(写真=PIXTA)
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厚生労働省の調査によると、主な病気の平均在院日数は2005年度に比べて2011年度で減少している。病気にもよるが、医療の発達により入院治療が短期化したり通院可能になったりしている。

患者が多くてあまり入院をさせてくれないのも現状のようだ。筆者の母も大腸がんで入院し手術をしたが、お腹にストローのようなものが刺さっている状態で退院させられた。不安でもう少し入院できないかと交渉したが、自宅のシャワーで傷口を洗うほうが清潔に保てるし何より入院手術を待つがん患者がたくさんいるため退院し自宅で家族協力のもと療養をしてほしい、という返答が返ってきた。なるほど、入院日数が減少しているわけだと納得の瞬間だった。

さて、医療保険を選ぶポイントの一つとして、1入院あたりの入院限度日数が挙げられるだろう。そこで今回はこの入院日数に着目して医療保険を考えてみたい。

そもそも「1入院」の定義とは

保険会社の医療保険には日数の型がある。例えば「医療保険60日型通算限度日数1000日」という感じだ。ただし、1回の入院で60日まで保障され、それを1000日分保障するというような単純なものではなく、消費者にはわかりにくい。多くの保険会社は因果関係のある病気で180日の期間を空けないで入院すればそれは「1入院」としている。

例えば、胃がんで20日間入院したとしよう。60日型の入院保険に加入していた場合、20日分を入院保険で使ったことになる。退院後60日でがんが肺に転移し入院したとすると、胃がんの退院から60日しか経っていないことと、胃がんと肺がんに因果関係があるため、入院保険は初めに使った20日を差し引き、使えるのは残り40日となる。

これが因果関係のない病気やけがであれば以前使った20日とは関係なく60日使える。因果関係があったとしても、胃がんの退院から180日経過していれば当初の20日分は関係なくなり60日分の入院保険が使える。

ただし、一部の保険会社では因果関係あるなしに関わらず、どんな入院であっても退院後180日経過していなければ入院日数に加算するところもあるので注意したい。しかも分かりやすく表記はされていないので確認が必要だ。

入院にかかるお金の整理

入院時にかかるお金はさまざまであり、人それぞれである。入院時の治療費は健康保険適用の治療であれば、高額療養費制度の自己負担限度額があるため、限度額以上は支払った分が戻ってくる(限度額申請をしとけば一定以上払うことはない)。

70歳未満で標準報酬月額が28万円から50万円の人が、窓口で支払った医療費が15万円の場合、自己負担額は8万2430円になる。加入の健康保険組合によっては付加給付があり、1か月の治療費の自己負担が2万円だった、というケースもある。

つまり、健康保険適用の治療であれば思ったより治療費にお金がかからないのだ。ただし、入院に伴う食事代、パジャマやテレビなどの雑費が思ったより負担となる。そして何より個室料の負担は大きい。場合によっては1日2万円近い部屋が主流という病院もある。もちろん病院側はよほどでない限り、大部屋希望であれば意に沿ってはくれるが中には個室でないとダメという人もいるだろう。その場合は個室代も念頭に入れる必要がある。

また、昨今では健康保険の使えない高額な治療費のかかる先進医療もある。なかなか先進医療に行きつけないという問題はあるもののいざという時のためには備えも必要だ。そして短期入院化しているとはいえ、精神や神経の病気では在院日数の平均が半年を超える場合もある。

入院費より生活費、そして介護費用対策を

短期で完治するものであればさほど生活に影響はないが、病気やけがにより体の機能が低下して職場を変えたり、働く時間を減らしたりして収入が減るリスクがある。実際がんになった人や後遺症が残ってしまった人に聞くと、治療費より生活費だという返事が多い。中には若くして病気が原因で要介護認定を受けて介護状態になっている人もいるのだ。

では、入院保険はどのように考えたらよいのだろうか?三大疾病などの重大疾病は、入院日数より入院後の生活を考える必要があるため、「日額いくら」というものより「一時金」でもらえるものをお勧めする。一時金であれば治療にも個室料にも生活費にも使える。こちらの保険は単体で加入するものもあれば医療保険に特約でつけるものもある。

そして、日額タイプの医療保険は日額3000円から5000円もあれば治療費分は賄える。日数もほとんどの病気は入院日数60日以下のため60日タイプで十分だ。保険会社によっては特約を付ければ重大疾病に関しては入院日数の上限を延ばせるところもある。

精神や神経などの長期入院が心配であれば360日タイプや730日タイプもあるが、30日免責1000日保障のものもあるので合わせて検討しても良いだろう。そして病気やけがが原因による介護が心配であれば、介護保険や介護時も出る死亡保障を検討する必要がある。先進医療特約も金額的に負担が少ないため、つけておいて問題ないだろう。

いずれにしても漠然とした不安から入院保険に加入するのではなく、自分が何にリスクを感じていて実際それがおきたらどのくらい足りないかを明確にすることが先である。そして自分に見合った保険を選んでほしいものである。ご自身の加入する健康保険の給付内容の確認もお忘れなく。

廣木智代 ファイナンシャルプランナー(CFP)
結婚後、家業のスナックで手伝いをしていたが母の引退と共に廃業。家計の苦しさを埋めるための我が家の保険の見直しをきっかけに、お金に賢くなるお手伝いをするべくCFP資格を取得。心と体とお金の健康バランスを軸に、個別相談、セミナー、執筆を展開中。 FP Cafe 登録FP。