個人年金保険は、自ら老後資金を用意するための保険だ。個人年金保険は、一定条件で控除を受けることができる。詳しく解説しよう。
執筆者:森 泰隆
個人年金保険料の控除に関するQ&A
個人年金保険料控除とは?
個人年金保険は、国民年金や厚生年金とは別に、自ら老後資金を用意するための保険だ。年金形式でも、一括形式でも受け取ることができる。個人年金保険に加入すると1年間支払った保険料の一定額を控除することができ、所得税と住民税を軽減することができる。
個人年金保険は、国民年金や厚生年金とは別に、自ら老後資金を用意するための保険だ。年金形式でも、一括形式でも受け取ることができる。個人年金保険に加入すると1年間支払った保険料の一定額を控除することができ、所得税と住民税を軽減することができる。
個人年金保険料控除の控除対象になる保険は?
個人年金保険のすべてが控除の対象になるわけではない。以下の条件に加えて、個人年金保険料税制適格特約を付けている必要がある。
1年金の受取人が契約者またはその配偶者となっていること
2保険料等は、年金を受け取るまで10年以上にわたって定期に支払う契約であること
(一時払いは対象外)
3年金の支払いが、年金受取時に原則として満60歳になってからで、10年以上の定期もしくは終身であること
4年金受取人と被保険者が同一人であること
個人年金保険のすべてが控除の対象になるわけではない。以下の条件に加えて、個人年金保険料税制適格特約を付けている必要がある。
1年金の受取人が契約者またはその配偶者となっていること
2保険料等は、年金を受け取るまで10年以上にわたって定期に支払う契約であること
(一時払いは対象外)
3年金の支払いが、年金受取時に原則として満60歳になってからで、10年以上の定期もしくは終身であること
4年金受取人と被保険者が同一人であること
個人年金保険料控除の申告方法は?
個人年金保険に加入し、保険料を支払うだけで自動的に控除が受けられるわけではない。会社員なら年末調整の手続きの際に、「給与所得者の保険料控除」を「生命保険料控除証明書」と共に提出する。確定申告が必要な自営業者などは、確定申告の書類に記入し、「生命保険料控除証明書」を添付する。
生命保険料控除証明書は、保険会社によって違うが10月中旬以降に送られてくることが多い。無くさずに保管しておこう。
個人年金保険に加入し、保険料を支払うだけで自動的に控除が受けられるわけではない。会社員なら年末調整の手続きの際に、「給与所得者の保険料控除」を「生命保険料控除証明書」と共に提出する。確定申告が必要な自営業者などは、確定申告の書類に記入し、「生命保険料控除証明書」を添付する。
生命保険料控除証明書は、保険会社によって違うが10月中旬以降に送られてくることが多い。無くさずに保管しておこう。
気をつけたい個人年金保険料控除税制適格特約
個人年金保険料控除を受ける条件を満たしていても、税制適格特約を付加させなければ、控除を受けられないこともある。
●税制適格特約とは?
個人年金保険料控除を受ける場合に必要なのが個人年金保険料控除税制適格特約である。保険料払込期間・年金支払期間10年以上、受給開始年齢60歳以上などの条件を満たせば、個人年金保険料税制適格特約を付加することができる。
●税制適格特約が外れることも
加入時に税制適格特約が付いても、途中で内容を変えてしまうと、適格特約から外れて、個人年金保険料控除が受けられなくなる。保険料の払込期間や支払期間10年以上のところを10年未満に短縮してしまったり、一括にしてしまったりすると控除が受けられなくなる可能性がある。
個人年金保険料控除に必要な証明書
年末調整や確定申告で生命保険料控除を受けるために、生命保険料控除証明書を提出しなくてはならない。個人年金保険料控除税制適格特約が付加されている個人年金保険では、保険会社によっては個人年金保険料控除証明書が発行される場合もある。
■証明書を紛失したとき
生命保険料控除証明書を紛失した場合は、保険会社に再発行を依頼できる。電話でも受け付けているが、インターネットで申し込める保険会社もある。確定申告時期の3月中頃まで受け付けている。
個人年金保険料控除の限度額
個人年金保険料控除は、社会保険料控除のように全額控除されるわけではない。どれくらい控除されるのかを見ていこう。
●個人年金保険料控除の年間限度額
個人年金保険料控除の限度額は所得税で年間4万円、住民税で年間2万8000円となっている。
●旧制度と新制度の比較
旧制度(2011年度以前の契約)は、個人年金保険料控除の年間上限額は所得税で5万円、住民税の上限額は3万5000円で、一般生命保険料控除と合わせて所得税10万円、住民税7万円が上限だった。
新制度(2012年度以降の契約)からは、介護医療保険料控除が加わり、3つ合わせて所得税12万円、住民税はそのままで7万円となっている。
●控除額の計算方法
所得税は、年間支払保険料が2万円以下だと全額が控除対象となり、年間支払保険料が増えるごとに控除額は以下のようになる。
・2万円超~4万円以下……支払保険料×1/2+1万円
・4万円超~8万円以下……支払保険料×1/4+2万円
・8万円超……一律4万円
一方、住民税は、年間支払保険料が1万2000円以下だと全額が控除対象となり、年間支払保険料が増えるごとに控除額は以下のようになる。
・1万2000円超~3万2000円以下……支払保険料×1/2+6000円
・3万2000円超~5万6000円以下……支払保険料×1/4+1万4000円
・5万6000円超……一律2万8000円
控除の節税効果
実際にどれくらいの節税効果があるのだろうか。ここでは、扶養家族のいない年収600万円の例で計算してみる。
年収600万円の場合、給与所得控除と基礎控除や社会保険料控除や生命保険料控除(年間8万円以上の保険料の個人年金保険料のみ加入)などを合算した所得時控除を差し引くと、課税所得は298万円となる。
課税所得298万円の所得税率は10%で、住民税も10%と仮定すれば(一部地域によって異なる)、所得税は4000円で住民税なら2800円節税できたことになる。
個人年金保険料控除と他の控除を使ってさらにお得に
個人年金保険は、公的年金を上乗せすることができ、控除を使って節税することもできる。個人年金だけでは不安なら、2014年から始まった一定額までの株式や投資信託等の配当金や譲渡益が非課税になるNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)を併用すれば、さらにお得になる。iDeCoは運用益が非課税なうえに、掛け金全額を控除することができる。
個人年金保険料控除の年末調整と確定申告
会社員なら年末調整で済むことが多いだろう。ただし自営業やサラリーマンでも、年収2000万円以上の人や副業などで20万円以上の収入がある人は確定申告をしなければならない。
●年末調整の給与所得者の保険料控除申告書の書き方
年末調整の際に、生命保険料控除証明書とともに保険料控除申告書を会社に提出しなければならない。証明書が送られて来た時点の払込額の証明額ではなく、年末までの払い込み予定額の申告額を転載しなくてはならないので注意が必要だ。
●年末調整の給与所得者の保険料控除申告書の書き方
書面で確定申告を提出する場合は、生命保険料控除証明書を添付しなければならない。e-Taxを利用する場合は、生命保険料控除証明書の添付は不要だ。ただし、証明書は5年間の保存が必要なので注意しよう。
個人年金保険で控除以外に気をつけたいこと
個人年金保険は個人年金保険料控除が受けられて、受け取る年金額も非課税なので、お得な部分も多いが、気をつけないといけない部分もある。
●貯蓄商品として魅力的なのか?
個人年金保険は、支払った保険料よりも年金を多く受け取ることができるため、貯蓄型保険と言われている。一般の生命保険のように、病気やけがに備えた医療保障や遺族への死亡保障などは充実していない。
個人年金保険料の返礼率は、高くてもせいぜい保険料に対して105%~107%くらいが限界だ。大きなリターンは望めない。節税効果を合わせてもiDeCoやNISAよりは見劣りするといえるだろう。
●簡単に解約できない
個人年金保険は途中で解約すると損をしてしまうという性質がある。解約すれば、解約返戻金が戻ってくるが、それまで掛けていた元本を大きく下回る。特に3年目くらいまでに解約すると、返礼率が低く、大きく元本を下回る設定になっている。
個人年金保険料に限らないが、控除があるからといって、必要以上に保険に入ることは家計を圧迫することになりかねない。他の死亡保障の生命保険とのバランスも大事になってくる。保険料が家計を圧迫し、解約せざるを得ない事態は避けたいところだ。
●インフレに弱い
個人年金保険は定期預金同様に、固定金利の長期貯蓄型となっている。今はゼロ金利時代だが、仮に利上げをしても年金が増えることはない。仮にインフレとなった場合、資産が目減りすることを意味する。
インフレになれば、物価の上昇によって、お金の価値が下がることもある。かつての日本は普通預金・定期預金の利率も高く、学資保険も満期を迎える頃に倍になっていた。
政府・日銀が掲げるインフレ率は2%を目指しているが、昨今の情勢では金利2%まで上昇することも難しい。大幅なインフレは考えにくいとはいえ、これ以上の低金利が進むことも考えづらく、多少はインフレに対する備えも必要となる。
インフレに強い商品となれば、多少のリスクがあっても、株式投資や投資信託や高金利な外貨ということになる。
個人年金保険は、インフレが起きても年金額も解約返戻金も変わらないので、インフレが起きると資産が目減りする。
長生きリスクに備え、個人年金保険を活用しよう
2019年6月に金融庁の金融審議会が発表した老後2000万円問題が物議をかもした。夫婦の老後資金として、公的年金以外に2000万円が必要とする趣旨の報告書を公表したのだ。
人生100年時代を迎え、少子高齢化が今後も加速することが避けられないことを考えれば、公的年金だけで老後資金を賄うことは困難であると考えられる。
公的年金は、男性は1961年(昭和36年)4月2日以降生まれの人、女性は1966年(昭和41年)4月2日以降生まれの人は65歳からしか、受給することができない。
60歳からの再雇用で給料が減額された際に備える5年間の確定年金と、65歳以降の終身年金保険を組み合わせるのも1つの方法だろう。
終身年金保険は一生涯受け取ることができる。年金を受け取っている途中で被保険者が亡くなったとしても、保証期間内ならば、遺族が一定の残りの保証期間分の年金相当額を受け取ることができる。
インフレ対策として個人年金保険に入るなら、変額個人年金保険が適している。ただし運用リスクがあり、運用成績によっては保険料(元本)を下回るリスクがある商品もある。国内外株式と債券からなる特別勘定で運用されているので、インフレ対策として有効だ。変額個人年金保険は個人年金保険料控除ではなく、一般生命保険料控除の対象となる。
私的年金の充実が今後、長生きリスクへの備えとして重要になってくる。個人年金保険料控除を活用できて、私的年金の一つとして個人年金保険を活用することが長生きリスクへの備えとなるだろう。
【関連記事】
・年金は何歳から支払い、いつ支給される?気になる支給額まで解説
・個人年金保険のメリット・デメリット 保険で個人年金の積み立てができる
・確定拠出年金の運用先はどう選ぶ?運用のポイントは?
・毎月400円払うだけ!将来の年金が増える「付加年金」って何?
・年金受給額はいくら?厚生年金・国民年金の計算方法とシミュレーション