医療に関する費用は、ある程度普通に支払えるぐらいの金額に抑えられているのはご存知だろうか?当記事では医療保険制度の仕組みについて解説し、医療費がどのような仕組みで支払われているのか紹介する。職域保険や地域保健といった保険の内訳についても解説する。

日本の医療保険制度は「国民皆保険制度」

医療保険制度,医療保険
(画像=EtiAmmos / Shutterstock.com)

日本では国民全員が医療保険に加入しなければならないとされている制度を「国民皆保険制度」と呼ぶ。労災や美容整形などの場合を除いては、全ての医療機関で国民皆保険制度による医療保険が適用される。この医療保険には職域保険と地域保険の2つがあり、それぞれ加入要件や内容が異なる。職域保険は、一般会社員を対処とした健康保険と公務員や船員を対象とした共済組合保険や船員保険で成り立つ。

地域保険には、住民が住んでいる各市区町村で構成された国民健康保険が存在する。職域保険も地域保険も、通常の医療費は自己負担3割となっていて高齢になると自己負担割が減ってくる仕組みになっている。国民皆保険制度が掲げる全体的な趣旨の一つとして「安い医療費で高度な医療」を提供する事が挙げられている。

国民健康保険に加入することで得られるメリットとは?

医療保険制度の存在を日常的に感じながら生活を送ることは難しい。病院へ通っても保険証を提出するだけで、それがどの様な効果があり、どれぐらいのメリットがあるのかを把握し切れていないのが実情だ。多くの場合は、地域保険である国民健康保険か職域保険に加入している事がほとんどだろう。

しかし、もしこの制度がなければどうなるのか?想像したことはあるだろうか。ここでは国民健康保険に加入する事で得られるメリットについて詳しく解説する。

医療保険に加入すると医療費の患者負担が減少する"

医療保険に加入する事で、まず1番分かりやすいメリットが医療費の負担割合だ。日常的に病院へ支払っている医療費は、多くの場合7割引してもらっている状態になる。つまり3千円支払った場合には、実態として1万円の医療費がかかっている事になり残りの7千円については国ないしは組合が担っている。

この医療費負担割合についても、70歳以上75歳未満であれば2割負担、75歳以上になれば1割負担にまで軽減される。職域保険や地域保険を運営する組織は保険者と呼ばれ、患者と医療提供者との架け橋になっている。保険者が、国民から支払われる保険料と国からの公的資金によって賄われ、各医療機関へ負担分を支払っている構図だ。この構図の中で、何十兆円もの資金が運用され多くの病院や患者に関連する医療費が動いている。

国民健康保険の加入者は給付金を受け取れる

国民健康保険に加入すると、いざと言う時に給付金を受け取る事が可能だ。これらの給付金は高額な医療費がかかった場合や入院生活になった場合に給付される医療給付と、出産一時金や傷病手当金などの現金給付に分類される。医療給付は、医療機関に関する一定の条件を満たした場合に支給される給付制度である事に対して、現金給付では「お見舞い金」に近い特性を持つ。

また国民健康保険以外にも、共済組合保険や船員保険などもあり基本的な給付金に加えて独自の制度を設けている場合が多い。例えば、出産一時金は基本的には42万円と相場が決まっているものの、共済組合保険の一つでは50万円以上の一時金を給付する制度を設けている場合もある。以下の表では、簡単に給付金の内容を記載しているので是非参考にしていただきたい。

給付 内容
医療給付 療養の給付 通常通院時に受ける給付
入院時の食事給付 一食につき360円
入院時生活医療費 食事給付+居住費
高額療養費 年収によって自己負担限度額が変わる
現金給付 出産育児一時金 出産した場合に42万円支給
埋葬料 死亡した場合に1万円~5万円を支給
傷病手当 労働不能となった場合に標準報酬日額の3分の2を支給
出産手当 出産から42日前の産前期間から産後で支給

どの医療保険に加入するかは自分で選べる

医療保険には各種いろんな保険が存在し、各保険者によって保険料の金額や扶養に関する要件などが変わってくる。どの保険に加入するかは自分で選ぶ事も可能だが、会社員であれば企業側で加入している組合保険などが存在しており、企業側は保険料を半分支払うことで負担を軽減している。ここでは各保険者によって被保険者の数や加入条件などを紹介する。

国民健康保険

市区町村の国民健康保険では、被保険者が3,000万人を超える大世帯だ。社会保険に加入していない者であれば、特定の状況を除き誰でも加入する事が出来る。加入者の平均年齢は他の保険者の中でも1番高い事から定年退職した世代が多い事が伺える。加入者一人当たりの医療費についても最も多く、高齢者による医療費請求がどれだけ多いのかを物語っていると言える。

その影響から国による公費負担金についても4兆円超えと最も多いが、そもそも加入者が支払う保険料金が安い事も影響していると言えるだろう。

協会けんぽ

協会けんぽの1番の特徴は、保険者が一つであると言う事だ。全国区の協会けんぽは、主に企業における社会保険の加入をになっている保険者であると言える。法人であれば業種に関わらず加入する事が出来るので、中小零細企業の加入者が多いのが特徴だ。この事から加入者数が最も多く3,600万人を超える。職域保険の中では、加入者一人当たりの平均所得が低いのも協会けんぽの特徴であると言えるだろう。

健康保険組合

健康保険組合は、保険料の負担率が最も低い保険者だ。保険者の数は国民健康保険の次に多いが加入者数は2,900万人となっている。健康保険組合に加入する企業は、業種や所在地の条件を保険者の要件に合わせておく必要がある。加入者一人当たりの医療費が最も少ない事から、医療機関を使わない若年層の加入者が多い事が伺える。

共済組合

共済組合は、加入者数が880万人と最も低い保険者であるものの、一人当たりの平均所得や平均保険料が最も高い位置にある。平均年齢も1番若く、業務的にも中核的に位置する加入者が多い事が伺える。65歳以上の割合について、最も低い地位を保っているのが共済組合だ。

平均所得や保険料の高さを鑑みて、平均年齢の若さも重ねると最も働き盛りの世代層が厚い事が分かる。公費の負担もないので、国の予算を毎年吊り上げている原因にはなっていない点が健全だと言える。それだけ運用がしっかりしている点も共済組合の特徴だ。

医療保険制度を理解して最適なライフスタイルを獲得しよう

医療保険制度は、国民に与えられた権利であると同時に保険料を支払う義務である事が分かる。国がどれだけの医療費を負担しているかは、日常的に意識する事がないものの政治的な問題として取り上げられる事が多い。今後、医療費はどんどん増え続け保険料を支払う年齢層がどんどん減っていくので、医療費負担の問題について根本解決が問われていると言える。

とは言え、いざと2言う時には医療保険制度に助けられている若年層も多く、健康保険組合においては保険者による優待制度が設けられている場合も多い。医療保険制度は、入院や手術時の高額医療費が必要になった場合において、その存在の大きさに気づかされる事がある。場合によっては、任意保険と組み合わせる事で入院費用がプラスに転じる事も少なくない。

医療保険制度には、前述で紹介した給付金制度がある事実を知らないまま保険料を支払っている加入者が多く存在するので、どれだけ制度を理解して最適なライフスタイルを獲得できるかが今後の課題になってくるだろう。