保険料控除を使用すると自身の支払う税金の還付を受けられることはご存じだろうか?控除の利用を経験したことがない方は多いだろうが、還付金を受けられるのであればもらえるほうが良いだろう。今回は介護医療保険料控除について紹介する。
介護医療保険料は所得税や住民税の控除の対象になる
所得税とは、年間の所得から計算される税金であり会社員であれば毎月の給与から預かり金として控除されている。一方で個人事業主であれば、毎年2月に確定申告として前年度の所得を計算し所得に応じた税金を一気に納付する。所得税は、年間の「所得」から計算されるが収入=所得ではないことを認識してもらいたい。
所得とは、課税対象になる収入のことになるので、完全なる収入とは異なる部分になる。住民税に関しても納付する先が違うだけで、所得から計算される方法は共通している。所得税が国への納付であり、住民税が地方自治体への納付と考えれば分かりやすい。いずれにしても所得は税金を計算する上で必要不可欠なものであり、所得の控除対象になる項目も多数存在する。
例えば任意保険で言うと、今回紹介する介護医療保険のために捻出した保険料は控除対象になる。
所得税や住民税から控除される「生命保険料控除」とは?
前述したように、所得税や住民税は所得をもとにした計算方法が適用される。つまり所得が低ければ税金が安くなり、高ければ税金も高くなる仕組みだ。生命保険料の控除は、年間で支払った保険料に応じて一定の額を所得から控除するというもので、節税対策としても使われることが多い。
控除される保険料にはいくつかの種類があるのだが、その前に旧契約と新契約について説明する。旧契約は平成23年12月31日以前に締結した保険で、新契約は平成24年1月1日以降に締結した保険を指す。この時期を境に計算方法などの取り扱いが変わってくるので要注意だ。
旧契約について、保険の種類は「旧生命保険」と「旧個人年金保険」に分かれる。この場合の介護医療保険は旧生命保険料控除となり、最高で5万円の控除対象になる。旧個人年金保険料控除は、老後保障などの個人年金に加入している場合が対象となり、同じく最高5万円の控除が可能だ。
一方で新契約については「新生命保険」「介護医療保険」「新個人年金保険」の3つに分類される。介護医療保険は、この場合「介護医療保険料控除」に分類され最高で4万円の控除対象になる。他の2つも最高4万円の控除が可能なので、全て合わせると最高で12万円も控除される可能性がある。
介護医療保険料のうち所得税・住民税から控除される金額は?
介護医療保険も例外なく控除の対象にはなるが、前述したように契約の締結日によって旧契約による計算か新契約による計算かが変わってくる。ここでは実際に、介護医療保険料の控除金額を新旧の違いを明確にして計算するために表を作成した。
制度 | 年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|---|
新契約 | 2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円超 4万円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 | |
4万円超 8万円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 | |
8万円超 | 一律40,000円 | |
旧契約 | 2.5万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2.5万円超 5万円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 | |
5万円超 10万円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 | |
10万円超 | 一律50,000円 |
上記のとおり新契約と旧契約では計算方法も大きく変わってくる。保険会社から送付される年末調整用の証明書にも「新契約」か「旧契約」かは明確に記載されているので、注意して見ておくといいだろう。
生命保険料控除を受けるには「確定申告」か「年末調整で申告する
控除を受けるためには、まず税金を正しく納付する必要がある。当然税金の納付は毎年あるため、その年で契約した生命保険を把握しておくことが大前提だ。控除される対象は、本人か生計を一とする扶養者などの家族になる。例えば、世帯主が年末調整を行う上で被扶養者扱いになっている妻の保険料控除は、世帯主の分に含ませることが可能だ。 確定申告や年末調整では、所定の用紙に保険料控除の金額を記載し、所得の計算を行う。それ以外にも証明として保険の控除証明書を提出しなければならない。年末調整の場合であれば、企業側が保管してくれるので管理部に証明書を提出すれば問題ない。
確定申告によって生命保険料控除を受ける場合
確定申告書の中にある生命保険料控除の欄に記入する必要がある。それ以外にも証明書などの控除になる旨の根拠資料を添付して提出しなければならない。ただし、旧契約の中で年間保険料が9,000円以下のものであれば根拠資料を提出する必要はない。
年末調整によって生命保険料控除を受ける場合
年末調整では「給与所得者の保険料控除申告書」という用紙が管理部から配布される。用紙の中で左側に該当するのが生命保険料控除の欄だ。この欄に保険会社の名称や保険の種類を記載し契約者や受取人の記載、金額に至るまで、一つの契約に対していくつかの項目を埋める必要がある。
用紙の中で生命保険料控除の金額を合計し、最終的な控除額が算出される。他にも地震保険控除や小規模企業共済等掛金控除などの項目が存在する。それぞれの欄に控除金額を記載することで、企業側が所得税の調整額を計算して給与へ反映させる。年末調整において多くの場合は、税金が返ってくるケースが多い。
これは普段給与から差し引かれている所得税が、控除金額を考慮しないで計算していることによるものだ。つまり、少し多めに給与から所得税を預かっている状態になるので、年末調整で差分を従業員へ還付していることになる。
年末調整をしっかりやっているかやっていないかによって生命保険料控除の還付金を受けられるか受けられないかが変わってくるのでしっかり対応しよう。
生命保険料控除のひとつである介護医療保険料控除を賢く使おう
近年では、保険商品のバリエーションが増えてネットによる生命保険も増えてきたことから、介護医療保険の加入者も増加傾向にあるといえるだろう。そんな介護医療保険が税金との関わりがあることを今まで知らなかった人も多いのではないだろうか?
何となく書く年末調整の意味合いを理解せず、噂レベルの情報だけで完成させているケースは決して珍しくない。 年末調整や確定申告の内容を理解しておくことで、生命保険料控除のような節税対象をうまく利用できる。
年間で企業が所得税を預かっているという認識は、実際に管理部での給与処理等の業務を行ってみないとイメージがつかないのかもしれない。しかし税金対策は会社員にとっても個人事業主にとっても重要な項目であるため、何も分からないまま税金を納付してしまうと本来は節税できるはずだった部分を見逃す可能性もあるのである。
収益を増やすためには、収入を増やすことも大切だが余計な費用を抑えることも非常に重要な考え方だ。このようなことからも保険料控除は、節税対策においてポイントといえる。こうした節税対策をしっかり把握したうえで賢く生活することが大事だ。