医療保険には公的と民間がある。民間は任意加入だが、平成30年度生命保険に関する全国実態調査によると、加入率は88.5%である。日本人の多くが任意加入しているわけだが、本当に自分に合った医療保険なのか?ここでは、その選び方について紹介する。
医療保険加入前に知っておくこと
民間の医療保険は、公的医療保険の保障だけでは安心できないというニーズを満たすために登場した商品で、病気や怪我で医療機関にかかった際に保険会社から給付金が支払われるというものだ。医療保険のバリエーションは大変豊富であり、「どれに加入して良いのか分からない」と迷ってしまう人も多い。
しかし、日本の場合は医療費のほとんどが公的医療保険でまかなえる仕組みになっているのをご存知だろうか。自分のライフスタイルにふさわしい医療保険を選択するために、まずは公的医療保険の基本的な仕組みを押さえておこう。
公的健康保険とは
ご存知の通り、日本の公的健康保険は原則強制加入だ。国民だけでなく外国人も1年以上の在留資格があれば何らかの公的健康保険に加入している。
公的健康保険は、大きく3つに分かれている。会社員などを対象とした被用者保険、主に自営業者を対象とした国民健康保険、75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度である。
医療費の自己負担率は、就学前の子供は全員2割、それ以外では被用者保険、国民健康保険が原則3割、後期高齢者医療制度が原則1割となっている。ただし70歳以上では収入額に応じて3割負担になるケースもある。このように、日本は国民皆保険ではあるが医療費無料ではない。
公的医療保険には、このほか「高額医療費制度」がある。難病などの治療で高額になる手術や投薬を受けた場合でも、それに保険が適用される処置であれば、世帯収入に応じて自己負担する限度額が設けられているのだ。
結構頼りになるけれど
改めて公的医療保険の仕組みを観てみると、結構頼りになる制度であるが、これだけでは不安、あるいは満足できないという人々は多い。なぜなら、限度額があるとはいえ医療費の自己負担分は臨時出費になる。また入院では個室を希望したい、交通費や快気祝いなど医療費以外にもお金がかかるといった現実があるからだ。その上、世の中には保険適用外の診療もたくさんある。これらを受けたいと思った時、貯金などを切り崩すしかないのは避けたいからだろう。
医療保険の種類と特徴
民間の医療保障を目的とした保険は、「医療保険単体型」、「生命保険特約型」、「共済型」の大きく3つに分けられる。それぞれの特徴について紹介しよう。
医療保険単体型
医療保険単体型は、医療保障に特化した保険である。入院給付金と手術給付金を基本的な保障とし、さまざまな特約が用意されている商品が多い。
保険料掛け捨て終身保障で、がん特約あるいは女性疾病特約を組み合わせて加入するのが最もシンプルなパターンだ。中には加入後保険料が変わらない商品もあり、若年層の加入者を増やすことに役立っているようだ。
望む特約がすべて揃っている医療保険であれば一つ持てばそれで十分だが、保険料は高額になってしまうだろう。そのため、ライフスタイルが変わっても柔軟に対応できるよう、お手頃価格の医療保険に複数加入する方法もある。
医療特約型
医療特約型は、死亡保障を基本とした生命保険に特約として医療保障を加えたもの。かつて、国内の保険会社は単体の医療保険を取り扱えない時期があったため、多くは生命保険の特約として入院保障や手術保障を加えていた。
この場合は、一つの保険だけを管理しておけば良いという便利さはあるが、一方で、全てがセットになっているため、何かの事情で解約をすれば、医療保障もなくなってしまう。このことに不安を覚え、ライフスタイルが変更になっても保険の見直しを面倒がる加入者もいるようだ。そのため、より優れた医療保障を手に入れるチャンスが減ってしまう可能性がある。
共済型
共済は非営利事業であり、相互扶助を目的として組合員となった人々が助け合う仕組みで成り立っている。加入するためにはいろいろな制約はあるが、多くの人は全国的に展開している全労済、都道府県共済、CO・OP共済、JA共済のどれかには加入できることが多い。特に都道府県共済は、該当する地域に住んでいれば誰でも加入できるため、人気の医療保障となっている。
さらに、保険料(共済では掛け金という)が一律でお手頃、年に一度割戻金があるなどの点でも魅力的だ。一方で、保障内容はパッケージ化されていてカスタマイズ度は低い。また大きな保障とはいえないため、まずは必要最低限の医療保障を用意しておきたい場合の商品と言えるだろう。共済+医療保険で準備しておくというのがより安心だ。
医療保険を選ぶ3つのポイント
自分に合った医療保険を選ぶためには、給付金、払込期間、基本保障と特約のバランスに満足できるかどうかがポイントとなる。また、長い人生の中で変化していくライフスタイルに合わせていこうとする考え方も大事だろう。
払込期間は定期、保障期間は終身が理想的?
医療保険の払込期間と保障期間にはいくつかのバリエーションがある。一般的には、「定期」か「終身」かであり、払込期間と保障期間を同じにするか、払込を先に終了させ保障を終身にするかを考えなければならない。
払込期間と保障期間を同じにして終身を選ぶ場合は、生涯保険料を支払い続けることになる。払込期間を60歳で終了させ保障は終身を選ぶと、毎月の保険料は高くなる。また共済のように払込期間も保障期間も85歳までと決まっていると、その後の医療保険がなくなってしまう。どれを選択しても、何か一つ課題は残るものである。
経済力があるうちに払込を完了させ、あとは保障を受けるのみにしておくのが理想に近いだろうが、その場合、加入した後にさらに自分に合った医療保険が見つかった時が悩ましい。特に長期間払い込んでいると見直しや解約に対するハードルが高くなる一面はありそうだ。保障期間は終身を選ぶにしても、払込期間の選択には熟考が必要だろう。
基本保障は入院と手術、どちらを重要視するか
保険料がお手頃で給付金ができる限り高額である医療保険が良いに決まっているが、商品である以上、給付金と保険料は比例するのが当然である。そのため、医療保険加入に当たっては、自分が最も重視したい給付金は入院なのか、手術なのか、あるいはそれ意外なのか?を再確認する必要がある。
医療保険の基本保障は入院と手術が一般的だが、最近では、手術保障がなくなり、入院保障に重きをおいた商品も登場している。ただし、その場合は、入院給付金が日額いくらだけではなく、一時金やお見舞金という内容でプラスアルファの金額が給付されるようになっている。
それだけではなく日帰り入院から日額と一時金を給付するという商品や、日帰り入院でも5日分あるいは10日分給付するといった商品もあるようだ。手術をしなければ給付されない手術保障より、入院したことで給付される一時金の方が加入者にはありがたい。
特約は必要なものだけ
基本保障はシンプルに、特約は種類豊富にというのが、加入者にとってはありがたい商品といえるだろう。その方が、無理のない保険料で優先度の高い順に保障を選べるからだ。
そのようなニーズを反映してか、最近では特約の種類は大変豊富になっている。挙げればきりがないが、中には認知症や介護などといった後期高齢者を意識した特約も見られるようになっている。また、医療の進歩とともに、医療保険の保障内容も変化を続けている。例えば、基本保障に先進医療や三大疾患が加わった商品も珍しくない。
とはいえ、特約を増やすことは保険料が増えることであるため選択は難しい。加入時につけた特約をそれだけ解約することはできるか?また一旦解約してもその特約を再度加えることはできるのか?などを特約に関しても、理解を深めておくのが望ましいだろう。
医療保険ベスト10
ここからは、オリコン顧客満足度ランキングサイトの上位10社を参考に、各社の医療保険を比較してみよう。同サイトでは、過去6年以内に医療保険に加入し、過去4年以内に給付金を受け取った本人5,536人に対し、加入手続き、商品内容、保険料、アフターフォロー、受取額・支払いスピード、年代別、その他の部門別についてアンケートを行った結果などを公表している。
第1位 三井住友海上あいおい生命(72.73点)・新医療保険A(エース)プレミア
加入手続き、受取額・支払いスピード、年代別部門50歳代以上で第1位、保険料、入院給付金期間別部門の短期入院で第2位と、高評価を得ている。それを反映して、給付金の手続きから支払いまでの速やかさを評価する声が多い。
商品の特徴は、基本保障が入院と手術だけではなく、放射線治療、集中治療室(ICU)管理、先進医療も含まれ、充実していること。特約には三大疾病入院、抗がん剤治療、女性疾病、介護保障がある。
第2位 ソニー生命(72.35点)・総合医療保険無配当
保険料、アフターフォロー、入院給付金期間別部門の短期入院で第1位を獲得。アフターフォローの良さをウリにしている保険会社の商品だけに、その言葉に偽りなしというところか。利用者の評価も商品そのものだけでなく、ライフプランナーの対応に高評価が集まっている。
商品の特徴は、入院給付金の支払い限度が1回あたり60日、120日、360日の中から選べることに加え、三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)による入院は日数無制限である。
第3位 メットライフ生命(72.32点)・終身医療保険フレキシィS他
年代別部門30代で第1位、加入手続き、受取額・支払いスピード、病気別部門の三大疾病と女性疾病で第2位を獲得していることから、若い世代や女性からの評価が高い医療保険だ。利用者の中には、60代で「ネットでの契約が便利」という声を寄せている男性もいる。
メットライフ生命の商品の特徴は。入院、手術、先進医療を基本保障にしたフレキシィブランドの中に、女性専用や持病がある方向けといったタイプがあることだ。また、支払った保険料が全額戻って来る、リターンボーナス付き終身医療保険もある。
第4位 オリックス生命(72.14点)・医療保険新キュア他
商品内容で第1位、保険料と年代別部門40代で第3位。アフターフォローは少し厳しい評価になっているが、利用者の声には、給付金を受け取る際の手続きに対して「迅速だった」「簡単だった」というものも目に付く。
オリックス生命で人気の「新キュア」は、何と言ってもお手頃な保険料が強みだ。その理由は、基本保障が入院、手術のみであること、死亡保障や解約返戻金がないこと、保険料が加入時のまま上がらないことが挙げられる。とはいえ、特約は9種類用意されているため加入者のニーズに合わせて選べるようになっている。自分に合わせてカスタマイズしやすい点が魅力だ。
第5位 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命(72.08点)・新健康のお守り他
商品内容、年代別部門30代で第2位、加入手続き、受取額・支払いスピード、入院給付金期間別部門の短期入院で第3位と、複数の項目で高く評価されている。年代別部門で40代、50代以上からの指示が上位ではないため、若い世代に人気がある医療保険だ。利用者の声には「電話が繋がりやすかった」「電話対応の印象が良かった」という内容が寄せられている。
「新健康のお守り」は加入時の保険料のままで保障は一生涯続くため、若い世代に魅力的な医療保険である。基本保障が入院、手術、先進医療で、特約は13種類用意されている。その中で目を引くのは介護一時金特約だ。要介護1に認定された場合などに一時金が受け取れる。
第6位 アフラック(71.89点)・ちゃんと応える医療保険EVER他
病気部門別の三大疾病と女性疾病で第1位、年代別部門40代で第2位となっている。その他の評価項目も上位ではないものの、平均を上回っているものが多いため、無難な医療保険と言えそうだ。利用者の声では代理店などの対応に満足している内容が多いようである。
同社の医療保険は、総合的な医療保険とがんに特化した医療保険の二本柱になっている点で、総合的な医療保険の「ちゃんと応える医療保険EVER」には、基本保障に通院がついたものもある。特約は三大疾病に関するものなど全部で11種類。その他、保障内容とは別に治療費以外の不安や悩みをサポートするサービスを設けている。
第7位 東京海上日動あんしん生命(71.66点)・メディカルKit NEO他
上位に評価されているのは、年代別部門50代以上第2位だけだが、加入手続きと商品内容では平均を上回っている。保険料、受取額・支払いスピードの項目でもほぼ平均点という点から、無難な商品設計になっていると思われる。利用者の声に、満期返戻金や終身保障に対する好意的な内容が見られる。
同社には、医療保険6種類、がん保険2種類がある。ユニークなのは、加入者の健康サポートも目的とし、歩くと保険料の一部が戻ってくるもの、加入した医療保険を使わなかった場合に保険料が戻ってくるものがあることだ。また特約の中には退院給付金がある。健康になることでメリットが大きい医療保険と言えるだろう。
第8位 富国生命(71.65点)・医療大臣プレミアエイト他
評価項目のアフターフォローで第3位。加入手続きや商品内容では、わずかに平均を下回っているものの、保険料、受取額・支払いスピードでは平均以上となっている。利用者からは「見込み以上の給付金があった」「ネーミングがわかりやすい」などの声があることから、万人向けではない面はあるものの、加入条件によってはメリットを実感できる商品と思われる。
商品の特徴は、日帰り入院でも10日分の入院見舞い給付金が基本保障に含めることができる点だ。特約は7種類用意されているが、その中では移植医療特約と特定損傷特約が特徴的である。特定損傷特約は不慮の事故により骨折、間接脱臼、県の断裂を保障するもので、年配者にはこの点が魅力になるだろう。
第9位 日本生命(71.53点)・入院総合保険他
評価項目のアフターフォローで第2位。年代別部門では50代以上で第3位。アフターフォローでは平均を大きく上回った形だが、保険料と受取額・支払いスピードでは平均を下回っている。対面営業を軸としている点が保険料に反映されている結果と言えなくもないが、利用者の中には定期的な訪問を歓迎する声もある。
同社の医療保険は3タイプ。入院と手術に特化したものの他に、がん保険と特定損傷保険がある。その他、死亡保障に医療特約をつけた商品もあり、バリエーションは豊富である。
第10位 明治安田生命(71.48点)・メディカルスタイル他
各評価項目は、ほぼ平均だが、年代別部門40代で第1位となっている。利用者の声には、対面営業に対して満足している内容が多いようである。
明治安田生命の医療保険には、4つのカテゴリが用意されている。病気や怪我に備えた一般的な保障を軸にしたものの他に、重い病気への備え、就業不能・介護などへの備え、万が一への備えがそれぞれパッケージになっている。それぞれに特約もあり、見直し制度もあることから、十分に考えてカスタマイズできる点が大きなメリットといえよう。
保障を手厚くしたい時に検討すべきこと2つ
若い頃はシンプルな医療保険でも安心感は保たれるものだが、年齢を重ねていくと、より大きな安心感を得たい気持ちから手厚い医療保障を求めるケースが増えてくる。その場合は、次の2つの方法を検討してみるのが良いだろう。
保障内容をカスタマイズする
保障内容を自分にふさわしい形で手厚くするためには、主に特約などでカスタマイズするのが良い。基本保障を変更したい場合は、解約して入り直す可能性も出てくるが、特約であれば基本保障にプラスしていける。例えば、退院後の通院保障、高額になりがちが先進医療保障などは、カスタマイズできるケースが多いはずである。
理想的なのは、まずは経済的に無理のない範囲でできるだけ多くの保障を盛り込んでおき、不要になった時点でその保障を外して行くというやり方だろう。加入後、保障内容を小さくすることは、多くの医療保険では比較的簡単にできるからだ。その逆で、加入後に保障を大きくしたい場合は、手続きが比較的面倒な場合が多い。医療保険は、ほどほどに大は小を兼ねるのが、良いのかもしれない。
カード会社などの団体医療保険をプラスする
団体医療保険は、企業などの団体が保険会社と契約をして、その団体に属する人たちを被保険者にする仕組みになっている。多くの場合、保障内容はパッケージ化されていて、保険料もかなりお手頃に設定されている。個人で加入するよりも手続きが簡単なため、医療保障をちょっと手厚くしておきたいと思った時など、気軽に加入できるのも嬉しい。
団体医療保険は、知っている人は知っている隠れた人気医療保険だが、もちろんデメリットもある。その団体から抜けた時点で、保険は自動的に解約となる点だ。例えば、勤めている会社が契約している団体保険に加入している場合は、その会社を退職すると保険は消滅する。
クレジットカード会社などで用意している団体保険は、もう少し自由度が高い。そのカードを解約しなければ、団体保険契約は継続する。また、カード申し込み時の個人情報で申し込みができるため手続きが簡略化されているとともに、保険料はカードから引き落とされるという便利さもある。例えば先に加入した医療保険を保障がちょっと物足りない、というような場合にありがたい保険といえるだろう。
医療保険は定期的に見直そう
保険は、一度入ったら一生それで安心ということはない。なぜなら、超高齢化や公的医療保険制度の変化などで、求められる医療保障が変化していくからだ。
以前はなかった特約が増えていることもあるため、終身の医療保険に入っていたとしても定期的な見直しは行った方が良いだろう。特に、結婚した、子供が独立したなど、ライフスタイルが変わったときなどは見直し時だ。各社の保障内容や特約をよく比較し、自分に合った医療保険をぜひ見つけてほしい。
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