不尽なことが多く、腹だたしい思いもたくさんするだろう。
くだらない社内調整を求められたり、無意味に思えたりする手続きもたくさんある。
しかし、それらを含めてすべてが「学び」なのである。
かつて私が勤めていた富士ゼロックスでは、年収1,000万円以上の古参社員がごろごろいた。入社したばかりのころは、「なんで大した仕事もしていないジイさんたちが高い給料をもらっているのか」と不満タラタラだったものだ。
しかし、やがて理解した。彼らが積み重ねてきた努力と歴史の上に、私たちが立っているのだと。
あるとき上司にこう言われたことがある。
「小林、車のハンドルにも“遊び”がある。遊びがなければ、真っすぐには走れないんだ。いらないものなんて、ひとつもない」。
当時の私は若かったので、上司のこの言葉の意味がまったくわからなかった。
それでも、自分が部下を持つようになると、なんとなくわかってきた。
自分一人で動いていたときには、ゴリ押しでも成果が出せたし言いたいことも言えたが、後輩や部下を持つという立場であまり乱暴なことをすると、部下にも冷や飯を食わせることになる。だからこそ、根回しや関係性の構築といったスキルが必要になる。
こうしたスキルは独立しても必要なのだが、最初から一人でやっていたら身につかないし、そもそも必要性もわからない。取引先の担当者に対しても、その人が属する社内の事情を理解したり、立場を慮ることもできないだろう。これは組織の中でこそ気づき、磨かれる力なのだ。
組織の中でのふるまいは、単なる一例に過ぎない。たとえば勤怠管理ひとつとっても、ICカードを使った入退室管理など、一つひとつのシステムがノウハウの塊だ。研修だってそうだ。営業部門では研修に行きたがらない人が多いが、私は喜んで行った。
なぜなら、そこで得られる「フレームワーク」が宝の山だからである。論理展開、構成、資料の作り方、プレゼンテーションの仕方など、すべてがノウハウなのだ。
私の若いころは、堀江貴文氏やグッドウィルを創業した折口雅博氏、光通信の重田康光氏といった起業家が時代の寵児となっていたが、私は大手企業グループに入って良かったと思っている。
ベンチャーは機動力と意思決定の速さがあるし、大手では経験できない幅広いスキルを蓄積できるというメリットはあるが、教育プラットフォームとしては大企業のほうがすぐれていると思うからだ。
特に上場しているような企業は長い間事業を成長させ、優秀な人材を集め続けている。
私も営業パーソン時代にトヨタ自動車を担当したが、やはり日本を代表するグローバル企業は取引先に対しても求めるレベルが非常に高く、そこから得た学びは大きかった。
会社や組織というものがどういうプロセスで意思決定し、動くのか、何を好み何を嫌がるのか、それを身をもって経験した人とまったく知らない人とではビジネスをやっていくうえで天と地ほどのスキルの差が生じるだろう。
とはいえ、ベンチャー企業や中小企業に学びがないわけではないから安心してほしい。学ぶところがない会社は、とっくにつぶれているはずだからだ。もうこの会社からはすべて吸い尽くした、学ぶべきものはもうないと思えた時点で、転職や独立を考えても遅くはない。
ちなみに今、私がセミナーで使っている資料の構成や論理展開は、富士ゼロックスで培ったフレームワークが基礎になっている。会社員生活は宝の山であり、その恵まれた環境に早く気づいてほしい。
『金持ち父さん貧乏父さん』の著者のロバート・キヨサキは労働者から一足飛びに経営者・投資家を目指せと説いているが、私はまず労働者としてスキルを磨き、それを自らの事業として形にしたうえで、余剰資金で投資を始めるべきだと考えている。
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