年末調整を行うと大部分の給与所得者は還付金を受け取ることができる。このことから、年末調整は税金が戻ってくる手続きなのだ、となんとなく理解している人も少なくないのではないだろうか。積極的に控除を利用していないという人は、年末調整の仕組みや控除の種類を知ればより多くの還付金を取り戻すことができるかもしれない。また年末調整をきちんと行っていない人は、そのリスクを正しく理解しているだろうか。控除の種類などと併せて、ぜひ今一度確認してほしい。

年末調整とは

国民には納税義務があり、通常その税額は確定申告によって決まることになる。だが、会社員を始めとする給与所得者すべてが同様の手続きを行うのは非常に手間がかかるため、これを簡略化する制度として源泉徴収税が設けられている。源泉徴収税は、給与支払者が事前に得た情報を元に給与から天引きする形で徴収しているが、これはあくまでも年間を通して一定の給与所得が支払われることが前提となっているため実際の課税額とは誤差が生じてしまう。この誤差、過不足納税額を補填、還付する手続きを年末調整と呼ぶ。

年末調整は給与所得者にとって確定申告と同義であるため、控除の適用如何に関わらず原則的に行うべき手続きなのだ。これを怠ると、還付金を受け取れないだけでなく、不足していた納税額について後日督促される可能性もある。支払い忘れた税金には延滞税や加算税といった罰金が課されてしまうため、年末調整を行っていないという人は気をつけよう。

年末調整での主な控除

年末調整では、通常の確定申告で対象となる14種類の所得控除のうち別途申告が必要になる医療費控除・雑損控除・寄付金控除を除いた11種類の所得控除について対応が可能となっている。所得控除は、人的控除と物的控除とに大別することができる。

人的控除(個人的事情を考慮する控除)

基礎控除、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、勤労学生控除、寡婦(寡夫)控除、障害者控除

物的控除(政策的配慮による控除)

社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済掛金控除、医療費控除、寄付金控除、雑損控除

またこれらとは別に、給与所得者は無条件に給与所得控除の適用を受けることができる。各種控除の要件などが指す給与所得とは、給与総額から給与所得控除を差し引いた後の金額を指す。扶養控除や配偶者控除などでは控除対象者の所得が38万円未満であることが要件とされているが、これら控除の適用を鑑みて一般に103万円の給与で抑えた方が良いと言われるのは給与所得控除を考慮するためである。

どんな人が還付金をもらえる?

年末調整において大部分の給与所得者が還付金を受け取ることができるのは、源泉徴収段階で各種所得控除について考慮されていない部分が多いからだ。源泉徴収税は給与支払者が事前に得た情報から算出している、と前述したが、ここで考慮されるのは「社会保険料」と「申告時点での扶養人数」についてのみである。

これ以外の控除、例えば生命保険料控除を申請する場合や、結婚や出産等により扶養人数が変化した場合は還付金が発生することになる。また基本的に源泉徴収税は不足なく徴収できるよう設定されているため、これら控除の適用がなくとも還付がなされる可能性は高い。

還付金をもらえるのはいつ?

還付金が給与所得者に支払われる時期は給与支払者次第なため、会社や雇用先によって異なる。年末調整の提出最終期限は1月31日となっており、これまでに各社で事務処理は済んでいるはずだが、適用するタイミングに違いがあるのだ。年末調整による還付金のみを別途支払う給与支払者もあるが、一般的には各月の給料と併せて支払うケースが多く、早ければ12月の給与と共に、遅ければ2月の給与と共に支払われることとなる。

異動や転職により、これまでよりも還付金が支払われる時期が遅いなどの不安を感じる方もいるかもしれないが、還付金支払いには明確な時期が規定されているわけではないためあまり心配する必要はない。どうしても気になる場合は、各社担当者へ直接訊ねるしかないだろう。

年末調整での還付金試算

では年末調整によって実際にいくら還付金が支払われるのか試算するため、以下の式にそれぞれ金額を当てはめていこう。

1.給与総額-給与所得控除=給与所得控除後の給与額

2.給与所得控除後の給与額-各種控除=算出所得税額

3.算出所得税額-住宅借入金等特別控除額=年末調整所得税額

4.年末調整所得税額×税率(102.1%)=年末調整年税額

5.年末調整年税額-徴収税額=年末調整金額

給与所得控除や算出所得税額の計算は複雑なため、国税庁ホームページなどで参照できる速算表を用いると良い。最終的に導き出された年末調整年税額が「本来支払うべき税額」、これに対し「徴収税額」がすでに支払っている(会社で徴収されている)税額だ。年末調整金額が正の値であれば追納金、負の値であれば還付金が発生することになる。

再調整も視野に入れて計算しよう

年末調整後は給与支払者から源泉徴収票が配られるが、記載されている金額等に誤りがあれば訂正を依頼することができる。年末調整が行われたからといって安心するのではなく、正しい処理がなされているかどうか、自身で計算し直すことが大切だ。