税を申告する際には、様々な控除が適用される。例えば、納税者に扶養している家族、親族がいる場合には、扶養控除として所得額から控除される。ただ、扶養される中には、扶養家族、扶養親族があり、この違いは、意外と知られていない。ここでは、扶養親族の範囲・要件や扶養控除の詳細について説明する。

井上 通夫
井上 通夫
行政書士。大学卒業後、大手信販会社、大手学習塾などに勤務後、福岡市で行政書士事務所を開業。現在、相続・遺言、民事法務(内容証明、契約書、離婚協議書等の作成)、公益法人業務、各種許認可業務など幅広く担当。

扶養・親族にまつわるQ&A

扶養控除の対象
(画像=PIXTA)
Q


扶養親族とは何か?扶養家族との違いは?

扶養親族とは、納税者の配偶者以外の親族、あるいは都道府県知事から養育を委託された児童、市町村長から養護を委託された老人を指す。扶養家族はそれよりも広い範囲で、納税者が扶養している家族全体を指す。

扶養親族とは、納税者の配偶者以外の親族、あるいは都道府県知事から養育を委託された児童、市町村長から養護を委託された老人を指す。扶養家族はそれよりも広い範囲で、納税者が扶養している家族全体を指す。


Q


扶養親族の範囲は?

扶養親族の範囲は、上記で説明したように、扶養する児童、養護を委託された老人であるが、併せてそれらの人が、納税者と生計を同じにしている、年間の所得額が48万円以下であること、青色申告者の事業専従者として給与をもらっていないなどの要件がある。

扶養親族の範囲は、上記で説明したように、扶養する児童、養護を委託された老人であるが、併せてそれらの人が、納税者と生計を同じにしている、年間の所得額が48万円以下であること、青色申告者の事業専従者として給与をもらっていないなどの要件がある。


Q


扶養親族は何に影響するのか?

所得税などの税金は、年間の所得金額に課される。納税者に扶養親族がいることで、その所得金額から一定の額が控除されるため、税の負担が軽減されることになる。

所得税などの税金は、年間の所得金額に課される。納税者に扶養親族がいることで、その所得金額から一定の額が控除されるため、税の負担が軽減されることになる。

扶養親族とは?

扶養控除とは、納税者の税金を算出する際に、個々の納税者の扶養事情に応じて、一定の金額を課税所得から差し引く制度である。

税金は、収入(売上)から経費を差し引いた金額(所得額)に課税される。ただ、納税者には、個々に支出した経費などがあったり、世帯の事情があったりするため、それらを「○○控除」という方法で、所得額からさらに差し引くことができる。

所得から一定の金額を差し引くことから、一般的に所得控除と呼ばれている。所得控除には、基礎控除、社会保険料控除などがある。扶養控除も所得控除の一つだ。

扶養控除は、納税者に扶養する親族がいる場合に適用される。この扶養される親族が、扶養親族である。ただ、扶養親族がいる場合、課税所得額が減額され、税金が軽減されるため、税の公平な分担という観点から、扶養親族の要件は厳格に定められている。

扶養親族の範囲

扶養親族の範囲は、納税者の親族のうち配偶者以外の人、各都道府県知事から養育を委託された児童、各市町村長から養護を委託された老人の3種類である。

また、以上の範囲にある親族で、納税者と生計を一にする人、年間の所得額が48万円以下である人、さらに、青色申告者の事業専従者としてその年に給与を受け取っていない、あるいは白色申告者の事業専従者でないという人である。また、納税を行う年の12月31日時点で16歳以上でなければならない。

控除対象の扶養親族

ここでは、扶養対象の扶養親族について詳しく説明する。

まず1つ目は、納税者の配偶者以外の親族である。親族と言うのは、6親等内の血族と3親等内の姻族である。

親族のうち、血族とは文字どおり「血のつながりがある家族」のことで、自分の両親、祖父母、子ども、孫、兄弟姉妹、伯父(叔父)・伯母(叔母)、甥・姪などである。

親族は、6親等内の血族とあるので、1親等の両親、子ども、2親等の祖父母、兄弟姉妹、孫、3親等の曾祖父母(祖父母の両親)、曾孫(孫の子ども)、伯父(叔父)・伯母(叔母)、甥・姪、4親等の高祖父母(曾祖父母の両親)、玄孫(曾孫の子ども)、従兄弟姉妹(いとこ)、甥・姪の子ども、5親等の高祖父母の両親、来孫(玄孫の子ども)、甥・姪の孫、6親等は、高祖父母の祖父母、昆孫(来孫の子ども)、甥・姪の曾孫となる。

また、親族のうち、姻族とは文字どおり婚姻によってできた親戚、つまり義理の家族のことで、配偶者の両親、配偶者の祖父母、配偶者の兄弟姉妹、配偶者の伯父(叔父)・伯母(叔母)、兄弟姉妹の配偶者などである。

親族は、3親等内の姻族とあるので、1親等の配偶者の両親、子の配偶者、2親等の配偶者の祖父母、孫の配偶者、兄弟姉妹の配偶者、3親等の配偶者の曾祖父母(祖父母の両親)、配偶者の伯父(叔父)・伯母(叔母)、曾孫の配偶者となる。

次に2つ目は、各都道府県知事から養育を委託された児童である。「里子」と表現したほうが、わかりやすいだろう。

保護者がいない、あるいは保護者がいても育児放棄、虐待などの理由で、実の親が自分の子どもを養育することが難しい場合に、第三者が「里親」となって育てることが、里親制度である。

このような児童の養育を希望する人がいて、都道府県知事が養育に適当と認めれば、その児童は一時的か継続的に、家庭にあずかられ養育されることになる。この場合に、その児童は扶養親族となる。

最後の3つ目は、各市町村長から養護を委託された老人である。高齢者の養護は、基本的に家族や親族が行うべきものである。

しかし、先ほどの里子のように、高齢者を養護する人がいない、あるいは養護する人がいたとしても、遺棄や虐待の恐れがある場合に、各市町村長の権限で、第三者に養護を委託することができる。そのような高齢者は扶養親族となる。

扶養親族と扶養控除

●扶養控除とは

扶養控除とは、税金の申告を行う際に、扶養する親族がいる場合、課税所得額から一定の金額を控除(差し引くこと)できる制度である。

税金の申告では、収入(売上)から必要経費を差し引き、課税される所得の金額を算出する。しかし、この課税所得から、納税者の個々の事情を鑑みて、必要経費以外の金額を差し引くことが認められている。

その中で、納税者が自らの収入(給与)によって養っている子ども、親族などがいる場合に認められている控除の制度が、扶養控除である。

●扶養親族に該当する範囲

扶養控除に該当するのは、先ほども説明した納税者の親族のうち配偶者以外の人、各都道府県知事から養育を委託された児童、各市町村長から養護を委託された老人の3種類である。

ただし、いずれのケースでも、その扶養されている親族が納税者と生計を一にしている、年間の所得額が48万円以下である、さらに青色申告者の事業専従者として給与を受け取っていない、あるいは白色申告者の事業専従者でないという条件をすべて満たす必要がある。

生計を一にしているとは、納税者の収入(給与など)で生活している、または納税者が生活費を負担しているなど、家計をともにしているという意味である。また、納税者が単身赴任である、家族が留学している、家族が長期入院しているなど、生活をともにしていない場合でも、納税者が休みの日には家に帰ったり、留学している家族に仕送りしたり、入院中の家族の生活費を負担しているのであれば、生計を一にしていることになる。

つまり、生計を一にしているとは、単に同居しているという意味ではなく、生活を維持するための金 銭を納税者が負担しているということである。

次に、年間の所得額が48万円以下という意味は、パートやアルバイトなどによって、1年間に得た 収入が48万円以下だということである。例えば、子どもである学生がアルバイトで働くなどの場合に対象となる。

最後に、青色申告者の事業専従者で給与を受け取っていない、または白色申告の事業専従者でない という要件である。

青色申告、白色申告とは、個人事業主が確定申告を行う際の種別を表す。青色申告で申告したほうが控除額は高いが、その分、提出する書類が増えることになる。また、事業従事者とは、個人事業主である納税者が営む事業に従事している人を表す。

例として、納税者が商店を営んでいる場合で考えてみる。

この納税者が青色申告で確定申告を行っていて、自分の子どもを雇っている場合に、給与を支払っていないのであれば、扶養親族に該当するが、給与を受け取っていれば扶養親族に該当しない。

また、この納税者が白色申告で確定申告を行っていて、自分の子どもを雇っている場合には、扶養親族に該当しない。しかし、給与を支払った場合には、事業専従者控除を受けることができる。

扶養親族と税控除

●扶養控除の金額

扶養している親族がいる場合、控除額は、扶養親族の年齢、同居の有無によって、以下のようになる。

 種  別  扶養親族の年齢  扶養控除額
 扶養親族  満15歳以下  0円
 一般扶養親族  16歳以上18歳以下  38万円
 特定扶養親族  19歳以上22歳以下  63万円
 一般扶養親族  23歳以上69歳以下  38万円
 老人扶養親族  同居かつ70歳以上  58万円
 同居以外かつ70歳以上  48万円

※満15歳以下の扶養親族は、2011年(平成23年)に廃止
扶養親族の年齢は毎年12月31日時点での満年齢

上の表でわかるように、扶養控除は16歳以上の扶養親族がいる場合に適用され、年齢によって38 万円~63万円の金額になる。

なお、70歳以上の老人扶養親族の場合、同居しているか否かで控除の金額が異なるが、病気の治療 のために該当する親族が長期入院をしているときは、「同居」と取り扱っても問題ない。ただし、老 人ホーム等に入所しているときは、「同居以外」に該当する。

●扶養控除と年度

扶養控除が反映される年度については、所得税と住民税で異なる。所得税の場合はその年の扶養状況で判断され、住民税は前年の扶養状況で判断される。

例えば、2019年(令和元年)に申請した扶養状況は、所得税は2019年、住民税は2020年に反映されるということになる。

●親族の条件

親族の条件は、先ほど説明したように、6親等内の血族と3親等内の姻族である。

血族とは文字どおり「血のつながりがある家族」のことで、自分の両親、祖父母、子ども、孫、兄弟姉妹、伯父(叔父)・伯母(叔母)、甥・姪などである。

姻族とは文字どおり婚姻によってできた親戚、つまり義理の家族のことで、配偶者の両親、配偶者の祖父母、配偶者の兄弟姉妹、配偶者の伯父(叔父)・伯母(叔母)、兄弟姉妹の配偶者などである。

●所得税の控除額

扶養控除において、所得税にかかわる控除の金額は、この項目の最初に記入した「扶養控除の金額」である。所得額から、表の該当する金額を含めた各種所得控除を差し引いた額が、課税所得額になる。つまり、この金額に所得税がかかることになる。

●住民税の控除額

扶養控除において、住民税にかかわる控除の金額は、以下のとおりである。

 種  別  扶養親族の年齢  扶養控除額
 扶養親族  満15歳以下  0円
 一般扶養親族  16歳以上18歳以下  33万円
 特定扶養親族  19歳以上22歳以下  45万円
 一般扶養親族  23歳以上69歳以下  33万円
 老人扶養親族  同居かつ70歳以上  45万円
 同居以外かつ70歳以上  38万円

※年少扶養親族は、2011年(平成23年)に廃止
扶養親族の年齢は毎年12月31日時点での満年齢