日本には公的医療保険が充実しているが、負担割合や適用範囲については理解しているだろうか?
民間の保険に入るのも結構だが、多くの人は公的医療保険の中身を知らないで契約している場合が多い。日本国民である限り、しっかり公的医療保険も理解しよう。
公的医療保険の負担割合や、公的保障の適用範囲について解説する。
公的医療保険が存在する意義は?
日本人の多くは民間の保険を契約している方が多いのだが、公的医療保険が存在していることは知っているだろうか?
公的医療保険は、日本国民が病気やケガになった場合にかかる金額を一定金額負担してくれるシステムだ。
なぜこのようなシステムがあるのかというと、日本国民が安心して暮らせるという形と日本国民が健康であれば皆がしっかり働くことができるからだ。
しかし公的医療保険制度といっても、多くの人は病院にいった際に保険証を提示すれば医療費が安くなるといった認識だ。
そのため病院で医療費を一部負担してくれるといったもの以外にも多くの公的保障があることを知らずに使用していないといった、もったいないケースが非常に多い。
せっかく国が国民のために用意している制度なのだからゆ有効に利用するために知識をおっておくことが大切だ。
日本の公的医療保険は国民皆保険制度
日本の公的医療保険の制度は「国民皆保険制度」とよばれている。
「国民皆保険制度」とは日本人であればだれでも公的医療保険の恩恵にあずかれる仕組みとなっており、基本的に医療費の3割負担で医療サービスを受けることができる仕組みだ。
しかし日本はずっとこの公的医療保険である国民皆保険が制定されていたわけではなく、1958年に国民健康保険法ができたことによって現在の状況となった。
日本の国民皆保険制度WHOにも評価されるほど優秀なものとなっており、海外では国民に保険が行き届いてない中、日本は保険制度が充実していることが伺える。
しかし国民皆保険制度は「後高齢者医療保険制度で約1,500万人」、「保険組合で約3,000万人」、「国民健康保険で約3,800万人」、「共済組合で約900万人」、「協会けんぽで約3,500万人」と非常に多くの人数に対して保険がかかっているのみならず、高齢者に関してはさらに高額な医療費が保険としてかかる。
以上のことから今後も医療費がかさんでいることが予想され、国の社会保障費が膨らんでしまうのが懸念事項だ。
公的医療保険の種類にはどのようなものがある?
日本には国民皆保険が存在していることが分かったが、公的医療保険には一体どのような種類があるんだろうか?
公的医療保険には「国民健康保険」や「組合保険」、「協会けんぽ」、「船員保険」、「後期高齢者医療保険」といったものが挙げられ、保険団体や加入者が異なってくる。
公的医療保険の大まかな表は以下となる。
保険のタイプ | 保険団体 | 被保険者 | |
---|---|---|---|
国民健康保険 | 地域によって決定する保険タイプ | 都道府県、市区町村 | 個人事業主や自営業者 |
組合健保 | 職種によって変わる保険タイプ | 組合管掌健康保険 | 会社員や扶養家族 |
協会けんぽ | 職種によって変わる保険タイプ | 協会けんぽ | 会社員や扶養家族 |
船員保険 | 職種によって変わる保険タイプ | 全国健康保険協会船員保険部 | 船員や扶養家族 |
後期高齢者医療制度 | 高齢者医療制度に基づく保険タイプ | 後期高齢者医療広域連合 | 75歳以上の方(65歳以上75歳未満の方のうち 規定の障害をもつかたに関しては含まれる) |
また上記の表には記載していないが、「各共済組合」によって共済組合に加入している公務員や扶養家族が被保険者となっている。
各保険タイプによって被保険者や保険組合、保険料も異なってくるため、それぞれについて詳しく見ていこう。
国民健康保険
国民健康保険は会社員ではなく、自営業や個人事業主が被保険者となる保険タイプだ。
国民健康保険は都道府県や市区町村といった地域が運営をになっている。
国民健康保険の特徴としては保険料を全て支払うことになるので他の保険よりも負担が大きくなってしなうことがデメリットとなる。
国民健康保険の計算方法としては前年の所得や加入の人数、被保険者の年齢といった要素で決定し、各自治体によって、
・所得額割
・均等額割
・平等割
・資産割
といった金額設定となる。
また、大きな特徴としては国民健康保険は協会けんぽのように被扶養者という概念がないため、通常は被扶養者にあたるものも被保険者として個別に申請する必要がある。
組合健保
組合保険は組合管掌健康保険が正式名称となり大企業が加入する保険組合だ。
一方同じ企業勤めでも中小企業は「協会けんぽ」に加入する割合が多い。
この二つの大きな特徴は組合管掌健康保険は保険料を企業側が決定することができ、協会けんぽの場合は都道府県によって保険料を決定されてしまう点だ。
保険料の適用率も異なり組合管掌健康保険では3~13%となる。
しかし協会けんぽと大きく違う割合で設定している企業は少なく、約9%付近といった具合に協会けんぽの保険料に近づけた割合設定が多い。
組合管掌健康保険では「付加給付」という形をとっていることにも着目したい。
付加給付というのは、通常の保険の適用だけでなく一か月の自己負担額に上限を儲けてそれ以上はすべて支払ってくれるという仕組みだ。
具体的に表すと、医療費が200万円かかってしまった場合に通常だと3割負担となることから60万円の負担となる。
確かに元の200万円という高額な医療費から比べれば確かに安くてすむ。
しかし一般的なサラリーマンにとって60万円という金額はあまりにも大きい金額といっていいだろう。
しかしこの「付加給付」とおいう仕組みでは60万円が2万5千円で済むというものなのだ。
いくら医療費がかかっても月の限度は2万5千円となるとから民間の保険に入らなくても十分医療費をだすことも可能なのだ。
協会けんぽ
協会けんぽは組合管掌健康保険の部分でも解説したが、中小企業が加入する保険タイプといえる。
協会けんぽの保険料は都道府県によって決定され、その保険料は9.63%~10.61%といった形だ。
組合管掌健康保険にはあった「付加給付」という仕組みが協会けんぽにはないため、万が一のことがあった場合3割負担をしないといけないのがネックだ。
従って高額な医療費がかかることに対して保険をかけたいのであれば民間の保険を検討するのもおすすめだ。
船員保険
船員保険は他の保険タイプの中でも特異な位置付けになる。
なぜ船員だけ別に枠が用意されているのかというと、船員は通常のサラリーマンよりもケガや病気をする確率が高いからだ。
船員保険では船員(被保険者)もしくはその被扶養者も保険の適用範囲として入っている。
後期高齢者医療制度
最後に説明するのが後期高齢者医療制度だ。
後期高齢者医療保険では高齢者の医療保険に関する正式名称となり、75歳以上は医療費が1割負担でよいといった保険制度になる。一定の障害を持っている場合に限り65歳以上の加入も可能だ。
公的医療保険が適用される範囲は?
公的医療保険のなかでも大きな被保険者の割合を占めている「協会けんぽ」について適用範囲を 紹介していく。
前述したが、「協会けんぽ」は船員保険や国民健康保険、共済保険、後期高齢者医療保険、組合健保以外の会社員が加入する公的医療保険となっており、被保険者であれば以下が適用範囲となる。
臨時に2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えない人
臨時に日々雇用される人で1か月を超えない人
季節的業務に4か月を超えない期間使用される予定の人
臨時的事業の事業所に6か月を超えない期間使用される予定の人
引用:全国保険協会 協会けんぽ
また、被保険者と共に協会けんぽでは被扶養者という形で公的医療保険の適用範囲にはいることが可能だ。
被扶養者の適用範囲は以下になる。
被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
引用:全国保険協会 協会けんぽ
被扶養者で注意したいのが「収入」に関する点だ。
学生や主婦でパートやアルバイトの年収での上限が130万円を超えてしまうと「扶養からはずれる」といったことを聞いたことがあるのではないだろうか?
これは本来130万円以下の場合は被保険者に控除が発生するため税金を少ない範囲で納めることができる。
しかし被扶養者の収入が130万円を超えてしまうとこの控除がなくなってしまうため、被保険者の負担が増してしまう。
更に180万円を超えると被被用者から抜け、被保険者として自ら保険に加入しなければいけないのだ。
以上のことから被扶養者は自分の収入が被保険者にとって負担となってしまうのではないか?や自分がいくらの稼ぎだったら家計にトータルでプラスとなるのかを慎重に考えていかなければならない。
いつまでも健康に過ごすために必要な公的医療保険
今回は医療保険の負担割合や適用範囲、国民皆保険について紹介してきた。
公的医療制度と一口にいっても様々な種類の保険の種類があることがわかったのではないだろうか。
特にサラリーマンの方は社会保険といった形でひとくくりにしてしまい、細かい保険の種類を見ない方が多いため実際に自分がどの保険タイプなのかわからなかったという人も多い。
また公的医療保険制度のみでも十分保障が充実しているものもあるため「本当に民間の保険に入る必要があるのか?」といった部分をしっかり考えながら自身が加入する保険について考えていこう。