あなたにとって医療保険は本当に必要だろうか。民間の医療保険に加入する必要性については議論はされ続けているが、今でも結論めいたものは出ていない。各保険会社が、次々と目新しい第三分野の保険商品(医療保険・がん保険など)を発表し続けているからだ。

その中でも医療保険は、生命保険各社が商品開発に精を出し、その時代の価値観や公的医療の流れを反映して「リスク対策としての医療保険」として生み出されている。今回は、その医療保険の分野で、極めて特徴的な商品を題材にしてみたいと思う。

やっぱり、医療保険は要るのでは?

リターン型医療保険,
(写真=PIXTA)

かくいう筆者も、医療保険は「掛け金が無駄になるだけの保険商品」ではないか、と勘繰っていた。多くのFPが指摘するのは「かけ捨てたお金を、給付金として全額は回収できない」ということである。筆者も某保険会社の医療保険に5年前に加入したが、先日まで一度も保険金を請求することはなかった。

ところが、体調不良から大腸内視鏡の検査をすることになり、そして内視鏡によるポリープの切除を受けることになった。その術後、保険会社に問い合わせたところ、手術給付金が出るとわかった。

皆さんはこの瞬間の私の気持ちが想像できるだろうか? 私も5年間で17万円近い保険料を納めて、その中から「数万円がキャッシュバックする」という経験をしたわけだが、「加入していてよかった」と素直に感じてしまったのである。

捨てたつもりのお金が返ってくる仕組み

つまり医療保険で損すると考える基準は、「お金が返るか返らないか?」にあるといえる。筆者のように病気治療で給付金をもらった人は、得にそのように感じると思う。

しかし多くの人は、入院や手術と無関係に、健康を維持しながら生きていくことになるので、健康ならば損する仕組みが医療保険じゃないか、となるのだが、そのような人にも受け入れられようと開発したのが「リターン型医療保険」である。

このリターン型医療保険の概要は以下である。
・支払った主契約の保険料が、60~70歳の指定されたときにキャッシュバックされる
・入院などで支払った保険給付金がある場合は、それを差し引いた金額を返す
・リターン後も保険を継続する場合、同じ保険料を支払い続けることになる

ここ数年で数社が新しく販売を始めているが、おおむねこのような仕組みの保険商品である。

某社の例で確認する

40歳男性が医療保険に加入するとする。掛け捨ての医療保険(入院日額5000円・先進医療特約付き)を終身払いで加入した場合、毎月2904円の保険料となり、65歳時点で合計約90万円を支払うことになる。次にリターン型の同社の医療保険では、保険料は毎月4985円と少し高めで、65歳時点までに合計152万円を支払う。そして65歳時に、主契約の保険料146万円がキャッシュバックされる。

つまり、リターン型の保険料負担は先進医療特約の特約保険料6万円だけだと言える。

この2つを比較してみると「掛け捨てよりは確実にお金が返ってくる」ということで、やはりリターン型がお得だと言えるかもしれない。

リターン型医療保険で損しないためには?

「医療保険は使うことがない、だから損だ」という考えの人にとって、このような仕組みは魅力的に映るかもしれないが、以下の点には気を付けてほしい。

◯途中で決して解約しない
60~70歳まで支払い続けることが、主契約の保険料をキャッシュバックする条件だからだ。

◯良い内容の医療保険が発売されても、無視する
各社は、常に斬新な商品を生み出そうと努力しており、時として非常に魅力的な保障内容の商品が世に出ることもある。その時に解約や追加加入などをしない我慢強さが必要だ。

◯大きな病気をしない
これは矛盾に感じるかもしれないが、今の医療保険は保険料免除特約を付けるのが一般的である。これは、がんや急性心筋梗塞、脳卒中で一定の状態になった時に、以後の保険料が免除されるものだ。

そうなった時にはとても喜ばれる特約だが、リターン型医療保険にはこれを付帯できない。病気などで保険料負担が厳しくなって保険料を支払い続けないといけない、ということを意味する。

あなたが損しない条件

ここに公益財団法人生命保険文化センターの平成27年度「 生命保険に関する全国実態調査 」(平成27年12月発行)の統計資料がある。

詳しくはリンク先をご確認いただきたいのだが、興味深いのは「解約・失効の理由(複数回答)」で「他の生命保険に切り替えたので」が31.4パーセント、「掛金を支払う余裕がなくなったから」が33.6パーセントという現実である。

「新しい商品が出たから変えた」「保険料を支払うのが嫌になった」という理由で保険を解約してしまうことが珍しくないということがわかる。

このような揺れ動く心理状態や、不安定な先行きの中で、リターン型の医療保険で掛け金を取り戻したいという意欲が無事に継続できるかどうか。この不明瞭さ(まさにリスクだが)を克服することこそ、あなたが損しない条件であることは間違いないのだ。

石川智(いしかわ さとし)
ファイナンシャル・プランナー 終活アドバイザー
オフィス石川 代表。1966年高知県生まれ。トヨタ系ディーラー、外資系保険会社の営業職を経て、2010年ファイナンシャル・プランナーとして独立起業した。一般消費者向けの相談業務だけでなく、「障害者とお金」「高齢者とお金」「終活」をテーマに広く講演活動を行っている。ライフワークとして「地域福祉とライフプランニング」に取り組んでいる。

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