高齢社会を迎え、訪問看護を利用する方が増えてきたが、訪問看護を受ける際にどの範囲まで医療保険が適用されるのか理解している人は少ない。適用範囲や条件についていまいちど理解するために、費用や適用範囲を紹介する。
訪問看護とはどのような医療か
訪問看護は、看護師などが患者の自宅へ訪問し主治医や医療機関と連携しながら看護する医療サービスだ。医療機器を自宅で利用しながらも通院が困難な患者にとって、訪問看護は非常に便利で有意義な医療行為であり、訪問する看護師が患者自身の生活サポートに役立っている。
特に身寄りの少ない一人暮らしの患者や、夫婦間の老老介護世帯にとって継続的な医療サポートは必須だ。通院が難しい環境にある患者において、自宅で十分な医療サービスを受ける事が出来る訪問看護が今注目されている。高齢になるほど病状は複雑化し、薬の服用方法や使う医療機器について管理しきれなくなる可能性がある。
訪問看護によって、看護師が患者と継続的に関わる事が出来るので、本人だけでは管理しきれない部分のサポートが可能だ。これらのサポートは孤独死の防止にもなり、患者が回復するまでの自立の手助けにもなる。
訪問看護の必要性を決めるのは「医師」の診断
訪問看護は患者の希望によって出来るものではなく、医師の判断により訪問看護が必要かどうかが判断される。年齢的にも通院が難しい患者や、身寄りのない患者の場合も考えられるだろう。その他にも、難しい医療機器を自宅で継続的に扱わないといけない状況の有無、術後の外傷に対する必要な創処置も訪問看護の範疇に入ってくる。
この事から、通院する事で患者の容体が悪化する可能性があり、継続的な医療サポートが必要な場合に訪問看護が必要になる可能性が高くなると言えるだろう。
通院困難でなくとも利用は可能
訪問看護の意味合いとして、通院が困難である場合に適用されるのが通例であると考えられるが、前述のとおり厚生労働大臣が定める疾病によるパターンもある。例えば「予後6ヶ月が目安」とされる末期ガン患者の中には、動ける患者や通院出来ている患者も存在する。主治医が一度「末期ガン」と診断したために訪問看護が認められる事も考えられるので、結果として通院困難でなくとも利用が可能になる場合があると言える。
この場合、通院困難ではないものの「何時通院が出来なくなるかが分からない」状態である事から訪問看護が認められていると言う認識を持っていれば良いだろう。
一時的な悪化状態では認められないケースも
訪問看護は継続的に通院出来ない状態である場合、もしくは継続的に通院出来なくなる事が考えられる場合に適用される。例えば「急性胃腸炎」などの、一時的且つ突発的な症状に対して訪問看護を行う事は出来ない。看護師と患者との関わりが継続的に必要と言う場合において、訪問看護が認められるのである。
「継続的な療養が必要」と診断されなければ利用できない
継続的な療養とは、一人暮らしのお年寄りが「薬の服用を正しく出来ているか?」などの管理や術後の創処置などが挙げられる。こうした患者への関わりは、看護師として訪問看護が必要な療養であると認められる。訪問看護の意味合いを理解しておく事で、いざと言う時に病院側へ提案や相談をする事が可能だ。
少しでも該当すると考えられる場合には、看護師やソーシャルワーカーへ「訪問看護の利用ができないか?」と言う確認を取っておいたほうが良いだろう。
医療保険が適用される医療行為の範囲は?
訪問看護において医療保険が適用される医療行為には、点滴や術後の創処置を含めた医療ケアがある。あくまで医師の判断に基づいた医療サポートを行うものであって、訪問した看護師が判断を下すものではない事を認識しておこう。
「週に3回」「1日に1回」などの条件がある
訪問看護には利用保険が適用される場合と、介護保険が適用される場合が存在する。この内、医療保険の適用については1日1回90分まで且つ週3日までと言う利用制限があり看護師は1人で対応する事が基本だ。主治医からの判断で訪問看護が認められたとしても、制限なく利用出来る訳ではないので注意しておこう。
訪問看護を実施した場合の費用
訪問看護を実施した場合、医療保険と介護保険で1ヶ月の費用が変わってくる。医療保険の場合は、約140,000円程度で介護保険の場合には約130,000円であると言われている。1割負担であれば月1万円程度で訪問看護を受ける事が出来るが、医療保険で3割負担となる場合には4万円ほどの自己負担が必要だ。
任意保険を検討する場合には、これらの事も踏まえて訪問看護に関する内容を確認しておく必要がある。加入している組合保険によっては、月の医療費に上限があり超える事で還付される場合もあるので事前にチェックして予算立てしておく事が大切だ。
厚労省が特例を認めた疾病は制限が緩和される
前述のとおり基本的な訪問看護には、利用制限が設けられているものの以下の3つに該当する場合には特例として「必要な方には必要なだけ利用できる」とされている。
・主治医の判断により「特別訪問看護指示書」が出された場合
・厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合
・厚生労働大臣が定める状態等に該当する場合
厚生労働大臣が定める疾病については、前述で紹介したような末期ガン等の重い病気が該当してくる。一方で厚生労働省が定める症状等と言うのは、例えば膀胱留置カテーテルや人工肛門を使っている状態を指す。
特例が設けられている疾病を紹介
厚生労働大臣が定める疾病には、末期の悪性腫瘍を始めとした様々な症状が存在する。以下の疾病に罹っている利用者については、訪問介護の特例を受ける事が可能だ。
・末期の悪性腫瘍
・多発性硬化症
・重症筋無力症
・スモン
・筋萎縮性側索硬化症
・脊髄小脳変性症
・ハンチントン病
・進行性筋ジストロフィー症
・パーキンソン病関連疾患
・多系統萎縮症
・プリオン症
・亜急性効果性能全脳炎
・ライゾーム病
・副腎白質ジストロフィー
・脊髄性筋萎縮症
・球脊髄性筋萎縮症
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎
・後天性免疫不全症候群
・頸髄損傷
・人工呼吸器を使用している状態
介護保険を利用する場合は制限が課されない
訪問看護には利用保険が適用される場合と、介護保険が適用される場合が存在する。医療保険による訪問介護に利用制限はあるが、介護保険には利用制限がない。介護保険による訪問介護の範囲は、要介護度に応じたケアプランと同等であり制限なく利用する事が可能だ。しかし介護保険の適用には「要介護認定」を受けていなければならない。
要介護認定がない状態であれば、医療保険による訪問看護になるのでデイサービスやケアプランなどの内容を組み込む事が出来ない。逆に要介護認定を受けている方の内、医療処置も合わせて必要になった場合には介護保険による訪問看護だけでは対応しきれない。この事から介護保険と医療保険2つの適用が特別に認められる場合も存在するので、健康保険組合による要件について調査しておくと良いだろう。
医療保険の適用範囲を見極めて訪問看護を利用しよう
そもそも訪問看護の存在を認知していない患者は少なくないのではないだろうか?要介護状態や重い症状による病気に罹った場合には、主治医から訪問看護の提案が出てくる事も想定出来るが、事前に内容を把握しておく事で生活スタイルに合った利用が出来る。医療保険と介護保険では、適用範囲や内容が大きく変わってくるので区別をしておく事が重要だ。
近年では、高齢化社会が進み高齢親子の老老介護も珍しくなくなってきた。訪問看護は、要介護認定の患者にとっても生活スタイルを維持する為に重要なサポートになるので、適用範囲や制度について事前に知っておくほうが良いだろう。