保険期間を定期にするか終身にするかは、医療保険選びをする上で重要なポイントである。終身保険かどうかによって、保障内容や保険料についての考え方が変わってくるからだ。終身医療保険とはどういうもので、どのようなメリット・デメリットがあるのか、どういった場合にこの保険を選択すべきなのか、詳しく考察する。

終身医療保険の特徴について

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(画像=PIXTA)

終身医療保険は、「〇〇歳まで」というように保険期間が定められておらず、被保険者が亡くなるまでその保障が続く。また、保険期間中に更新の手続きをする必要もなく、保障内容・保険料が変わることもない。

終身医療保険の主な特徴をまとめると、以下のようになる。

・保障が一生涯続く
・保険料が変わらない
・保障内容が変わらない
・更新がない

定期医療保険の特徴について

定期医療保険は、「70歳まで」「80歳まで」というように保険期間が定められている。保険期間中も5年ごと、10年ごとなど期間ごとに自動更新され、保険期間満了後は保障がなくなってしまう。また更新後の保険料はその時点での年齢を基礎に算出されるため、そのままの保障内容で更新する場合は保険料が上がる。

定期医療保険の主な特徴をまとめると、以下のようになる。

・保険期間が限定されている
・一定期間ごとに更新がある
・更新の度に、保険料が上がる(保障内容を変更しない場合)
・保険期間後は更新をすることができず保障がなくなる

終身医療保険にはどんなメリットがあるのか

平均寿命が延伸化していることも影響してか、近年は終身医療保険に興味をもつ人が増加傾向にある。では、終身医療保険には、具体的にどのようなメリットがあるのだろうか。

●長期的な安定性に優れている

終身医療保険は、加入時の保険料のまま、生涯にわたり保障を受けることができる。例えば30歳で入院日額1万円を主契約とする月額保険料3000円の終身医療保険に加入した場合、80歳になっても90歳になっても同じ保険料で同じ内容の保障を受けられるのだ。

一方、定期医療保険は保険期間が限定されているため満期後は保障がなくなるし、更新のたびに保険料が高くなる。もちろん保険料を更新前と同じくらいに調整することは可能だが、その場合は保障内容を小さくしなければならない。

さまざまなリスクを考慮したうえで入念な人生設計をしていても、不測の事態が起こるのが人生というものである。定年を迎えた後も悠々自適の生活を送れるだけの蓄えがあればいいが、そうでない人も多いだろう。定期保険のように年齢に比例して保険料が上がっていくタイプの保険では、資金力の低下に伴い保険料を払えなくなってしまう可能性がある。この点、終身医療保険は生涯にわたり、支払うべき保険料と受けられる保障があらかじめ決まっている。そのため老後の計画が立てやすいし、退職後も無理のない範囲で保険料を支払い一定の保障を受けることができる。

こういった意味において終身医療保険は、長期的な安定性に優れているといえるだろう。

●若いうちに加入すると生涯にわたり保険料が安い

医療保険の保険料を算出する際は、被保険者の属性や予定利率、予定事業費率などさまざまな要素が考慮され、その中には被保険者の年齢も含まれる。基本的には被保険者の年齢が上がるにつれ入院するリスクが高くなるわけだから、保険料は年齢に比例して高くなる。

定期医療保険の場合は、更新時の年齢に応じて保険料を算出するため、更新のたびに保険料が上がってしまう。若い頃と同じだけの保障を受けようと思うと、資金力が低下する老後に高い保険料を払わなければならないのだ。

これに対して終身医療保険には更新がなく、保険料が上がることはない。医療保険の保険料は年齢に比例して上がるから、若いうちに加入しておくと保険料はそのままに年齢を重ねてからも同じ内容の保障を受けることができる。

例えば、35歳男性が入院日額1万円を主契約とする終身医療保険に加入すると仮定する。

手術給付金など具体的な保障内容は商品によって異なるが、月額保険料はアフラック生命保険株式会社の『ちゃんと応える医療保険EVER』で3230円、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社の『新・健康のお守り』で3327円となる(2018年4月現在)。そしてこの保険料は、90歳になっても100歳になっても変わらない。高齢になってからも月額3000円程度で入院日額1万円の保障を受けられるというのは、非常に魅力的であろう。

また終身医療保険は、「60歳払済み」「10年払済み」というように一定期間内に保険料を払い終え、以後の支払いを不要にすることも可能である。

安い保険料のまま生涯にわたり保障を受けられたり、老後の保険料負担を抑えることができたり、と終身医療保険には保険料面においても大きなメリットがあるのだ。

●健康状態が悪化しても保障内容は加入時のまま

終身医療保険は、加入期間中に健康状態が悪化しても保障内容が変わることはない。繰り返しになるが、このタイプの医療保険は保険期間が限定されていないため、契約が続いている限りは保障が継続するのだ。

これに対して定期保険の場合、更新限度年齢に達すると契約の更新をすることができない。そのため他の生命保険に乗り換える必要が出てくるが、健康状態や年齢によっては保険に加入できない場合がある。

終身医療保険にはデメリットもある

保障が一生涯続く上、保険料が上がることもない終身医療保険。いいことずくめのようにも思えるが、デメリットがないわけではない。医療保険選びにおいては、終身保険のデメリットについてもしっかり把握しておく必要がある。

●インフレリスクがある

終身医療保険には、インフレリスクが潜んでいる。インフレとは「インフレーション」の略で、物価の上昇によって貨幣価値が下がる現象のことをいう。

やや極端な例ではあるが、インフレが起こることによって貨幣価値が半分になってしまったと仮定する。すると、入院日額1万円の医療保険に加入していても、インフレ現象下では入院日額5000円分の価値にしかならないのだ。

日本は1990年代半ば以降デフレ状態が進行しているが、将来的にインフレが起こる可能性がないわけではない。高度経済成長期のように日本経済が爆発的に成長するようなことはやや考えにくいが、数十年単位で考えた場合にこういったリスクがあることだけは理解しておく必要があるだろう。

●流動性が低い

終身医療保険には、流動性が低い、というデメリットもある。

医療保険に加入する際は、医療制度や公的制度を把握した上で、その保障内容を決める人がほとんどだろう。しかし、数十年という保険期間中には、医療制度が大きく変化したり、高額療養費制度が変わったり、といったことが起こる可能性もある。また近年は入院日数が減少傾向にあり通院治療をする人が増えているため、将来的には通院への備えをメインにした保険が発売されることも考えられる。

このとき、定期保険であれば更新のタイミングで保障内容を見直すことができるが、終身医療保険の場合、特約の中途付加や他商品への乗り換えにより対応するしかない。しかし、健康状態によってはこういったことが難しくなる可能性があるし、乗り換えるにしても保険料が高くなってしまう。

●保険料が割高になる場合がある

終身医療保険に関して、「若いうちに加入すると保険料が安い」と考えている人は少なくない。もちろん、高齢になったときにも安い保険料で保障が受けられるという意味ではその通りであるし、1歳でも若い方が安い保険料で契約することができる。

しかし、終身医療保険と定期医療保険の加入時における保険料を比較した場合、前者の方が割高になってしまう。

定期医療保険は、契約期間が限定されている上、更新のたびに保険料を見直すため、若い間は保険料が安く、年齢を重ねるにつれ段階的に上がっていく。これに対して終身医療保険は、年齢が上がっても保険料が上がらないため、高齢になってからのリスクについても、加入時の年齢で算出した保険料により賄わなければならない。

定期医療保険では段階的に上がっていく保険料を、終身医療保険では若いうちから前払いしていく形になるのだ。そのため若いうちに終身医療保険に加入する場合、定期医療保険に比べてその保険料がやや割高になってしまうのである。

定期と終身 どちらを選択すべきなのか

ここまで、定期医療保険と終身医療保険、それぞれの特徴について詳しくみてきた。医療保険のメリット・デメリットは表裏一体であり、何もかも完璧な商品というのは存在しない。そのため定期と終身どちらのタイプに加入するか迷ったときは、医療保険に何を求めているのか、何を重視するのか、といった点について考えてみるといいだろう。

●終身医療保険をおすすめする人とは

以下に該当する人には、終身医療保険をおすすめする。

・保険料が上がらないタイプの保険に加入したい
・老後に高い保険料を支払う自信がない
・ライフステージに関係なく、入院や手術をした場合に掛かる出費をある程度カバーするための「ベース」としての保険が欲しい
・自営業など、現在の収入を維持することに不安がある
・健康状態が悪化しても継続して保障を受けられる保険が欲しい

●定期医療保険をおすすめする人とは

以下に該当する人には、定期医療保険をおすすめする。

・若くて収入が少なく、保険料を安く抑えたい
・家のローンがある、子どもが小さいなど、一定期間に限定して手厚い保障を得たい
・医療制度や公的制度の変化に合わせて、一定期間ごとに保険内容を見直したい
・既に終身医療保険に加入しており、プラスアルファの保障を検討している

医療保険はニーズに合わせて終身か定期かを選ぶ

定期タイプと終身タイプ、どちらの医療保険に加入するかについては、自分が保険に何を求めているのか、今後の人生設計などさまざまな点を考慮し、慎重に選ばなければならない。医療保険のメリット・デメリットは表裏一体のものであるから、まずは終身医療保険と定期医療保険の特徴について理解し、両者を比較検討することが大切である。

曽我部三代
保険業界に強いファイナンシャルプランナー。富裕層の顧客を多く抱え、税金対策・相続対策を視野に入れたプランニングを行う。2013年より、金融関連記事のライターとしても活動中。