会社勤めをされている方なら会社が給料から天引きして勝手に支払ってくれているのが健康保険料である。実は65歳を過ぎてから切り替えが可能で保険料を安くできることはあまり知られていない。今回ご紹介したいのが「高齢者医療保険制度」である。この記事では後期高齢者医療保険の内容や適用範囲について解説する。

後期高齢者医療保険は「75歳以上」の高齢者が加入する医療保険

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(画像=yavyav / Shutterstock.com)

「高齢者の保険料について詳しく知りたい」と思い、その手のパンフレットを見て、役場で聞いてみても何だか難しそうだと腰が上がらない人もいるだろう。実はそこまで難しい制度ではないのだ。

後期高齢者医療保険は平成20年4月に老人保険制度を改正し創設されたを制度である。
公費を中心とした財源から被保険者の保険料が賄われる仕組みになっている。
被保険者(75歳以上)の保険料を最大9割負担してくれる。

つまり、75歳(寝たきりの場合は65歳)以上で「後期高齢者被保険者証」を交付して貰えば、被保険者は納めている保険料を1割に抑えることができる、とてもお得な制度である。

年金だけでは足りず、貯金を切り崩して生活している貧困に悩む高齢者はあとをたたない。
保険料は正しく申請すれば納める金額が変わり、懐に余裕をもたらすこともできる。
たかが数割と思わずに、自分の将来のために考えて行動しよう。

3割負担の医療費が1割負担へ移行する

保険料の負担割合の変動がいまいち良く掴めない、と思ってしまう人も多いはず。
年齢や収入に応じて保険料の負担額が変わるのがこの制度の特徴である。

65〜74歳の高齢者は前期高齢者保険に加入できる。
65〜69歳までは保険料の3割負担、70〜74歳までの人は原則2割負担。

しかし、70歳以上であっても所得が現役並みのひとに限っては継続して3割負担となっている。
所得が現役並みでないと判断された場合は、75歳を過ぎれば2〜3割負担 → 1割負担に割安になる仕組みである。

現役並みの所得者は通常通りの負担額

上述したように、70歳以上であっても所得が現役並みである、と判断された場合は継続して、3割負担しなければならない。

現役並みとはどういった基準なのだろうか。

以下、現役並みであると定められている収入の基準である。
単独世帯   : 年間383万円以上
夫婦二人世帯 : 年間520万円以上

上記基準より収入が満たない場合は70〜74歳までは2割負担、75歳以上は1割負担に申請すれば減額できるのである。
定年退職したが、まだ働いていて収入があるという方もいるだろう。
基準はだいたい平均値並みなので、自分の今の所得がどのくらいかを細かく把握しておくことが大切である。

収入があるから保険料が下がらないと嘆いている方もいるだろう。しかし、世間には保険料を払う余裕もない高齢者の方々も大勢いるのである。
助け合う気持ちを持って自分ばかり損をしていると感じずに人助けをしていると思うことも重要である。
あなたが支払った保険料のおかげで貧困に苦しむ高齢者の負担が軽くなることもあるのだ。

寝たきりなど特別な理由がある場合は「65歳」から適用

高齢化に伴い、事故や病気の後遺症で寝たきりになってしまう高齢者も一定数いる。そういった方は健康な方より時期を繰り上げて保険料を割安にできる。ここはややこしいところでもあるため、しっかり把握しておきたい。

本来、前期高齢者保険に分類される65歳〜でも、寝たきりで高齢者医療費保険の障害認定を受けている場合は、保険料を減額できる。
年間収入が基準を超えている場合は2割負担、収入を超えていない場合は1割負担へ移行できるのだ。
寝たきりで困っている人には優先的に減額するのは当たり前のことなので、制度に反映されているのだ。

保険料は「所得割」と「被保険者均等割」の合計

保険料は後期高齢者個人が納めるものである。
具体的な保険料の金額は各都道府県の広域連合によって変動するので自分の地域の保険料を調べておくことはとても重要である。

保険料の算出方法は下記のようになる。
所得によって割合が変わる「所得割(応能分)」と被保険者全員が均等に納める 「被保険者均等割(応益分)」の合計の金額になる。(年間50万円が上限)

また、受給している年金が18万円以上の場合は保険料を直接納めるのではなく、自動的に天引きという形になるので注意が必要である。
自分の年金受給額も把握しておくことが大切である。
天引きされていることに気づかず、金銭面で生活に支障をきたすことになれば本末転倒である。

扶養下にいた方は保険料軽減措置を利用できる

75歳以前に健康保険組合や共済組合の被扶養者であった方は保険料軽減措置を利用できる。
被扶養者だった方が新しく後期高齢者医療保険に加入した場合、加入日の属する月から起算して2年間は保険料が軽減される。
その期間中は保険料の所得割の負担は0で、均等割は5割軽減できるので加入前にしっかり確認しておこう。

まだ65歳になっていない方も現在加入している保険がどんな種類なのかを把握しておくと軽減措置への申請もスムーズにいくだろう。

後期高齢者医療保険の財源は?

これだけ手厚い後期高齢者医療保険だが、その出処は大きく2つある。
1つ目は現役世代の支援金である。

若年世代が納めている保険料のうち約4割が当てられている。
これは若年世代一人一人が高齢者のために納めているのと同じことなので、保険料の減額分はそういった人たちのお給料から出ていることも忘れてはいけない。

2つ目は国・都道府県・市町村の公費である。割合は4:1:1と国からの公費が大枠を占めていて、全体の約5割がそこから出ている。国から出ている財源が多いことからもわかるように、国の予算状況によって保険料は上下する可能性があるということなので国の動きには注意しておこう。

あとの1割は被保険者の負担となっている。

公費や現役の負担に加えて後期高齢者支援会も出資

出資元は様々なところからでている。全国の高齢者は年々増加していて反対に現役世代が減少しているのが現状である。今現在はなんとか財源を確保できていても将来はわからない。

後期高齢者支援会とは協会けんぽ、健保組合、共済組合、国民健康保険等からなる支援会である。
協会けんぽとは全国健康保険協会という多数の中小企業が集まり、出資している団体だ。
健保組合は大手企業とその傘下・グループ企業が出資元の団体である。
協会けんぽのほうと健保組合は加入人数に差はないが、税率が変わるためその辺りも調べておこう。

制度を理解して医療をもっと受けやすく

保険の制度は更新や改正で制度規定が変更されることは珍しくはない。
日頃から、保険に関するニュース・情報に触れアンテナを張っておくことが大切である。
金額が変動してややこしくなっているのは否めないが、常に勉強し、吸収する姿勢もまた重要である。

高齢者医療保険制度は前期・後期とあり、負担する割合・加入年齢が決まっているため、ご自身や身内の方で65歳を迎える際は、この記事を読んで適切に申請する手助けになれば幸いである。