(本記事は、大村大次郎氏の著書『税金を払わずに生きてゆく逃税術』悟空出版、2018年3月4日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

税金ゼロの生活をめざして──

税金を払わずに生きてゆく逃税術
(画像=happybas/Shutterstock.com)

最初に申し上げたいのは、「絶対にあきらめないでほしい」ということ。

中流やそれ以下の皆さんは、「どうせ自分に節税なんてできっこない」と考えている場合がけっこう多い。

しかし、それは違う。

一般庶民ができる逃税術はたくさんあるのだ。

いや、それどころか「税金を払わずに生きてゆく」ことさえ場合によっては可能なのである。

そもそも、中流以下の人たちは、課税額がそれほど多くはない。だから、ちょっと頑張れば、それをゼロにできるのである。

たとえば、年収360万円(額面)のサラリーマンを例にとってみよう。

この人の基本的な控除額は、次のようになる。

基礎控除 38万円
給与所得者控除 108万円
社会保険料控除 45万円
所得控除 合計 約191万円

つまり、191万円が年収から控除され、その残額に対して税金がかかる。年収から所得控除額を引くと──

300万円-191万円=109万円

となり、この109万円に対して所得税がかかってくるのだ。住民税も、だいたいこれと似た計算になる(ただし住民税は若干、数値が違う)。

なので、この109万円をゼロにすれば、税金は課せられないのだ。もし、この人に、妻と子供一人がいたとする。となれば、扶養控除などでさらに76万円が控除される。となると、

109万円-76万円=33万円

つまり、あと33万円をなにかしらで控除できれば、税金はゼロにできるのだ。

次に年収200万円で独身のサラリーマンを例にとってみよう。

基礎控除 38万円
給与所得者控除  78万円
社会保険料控除 約30万円
所得控除合計 約146万円

この人は、収入200万円から146万円が控除され、その残額の54万円に税金が課せられるのだ。

この54万円をどうにかしてゼロにすれば、税金はかかってこないことになる。

課税所得54万円といっても、バカにならない。これに所得税、住民税がかかってくるのだから、約8万円が徴収されるのだ。

年収200万円の人の8万円というのは、かなり大きいはずである。

だからこそ、これはどうにかしてゼロにしたい。

金持ちよりも中流以下の人にこそ、税金を払わない生活をしてもらいたいのだ。

栄養ドリンクやマッサージ代も控除の対象

中流以下の人がする節税方法でもっとも手っ取り早いのは、「医療費控除」を受けることである。

医療費控除は、一定以上の医療費がかかった人は、その分を課税所得から減額するという制度である。

医療費控除の計算は以下の通りだ。

その年に支払った医療費(保険金等で戻った金額を除く)-10万円(注)=医療費控除額(最高200万円)

(注)10万円または所得金額の5%......いずれか少ない金額となる

端的に言うと、年間10万円以上の医療費を支払っていれば、若干の税金が戻ってくる、という制度である。

けっこう対象範囲が広いので、誰にでも簡単にできる。

医療費控除というのは、病院に支払ったお金だけが対象ではない。

病院での治療費、入院費のみならず、歯医者での診療費、各病院への交通費、一般の薬店などで買った市販薬、場合によっては、ビタミン剤、栄養ドリンク、あん摩、マッサージなども含まれる。

また、昨今流行の禁煙治療、ED治療などの費用も医療費控除の対象になる。

そういうのを全部足したら、だいたい誰でも年間10万円以上にはなるだろう。

ほとんどの人が普通に生活していたら、必ずいくらかの税金還付を受け取れるはずだ。

ちなみに、医療費控除の対象となる医療費、ならない医療費の主なものは次の通りである。

医療費控除の対象となる医療費
・病気やけがで病院に支払った診療代や歯の治療代
・治療薬の購入費
・入院や通院のための交通費
・あん摩・マッサージ・指圧師、はり師などによる施術費
・保健士や看護士、特に依頼した人へ支払う療養の世話の費用
・助産婦による分べんの介助料
・介護保険制度を利用し、指定介護老人福祉施設においてサービスを受けたことにより支払った金額のうちの分の相当額や一定の在宅サービスを受けたことによる自己負担額に相当する金額

(注)この他にも医療用器具の購入費、義手や義足等の購入費用も対象となる

医療費控除の対象とならない主な費用
・医師等に対する謝礼
・健康診断や美容整形の費用
・予防や健康増進のための健康食品や栄養ドリンク剤などの購入費
・近視や遠視のためのメガネや補聴器等の購入費
・お見舞いのための交通費やガソリン代

(注)親族などに支払う世話代や未払いの医療費なども対象とならない

市販薬も対象になる

医療費控除の額を増やそうと思えば、まず重要ポイントとなるのが、市販薬である。病院に行かない人でも、市販薬はけっこう購入しているものだ。

この市販薬を医療費控除として申告できれば、その範囲はかなり広がる。

で、市販薬の場合、医療費控除の対象となるケースとならないケースがある。その違いは簡単に言えば「治療に関するものかどうか」ということである。

怪我や病気をしたり、体の具合が悪かったりして、それを「治す」ために買ったものであれば、医療費控除の対象となる。

医者の処方のない市販薬でもなのだ。

いっぽう、「治療に関係ない薬」とは、予防のためや置き薬のために買ったものだ。

つまり、具体的な病気、怪我の症状があって、それを治すために買ったものであれば、「もしも」のために買っておいた場合はダメということだ。

しかし、その境界線は実に曖昧である。それを客観的に判断することは極めて難しい。

こういうときは、自分が「治療だと思えば治療」であり、「予防だと思えば予防」ということになるのだ。

医療費控除はよほど不審な点がない限り、本人の申告が認められるのである。

先ほども少し触れたが、ビタミン剤や栄養ドリンクも、一定の条件を満たしていれば医療費控除の対象となる

。一定の条件とは、次の二つである。

・何かの体の不具合症状を改善するためのものであること
・医薬品であること

つまりは、どこか具合が悪いところがあって、それを改善するために飲む場合はだが、体はどこも悪くないけれど、「健康増進のために飲んでおこう」という場合はNGなのだ。

ただし、これにも医者の処方せんなどは必要ない。

そして、「体の不調を治すため」なのか「健康増進が目的」なのかという判断も、原則として自己申告となる。

そのため、事実上医薬品でさえあれば、医療費控除の対象となると言える。

あん摩や鍼灸は国家資格のあるクリニックで

次に、あん摩、マッサージ、鍼灸などの代金も、一定の条件を満たせば医療費控除の対象になる。

条件とは、次の二つである。

・何かの体の不具合症状を改善するためのものであること
・公的な資格などを持つ整体師、鍼灸師などの施術であること

これも栄養ドリンクなどと同じように、「体はどこも悪くないけれど、とりあえずマッサージしてもらおう」というような場合はダメなのである。

どこか具合が悪いところがあって、それを改善するために施術を受ける、というのが原則だ。

さらに、どこの「治療施設」でもいいというわけではなく、ちゃんと公的な資格をもった整体師、鍼灸師などに施術してもらわないと適用されない。

市販薬や栄養ドリンク、あん摩、整体、マッサージなどの医療費として認められる条件をまとめておこう。

以下の通りである。

・市販薬......病気や怪我、体の不調などの症状を治すために買ったものであること。特に病気や怪我をしたわけではないけれど、もしものときのため買っているという「置き薬」は不可

・栄養ドリンク......病気、怪我、体の不調などの症状を改善するために買ったものであり、なおかつ「医薬品」であること

・あん摩、マッサージ、鍼灸等......身体の不調などの症状を改善するために受けたもので、「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」のいずれかの国家資格を持つ人から施術を受けた場合

総じて言うと、身体に何か不具合があるときの費用はOKだけれど、予防のためのものはNGということだ。

マッサージなどに行く人はけっこう多いと思われる。最近、マッサージ店がとても増えていることからも、疲れている人が多いのが窺える。

マッサージを受けるときには、「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を持つ店を選べば税を節約できるので、よく覚えておこう。

ED治療も禁煙治療も控除の対象になる!

昨今、ED治療を受けている男性が増えている。   ED治療に関してかかった費用も、医療費控除の対象となる。このことは、実はほとんど広報されていない。

しかし、EDは医療関係的には「病気」として扱われ、治療の対象となっているので、当然、医療費控除の対象になるのだ。

ED治療もけっこうなお金が必要となるが、医療費控除の申告をすれば若干でもそれを取り戻せる。   また、最近は病院で禁煙治療も行われているが、その費用もまた医療費控除の対象になる。

さらに禁煙ガムも、医薬品であれば医療費控除の対象になるのだ。   

温泉療養やスポーツ施設利用で税金を安くする

一定の条件さえ満たせば「温泉療養」も医療費控除の対象となる。

しかも、温泉施設の利用料だけではなく、温泉までの旅費や旅館の宿泊費なども、その対象となるのだ(必要最低限の費用のみであり、旅館での飲食費や、グリーン料金などは認められない)。

一定の条件とは、次の二つである。   ・医師が温泉療養を病気等の治療になると認めた場合(医師の証明書が必要)
・厚生労働省で認められた温泉療養施設を利用した場合

つまり、医者から温泉療養指示書というものを出してもらい、その指示書に従って、特定の施設で療養をした場合に医療費控除の対象になるということである。

厚生労働省が認めた温泉療養施設は、全国に21カ所ある(2018年1月現在)。

詳しくは温泉利用型健康増進施設連絡会のホームページを見ていただきたい。
URL:http://www.jph-ri.or.jp/onsen-nintei/index.html

温泉療養費用と同じように、スポーツジムを利用した費用も、一定の条件をクリアすれば医療費控除の対象とすることもできる。

一定の条件とは次の三つである。   ・高血圧症、高脂血症、糖尿病、虚血性心疾患等の疾病で、医師の運動処方せんに基づいて行われるものであること
・おおむね週1回以上の頻度で、8週間以上の期間にわたって行われること
・運動療法を行うに適した施設として厚生労働省の指定を受けた施設(「指定運動療法施設」)で行われるものであること

対象となる指定運動療法施設は、全国で215カ所ある(2018年1月現在)。詳しくは、日本健康スポーツ連盟のホームページを見ていただきたい。
URL:http://www.kenspo.or.jp/

税金を払わずに生きてゆく逃税術
大村大次郎
大阪府出身。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。執筆、ラジオ出演、テレビ番組の監修など幅広く活躍中。『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書クラレ)、『税金を払う奴はバカ』(ビジネス社)など著書多数。また、経済史の研究家でもあり、別のペンネームで30冊を超える著作を発表している。 (画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)