節税において、特に個人が注目すべき税金として挙げられるのは所得税だ。これは所得税が働く人すべてに共通して課せられる税金であると共に、多くの控除が設けられている税金だからである。
今回は、そんな所得税控除の中でも社会保険料の控除について紹介する。自身がサラリーマンだからと会社に任せているという方も決して他人事ではないので、ぜひ確認しておいてほしい。
社会保険料控除ってなに?
社会保険料控除とは、支払った社会保険料がそのまま所得税の課税金額から控除されるというシンプルな控除制度である。では対象となる社会保険料とはなんなのか、以下に代表的なものを記そう。
・健康保険、国民年金、厚生年金
・国民健康保険の保険料、または国民健康保険税
・高齢者保険料
・介護保険料
・労働保険料(被保険者として個人が負担する分)
これ以外にも公務員の共済保険料などが挙げられるが、ひとくくりに説明するならば「(個人的でなく)公的に支払う保険料」は基本的にすべて社会保険料控除の対象になる。
社会保険料控除が非常に優れているのは、その控除額に制限がないということだ。先に挙げた類の保険料でさえあれば、適用を受ける者の所得などに関わらず支払った全額が控除対象となる。これはその他の税制を見てもめずらしい措置であり、それだけ社会福祉は重要視されているということでもある。ともかく誰もが制限なく利用できる制度であるならば、節税に活用しない手はないだろう。
扶養家族の社会保険料も対象に?
さて、厚生年金や保険料については会社や組織が天引きしているという場合、あなた自身の社会保険料控除はそのまま会社や組織が行ってくれていることだろう。
しかし、あなたが養う扶養家族の分はどうだろうか。社会保険料控除の適用範囲は、「自身に課せられた保険料」ではなく「自身が支払った保険料」である。そのためあなたが扶養家族の分の社会保険料を支払っている場合には、それらすべてが控除対象となるのだ。
これについても、会社によっては「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」という書類を渡されることがあるかもしれないが、そのようなアナウンスをされた覚えがない方は即刻申請を検討すべきだ。
前述の通り社会保険料控除には制限がなく、支払えば支払った分だけ所得税が控除されることとなる。社会保険料控除は「その年に支払った社会保険料」に適用されるため、それ以上さかのぼって控除を受けることはできない。手遅れにならないうちに、早めに手を打った方が良いだろう。
社会保険料控除を利用するには?
社会保険料控除の適用を受けるには、まず会社員ならば「社会保険料給与所得者の保険料控除申告書」という書類に、控除を受けたい保険料に関する証明書(仮に国民年金ならば「国民年金保険料控除証明書」など)を添付して提出することで、年末調整時に控除される。会社員がこれを利用するケースは、主に猶予されていた国民年金を追納した場合などかと思われるが、このとき支払期間について憂慮する必要はない。
例えば2年間の保険料支払を猶予されていたとして、これをまとめて支払ったのがその年内であるならば問題なく全額控除対象となる。
次に個人事業主の場合、確定申告時に各種社会保険料支払いを証明する書類を添付することで控除の適用を受けることができる。このとき、もし証明書がなかったとしても、支払い履歴などで確認できる範囲であれば十分に控除適用の可能性はあるので諦めずに申告しよう。
会社員であっても、同様の手続きを踏めば個人的に社会保険料控除を申請することは可能だ。多少手間はかかるが、会社へ申告書の提出を忘れてしまった場合や途中入社により会社で手続きされない場合など、試す価値は十分にあるだろう。
より効果的に控除を活用するポイントは?
何度も言うように社会保険料控除の対象となるのは「その年に支払った社会保険料」であり、控除されるのは「その年の所得税」だ。
これを最大限活用するならば、できるだけ所得の多い年に、より多く社会保険料を納めた方が良い。ケースは限られるが、例えば新卒で採用された会社員ならば、入社1年目よりも2年目に猶予されていた国民年金をまとめて支払った方が良いし、失業などで一時的に所得を失っていた人も同様だ。
社会保険料控除は節税の入り口としてふさわしい
社会保険料控除は、適用の制限や限度額などを気にする必要がないため、数ある税金の控除制度の中でも取り分け扱いやすい。気をつけるポイントはせいぜいタイミングぐらいで、その申告方法も確定申告さえできればそう迷う点もないはずだ。
これから節税について考えたい、という方が初めに取り組むには実にふさわしく、税理士などの専門家に相談するまでもないだろう。ただ書類の記入方法や添付方法など細かな点で尋ねたいことがある場合は、一度税務署を訪れてみてもよいだろう。税務署が少しでも身近なものになれば、この先そのほかの節税を考える上でもメリットは大きなものとなってくる。