本記事は、小林 大祐氏の著書『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋・編集しています。
生成AIに乗り遅れた瞬間、企業は“終わりのカウントダウン”が始まる
ChatGPTをはじめとする生成AIの登場は、私たちの仕事や生活を大きく変えようとしている。その精度はもはや「効率化ツール」というレベルを超えており、会話形式で精度の高いアウトプットを瞬時に提供し、業務のプロセスそのものを再設計してしまう力がある。
私自身、日々の仕事で生成AIのお世話になっているのだが、強く感じるのは「使う人と使わない人の差」が極端に広がっていくという現実である。調べものや企画はもちろん、秘書的な業務まで、ほんの数行のプロンプト入力で完結するようになった。結果として、人の労働時間と労働価値の意味そのものが揺らいでいる。
私はYouTube動画のシナリオを考える際も、ChatGPTの力を借りている。ChatGPTにある程度企画やたたき台を考えてもらってそれをブラッシュアップしていけば、ゼロから考えるのに比べると圧倒的に速いスピードで完成することができる。
新規ビジネスを計画している場合でも、スケジュールに費用見積もり、発注先まで考えてくれる。なんならそれを全部Excelにまとめて、工程表も作ってくれる。
もう従業員はいらないくらいだ。
これはある意味恐ろしい話でもあるが、極めてフェアだ。なにしろChatGPTは基本的な機能は無料で使えるし、多くの業務は課金しないままで事足りるので、すべての人に与えられたチャンスでありツールだといえるからだ。
不動産投資の現場も劇的に変わりつつある。従来ならベテランだけが感覚的に捉えられていた勘どころが、プロンプトひとつで可視化され、再現可能なものになりつつあるのだ。
私がコンサル先に提供している不動産購入支援コンテンツでは、特にヒアリングのプロセスを重視している。どんな投資戦略を立てるにも、まず顧客や現場の声を聞き取ることが重要だからだ。
しかし多くの人が、ヒアリングのやり方すらわからない。そこで私たちは、トークスクリプトの構造を学ぶワークを取り入れ、AIでその最適化を行っている。
今やそのロールプレイも、生成AIが瞬時に補助してくれる。
たとえば、不動産会社に電話をかけるときの話し方や順序、注意点、金融機関との交渉で気をつけるべき点などを生成し、練習相手になってもらえば即座に実務へと応用できる。
さらに、地域の特性やエリアごとの需要分析といった視点も、AIに聞けば、生活保護率や犯罪率、平均世帯年収など、社会的背景まで含めた「準オーダーメイドのレポート」が手に入る。
もちろん、AIに頼り切りになることは危険だ。AIが持ってくるデータはそれ自体が完全ではないし、誰でも取れる類いのものだ。そこに自分で聞き出す現場の声やリアルな情報を組み合わせることで、初めて価値が生まれる。
AIに大量のデータを分析してもらって相場観を把握したうえで、地域の不動産業者にあたり、AIで生成したトークスクリプトを活用してヒアリングをすることで、本質を突いた質問ができ、有利な投資につながる情報が得られるのだ。
私が見る限り、成功している投資家や仕事ができるビジネスパーソンはAIを自らの実務に組み込むのが非常にうまい。必要なプロセスの中には人が担うべきものとAIが得意なものがあるが、後者を上手にピックアップしてAIに担わせ、効率化だけでなく自身で下す判断の質を高めているのだ。
新しいテクノロジーについて「知っているか」「活用できているか」で、もはやその人やパフォーマンスがまったく異なってくるのだ。
企業の場合も、まったく同じだ。生成AIをいち早く導入し、業務プロセスに組み込んだ企業は、生成AIがなかったころに比べてあらゆる業務のスピードが大幅にアップする。重要な意思決定により時間をさけるようになるので、より適切な判断ができるようになり、成長が加速する。
逆に、様子見を続け、旧来のやり方を温存したままの企業は、生成AIを活用している企業と競うことはできず、衰退していくだろう。
AI活用の本質は、判断の高速化だ。意思決定の速度が経営の競争力を左右する時代において、生成AIの導入はもはや選択肢ではなく必須のインフラだ。
AI時代の生き残りの条件は、企業の規模や歴史ではなく、順応できるかどうかなのである。
一方で、生成AIがあらゆる業務を代替するようになれば、逆説的に「人間であること」が価値を持つことになるだろう。特に人によるコミュニケーションはAIが完全に取って代わることのできない領域だ。
たとえば、友人に飲食店経営者、夜の接客業を経営している人がいるのだが、キャストの求人に苦労している。しかし、いずれ夜の接客業、いわゆるキャバクラで接客する女性もその多くが容姿端麗で完璧な応対をするAIロボットに置き換わるだろう。
ただ、おそらく10人に1人ぐらいは人間が残っていて、その接客スキルや容姿にかかわらず、会話や気遣いに関しての心の温かみを感じられる人間であるという点が評価され、指名ナンバーワンを勝ち取ることになるかもしれない。
こうした時代に人に求められる資質は、「この人と一緒にいたい」「一緒に仕事をしたい」と思わせる人間性であり、魅力、すなわち人間力だ。テクノロジーが進化するほど、人間らしさの価値は高まるし、それは再現困難な人間の資産だ。
心と心のつながりはAIには代替できない最終領域であり、私たち人間は「人間らしさ」をどう育て、自らの存在意義を確立していくかが問われることになる。
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