年末調整,計算
(写真=Thinkstock/Getty Images)

給与所得者で、あるいは社会人で、年末調整という言葉を聞いたことがない人間はほとんどいないだろう。だが、年末調整がどのような手続きなのか、正しく理解している人間も同じくらい少数なのではないだろうか。今回は年末調整についてその存在意義を解説し、併せて計算方法を紹介する。年末調整が何のための手続きか分からないという方や、自身の還付金(あるいは追納金)が一体いくらになるのか知りたいという方は、ぜひ参考にしてほしい。

年末調整とは

年末調整について理解するためには、まず源泉徴収税という制度について知らなければならない。源泉徴収税は、給与支払者(雇用者)が給与所得者(労働者)の給与から一定額を差し引く形で収める税金のことである。この一定額は、給与の額や事前に得た給与所得者に関する情報から算出されている。事前に得た情報というのは「扶養控除等(異動)申告書」によって給与所得者が申告した内容のことで、分かりやすいところで言えば社会保険料控除などがそれに当たる。

しかし源泉徴収段階ではすべての所得控除について対応することは難しく、これを改めて申告する手続きを一般に年末調整と呼ぶ。年末調整では人的控除、物的控除合わせて11種の所得控除について申告することが可能となっており、大部分の給与所得者にとっては控除額が増えるため源泉徴収税を納め過ぎている状態が発生する。この超過納税額は還付金として返還がなされるが、逆に源泉徴収税で不足していた場合は追納金を納めなければいけない。

いずれの場合であっても年末調整は「所得税を確定させること」を目的として行われる手続きであり、給与所得者にとっては確定申告の代わりといって差し支えない。

還付金が発生するケースとは?

月ごとに差し引かれた所得税よりも、実際に支払う所得税が少なかったというケースで、還付金が発生する。特に以下の2点に当てはまることが多い。

家族構成の変更などが生じた場合

結婚して家族が増えた場合や、新しく子供が生まれた場合に「扶養控除」が適用される。扶養控除とは、所得の合計が38万円以下の子供や両親など、控除対象扶養親族が受けられる控除となる。源泉所得税は昨年の扶養控除申告書の内容が反映されるため、年度の途中で家族構成が変更となった場合、控除の対象となる人の計算が行われていないので、年末調整で還付金が発生する。

また、配偶者と離婚、または死別して所得の金額や扶養している人がいる、などの条件に当てはまる場合に、女性は「寡婦控除」、男性は「寡夫控除」の対象となる。控除の金額は以下の通りだ。

  • 寡婦控除(扶養親族や子供がいる女性。年間所得が500万円以下):27万円
  • 特定の寡婦控除(生計が同一の子供がおり、かつ年間所得が500万円以下):35万円
  • 寡夫控除(生計が同一の子供がおり、かつ年間所得が500万円以下):27万円

給与・賞与からの控除以外で社会保険料や各種保険料を支払っている場合

会社員の健康保険料や年金保険料などの社会保険料は、通常、会社の給与から直接支払われている。雇用者によって管理されているため、この場合は還付金が発生しない。しかし、ケガや病気などで会社を休職したときに、個人で社会保険料を支払った場合や、子供や配偶者、親族などの国民健康保険料や健康保険料を支払った場合は、全額が「社会保険料控除」の対象となる。

さらに、生命保険やその他の医療保険を支払っている場合は「生命保険料控除」の対象となる。生命保険料控除の控除額は「新契約」と「旧契約」に分かれるため、注意が必要だ。2012年(平成24年)1月1日以降に保険契約を締結した場合には「新契約」が適用され、これ以前の締結には「旧契約」が適用される。控除額は以下の通りだ。

・新契約

保険料の支払額合計 控除額
20,000円以下 保険料の全額
20,001円〜40,000円 保険料×1/2+10,000円
40,001円〜80,000円 保険料×1/4+20,000円
80,001円以上 一律40,000円

・旧契約

保険料の支払額合計 控除額
25,000円以下 保険料の全額
25,001円〜50,000円 保険料×1/2+12,500円
50,001円〜100,000円 保険料×1/4+25,000円
100,001円以上 一律50,000円

また、地震保険に加入している場合には「地震保険料控除」が適用される。損害保険料控除は税制改正により、平成19年分から廃止されたが

  • 平成18年12月31日までに締結した契約(保険期間または共済期間の始まりが平成19年1月1日以後のものは除く)
  • 満期返戻金などがあり保険期間または共済期間が10年以上の契約
  • 平成19年1月1日以後に、その損害保険契約などの変更を行っていない

上記の条件を満たす一定の長期損害保険契約などに係る損害保険料については、地震保険料控除の対象となる。控除額は以下の通りだ。

              
区分 保険料の合計額 控除額
地震保険 50,000円以下 保険料の全額
50,001円以上 一律50,000円
旧長期損害保険料 10,000円以上 保険料の全額
10,001円〜20,000円 保険料×1/2+5,000円
20,001円以上 1,5000円
地震保険、旧長期損害保険料
の両方がある場合
それぞれの控除額の合計額
(最高50,000円)

年末調整の計算方法の流れ

年末調整額の計算は、次の算式に示す流れに沿って行われる。

  1. 給与総額-給与所得控除=給与所得控除後の給与等の金額(給与所得)
  2. 給与所得控除後の給与等の金額-所得控除額の合計値=課税給与所得金額(課税所得金額)
  3. .課税給与所得金額×税率(金額により変動)=算出年税額(算出所得税額)
  4. 算出年税額-住宅借入金等特別控除額=年調所得税額
  5. 年調所得税額×税率(復興特別所得税102.1%)=年調年税額

これだけでは分かり辛いため、続いて各要点について別途解説する。

給与所得とは

給与所得とは、給与と賞与の合計額(源泉徴収される前の金額)から給与所得控除を差し引いた金額である。収入と所得の違いについてはしばしば言及がなされるが、これは両者が単純に別のものであるという理由に加え、給与所得控除の控除額が大きいためでもある。

仮に300万円の「年収」に対して給与所得控除を適用した場合、その控除額は108万円であり、「給与所得」は192万円だ。これを混同してしまうと、その他所得控除を申告する上でも支障を来すため注意してほしい。

課税給与所得金額とは

給与所得から、さらに各種所得控除額を差し引いたものを課税給与所得金額と呼ぶ。あるいは、これをもって本来の所得税額、と見なす向きもある。算式を見れば分かる通り、課税給与所得金額の段階ではすべての所得控除を適用しているわけではないため、この見方は誤りとも言える。だが一方で、後ほど差し引かれる「住宅借入金等特別控除」は厳密には所得控除でなく所得税控除であるため、一概に誤りとも言いきれない。

さておき、所得控除には14種類の控除が認められており、年末調整ではそのうち11種類について申告が可能だ。配偶者控除や扶養控除、保険料控除などは特に適用される人も多いと思われるので、申告を忘れないよう気をつけたい。

算出年税額とは

課税給与所得金額に一定の税率を乗じることで、算出年税額を算出することができる。一定の税率とは、国税庁ホームページ等に記載されている「年末調整のための算出所得税額の速算表」によって求められる。先の例で行けば、192万円の給与所得にその他の所得控除を一切考慮しなかったとするとこれに適用される税率は5%だ。192万円×5%=96,000円が算出年税額となる。

追納か還付の判断方法

最終的に還付金が返還されるか追納金が発生するかは、年調年税額から源泉徴収税を差し引き、これが正の値になるか負の値になるかによって判断することができる。年調年税額は、算出年税額から更に住宅借入金等特別控除額を差し引き、そこに復興特別所得税を乗じることで求められる。

言い換えるならば、年調年税額とは「当該年の所得に対して支払うべき税額」であり、源泉徴収税は「当該年において既に支払った税額」だ。年調年税額-源泉徴収税が正の値になった場合は追納、負の値になった場合は還付がなされることになる。

具体的ケースで試算

簡単に各要点を解説したが、よりイメージしやすいよう続けて以下の条件で具体例を示す。

  • 年間給与総額:587万円
  • 源泉徴収税額(既徴収税額):14万0448円
  • 社会保険料控除額:83万2635円
  • 生命保険料控除額:56万000円
  • その他適用控除:配偶者控除、扶養控除(1人)

587万0000円-給与所得控除=415万4400円

415万4400円-(※所得控除額の合計値)=212万5765円

※83万2635円(社会保険料控除)+5万6000円(生命保険料控)+38万円(配偶者控除)+38万円(扶養控除)+38万円(基礎控除)=202万8635円

212万5765円(1000円未満切り捨て)×10%-9万7500円(算出所得税額算出時に金額ごと認められた控除額)=11万4500円

11万4500円×102.1%=11万6900円(100円未満切り捨て)

11万6900円-14万448円=-2万3548円

上記の計算より、このケースでは年末調整において2万3548円の還付がなされることとなる。文字や数字だけを追うと難しく感じるかもしれないが、適宜自身が申告する所得控除に関わりある情報だけを意識すれば、計算そのものは複雑ではない。

年末調整をもっと良く知ろう

年末調整では、今回のように具体的な金額をシミュレーションすることも大切だが、同様にどのような所得控除が適用できるかを知ることが肝要だ。例えば上記のケースでも、配偶者控除や扶養控除をそもそも申告していなければ、あるいは追納金が発生していた可能性もある。逆もまた然りで、適用される控除をすべて申告できるか否か、そしてそれらが正しく適用されるかどうかが問題だ。万が一にも見落としなどないよう、注意深く取り組んでいただきたい。