生命保険文化センターのデータによると、入院1日あたりの金額は1万5000円未満が全体の半分以上を占めます。このことから、この1日あたり1万円は一般的な金額だというのがわかります。このように、短期の入院だとそう高額にはなりません。1週間なら7万円程度といったところでしょうか。もちろん、入院する本人も家族もたいへんではありますが、お金の心配はあまり必要ではないかもしれません。日本は健康保険制度が充実しているので、じつは医療費がそれほどかからないようになっているのです。

(本記事は、長尾義弘氏の著書『 保険はこの5つから選びなさい 』河出書房新社(2016年3月5日)の中から一部を抜粋・編集しています)

貯蓄と医療保険どっちがお得?

保険はこの5つから選びなさい
(画像=Webサイトより)

医療保険では入院限度日数が決まっています。60日型が主流になっていますが、なかには30日型もあります。60日型は、1入院につき60日まで入院給付金が出るというものです。入院が90日になったとしても、保障は60日ぶんだけです。さらに、同じ病気での2度目の入院は180日の間が空かなければなりません。たとえば、30日で退院して、それから60日後にまた入院したとします。すると、これは全体で1入院とみなされて、再入院は31日目からカウントされてしまうのです。

もし、60日間入院したとすると、給付金は入院日額1万円で満額の60万円です。月額4000円の保険料を13年間払っていたら、4000円×12か月×13年=62万4000円。つまり、13年の間に払った保険料が、限度日数まで入院をすると、もどってくることになります。そもそも60日型では、入院日額5000円なら30万円、日額1万円でも60万円しか保障がないのです。短期入院は、貯蓄で対応するのが基本と考えておくのが正解です。

本当に困るのは、長期の入院です。脳血管疾患は平均89・5日の入院を余儀なくされることがあります。統合失調症の場合は、入院が1~2年(平均の入院日数は546・1日)におよぶこともあります。収入が途絶え、医療費がかさみ、生活に支障をきたすことは容易に想像がつきます。長期入院に備えたい場合は、入院の限度を700~1000日まで延ばすことはできます。しかし、保険料がかなり高くなります。

いま入る時期ではない「終身保険」

いま、政府ならびに日本銀行はデフレ脱却を目指して、2%の物価上昇を目標に掲げています。日銀がどんどん国債を買い上げて、金利は史上最低水準になっています。

いまから25年前のバブル当時、郵便局の定期貯金の金利は8%ありました。投資目的で金融商品を選ぶときの常識として、金利が高いときには固定金利を選び、低いときには変動金利を選ぶべきだといわれています。金利が高いときに固定金利を選ぶと、ずっとその金利でお金が増えるので得をするのです。バブルのときに8%の固定金利の定期預金に入ったならば、たとえ金利が下がって変動金利が0.025%になったとしても、ずっと8%の金利で運用されていくのです。

ところが、金利が低いときに、固定金利を選んでしまうと悲劇です。最初に1%の固定金利を選んでしまうと、その後、金利が3%に上がったとき2%損をすることになります。そして満期になるまで、ずっと2%の損をしつづけることになってしまいます。

終身保険は途中で解約すると解約返戻金がもどってきます。とはいえ、むろん通常支払った保険料よりもすくない額になります。いま、発売されている多くの終身保険では、低解約返戻金型が採用されています。満期までは、解約返戻金がグッとすくなくなる仕組みになっています。そのぶん、保険料が安くなるわけです。貯蓄型の保険商品の多くは、超長期の固定金利です。個人年金保険、養老保険、学資保険など(変動金利の商品もありますが)、いまの状況では貯蓄性のある保険よりも掛け捨て型の保険商品を選ぶほうが正解です。ただし相続税対策においては、終身保険は非課税枠を使うことができるので、この場合においては、まことに有効な商品です。ぜひ活用をお勧めします。

本当に必要な「がん保険」とは?

男性は2人に1人、女性は3人に1人の割合で「がん」になるといわれています。保険のなかには、がんに特化した「がん保険」という商品があり、がんになったときには手厚い保障が受けられる内容になっています。ほかの病気と比べて、がんは費用が高い(健康保険が適用されない)治療も存在します。ただ、健康保険での診療であれば、がんだけ突出して医療費がかかるということはないのです。

がんとひとくくりにしていますが、実際は「悪性新生物」と「上皮内新生物」の2種類にわけられます。おおまかにいうと、がんが奥深くまで浸潤しているか、比較的浅い場所にとどまっているかの違いです。両者は、治療や保険の扱い方が大きく異なってきます。上皮内新生物はこの段階で治療すれば、基本的には完治します。いわゆる初期がんで、進行がんとは区別されます。上皮内新生物をがんと呼ばない医者もいますが、保険の扱い方は各社によって違いがあります。悪性新生物と同じ給付金が出る場合もあれば、減額されたりまったく給付金が出ない場合もあります。

いっぽう、命にかかわる悪性新生物は、抗がん剤など高額な治療になることがあります。では、どのくらい治療費がかかるかというと、通常の医療費と変わりません。なぜなら、高額療養費制度があるからです。通常の所得ならば、月に9万円は超えないようになっています。CMやパンフレットに「重粒子線治療や陽子線治療では300万円かかる」などと謳われているせいで、がんの医療費は高いというイメージがあるかもしれません。ですが、これは公的健康保険がきかない先進医療のこと。特別なケースだと考えてください。また、入院が長いと思っている人が多いようですが、がんでの平均入院日数は18・7日(平成26年のデータ)なのです。まったく入院しないで、抗がん剤治療だけというケースも増えてきました。がんだけが特別に高い医療費を払うということはありません。

がんの場合、治療のために仕事を休んだり、退職する場合があります。その際には、ある程度の生活費が必要になってきます。がん保険も、そういった状況を考えて変わってきています。以前のがん保険は、入院・手術の給付金が中心だったのですが、いまでは「がん診断一時金」を中心にした商品に人気があります。がん診断一時金は、生活費の補助など何にでも使えるので安心です。

実は効率が良くない「学資保険」

子どもの教育費には2000万円かかるといわれていますが、いちばんお金がかかるのは大学のときです。大学入学時までの18年間で、500万円のうち200万円を保険で貯めようと思った場合、月に8392円の学資保険に入ると、181万2672円(8392円×12か月×18年)の払い込みで、200万円の学資金を受け取ることができます。受け取りは18歳から22歳までの5年間に40万円ずつ。戻り率は、110・3%です。戻り率というのは、支払った金額に対していくらの金額がもどってくるのかをパーセントで表した数字で、これを金利で計算すると年利は約1・1%になります。戻り率では大きく感じた数字も、年利で表してしまうと意外と小さく見えます。

学資保険のもうひとつの特徴は、保険の機能があることです。親が死亡した場合には、それ以降の保険料は支払わなくてもよく、祝い金が満額支給されます。つまり、死亡保険と同じです。ということは、すでに死亡保険に入っている人は、学資保険で死亡保障を上乗せしていると考えてもいいのです。

このように学資保険は、保険の機能と貯蓄の機能をもっています。両方を備えているのはいっけん便利なようですが効率が悪いといえます。年利1・1%以上の運用ができれば、学資保険に入る必要はないのです。それに、学資保険を途中で解約しようとすると元本割れになります。また、貯蓄性のある保険は固定金利なのでインフレに弱く、これは学資保険にも当てはまります。

「介護の備え」には保険より貯蓄が有効

社会の高齢化が進み、2020年には4人に1人が高齢者になるとされています。平均寿命は延びていますが、健康寿命となるとなかなか難しいもの。75歳以上の約3人に1人は要介護認定、あるいは要支援認定を受けています。公的介護保険である程度の保障は受けられますが、やはりそれだけではたりません。実際に考えている以上のお金がかかるものです。介護保険では、要介護認定になると一時金か介護年金、またはその両方が支給されます。介護保険の仕組みは各社によってさまざまですが、大きく分けると次の点がポイントになります。

保障の仕組み

  • 給付 一時金タイプ、年金タイプ、一時金+年金の併用タイプ
  • 保障期間 終身タイプ、有期タイプ

保険料の仕組み

  • 掛け捨てタイプ、積立タイプ
  • 払込期間 定期型、終身型

給付基準の仕組み

  • 公的介護保険の基準と連動しているのか、独自の基準なのか、併用なのか
  • 要介護のどのレベルになると給付になるのか

以上を組み合わせて、介護保険ができています。保険料が安いのは掛け捨てタイプで給付の条件が厳しく、保険料が高いものは積立タイプで給付の条件はゆるくなります。給付を一時金で受け取るか、年金で受け取るかは、考え方によって違ってくるでしょう。介護はお金がかかりますから、備えは必要だと思います。でも、これは誰にでも訪れる可能性がひじょうに高いものです。リスクでいうと大きな損失にはなりますが、リスクの軽減で対応できるものと考えます。そのいちばん有効な方法が貯蓄です。

この数年で、いろいろな介護保険が発売されましたが、まだこれという商品は登場していません。保険料と給付のコストパフォーマンスの問題もあります。介護施設か在宅介護かで必要額は異なるでしょうし、政府の方針もまだ変わりそうです。使い勝手を考えると、貯蓄で対応するのが、いまのところもっとも有効な方法といえます。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP。お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している辛口の保険評論家。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(小社刊)、『コワ~い保険の話』(宝島社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)が、監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』(宝島社)などがある。

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