今年も残すところ1カ月と少しとなった。会社によっては年末調整の説明会に行ったり、あるいは年末調整書類の準備にとりかかったりしていることだろう。「正社員ならやって当たり前の年末調整。しかし、世の中には会社を辞めてフリーになった人やバイトやパートなどで働いている人もいる。彼らにも年末調整は必須なのだろうか。今回は「年末調整をしなくてもいい人」について解説する。

年末調整をしなくていい人はこういう人

年末調整,税制,確定申告
(写真=PIXTA)

年末調整の対象とならないのは次に該当する場合だ。

1.給与の収入額が2000万円を超える人

2.災害による被害を受けて、本年分の給与に対する源泉所得税の徴収猶予又は還付を受けた人

3.年の中途で退職し、そのまま年末を越した人で、一定の要件(※)に該当しない人
(一定の要件……死亡により退職した人、著しい心身の障害のために退職した人で、その退職の時期から本年中に再就職することが不可能と認められ、かつ、退職後本年中に給与の支給を受けない人)

4.2カ所以上から給与の支払いを受けている人で、他の給与支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人(月額表または日額表の乙欄適用者)

5.年末調整までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人

6.継続して同一の雇用主に雇用されない日雇労働者(日額表の丙欄適用者)

7.日本に住所又は1年以上の居所のない人(非居住者)

ここでちょっと混乱するのが「乙欄」「丙欄」という表記だろう。この表記は「甲欄」という言葉とともに、源泉徴収税額表に登場する。

「甲欄」というのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人に適用される。多くの人は1カ所で働くか、複数の会社で働いているとしてもどこか一つが主な勤務先となっているだろう。そういった勤務先で受け取る給与を「主たる給与」といい、これに甲欄が適用される。

つまり、正社員ならばほぼ必ず甲欄の適用者となり、年末調整を受けることとなる。その証拠に、毎年12月、「期日までにこの紙に記入して総務(あるいは経理)に提出してください」という注意と共に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という緑色の用紙を受け取っているはずだ。この用紙が年末調整のあるなしの基本的判断基準となる。

「乙欄」というのは、2カ所以上の会社で働いている場合における、いわゆる「サブの会社」でもらっている給料に適用される。このサブの給料については「従たる給与」とされる。従たる給与として乙欄が適用された場合、そのサブの会社では年末調整は行われない。

「丙欄」というのは、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出がない人に適用される。「仕事はしているけれど提出がない」ということで、仕事先を転々とする日雇い労働者に該当することが多い。

「年末調整しなくていい?ということは、人によっては税金納めなくていいってことなんじゃない?」と思いたくなるところだが、日本で発生した給与は基本的にすべて課税となっている。これについては以下に説明する。

注意1 年末調整をしなくても所得税の確定申告をしなくてはいけない人

会社に勤務していて年末調整をしなくても、年明け3月15日までに所得税の確定申告を行わなくてはいけない人がいる。それが上記1及び3から6に該当する人だ。必ず確定申告していただきたい。その際、メインの勤務先からもらった源泉徴収票を申告書に添付する必要があるので、きちんと保管することが必要だ。

余談だが、副業がバイトやパートという給与所得ではなく、投資や転売、アフィリエイト、ハンドメイドの売買、週末コンサルなど給与所得以外の所得(譲渡所得や雑所得、規模によっては事業所得など)であって、その所得(利益)が合計20万円を超える人も、確定申告をしなくてはならない。

主な勤務先に身バレするのが心配なら、住民税の納付方法を「自分で納税」にチェックしておくとよいだろう(ただし確実にバレないとは言えないので注意していただきたい)。

注意2 所得税の確定申告もしなくていいけど住民税の確定申告が必要な人

先ほど「副業などで給与所得以外の所得の合計が20万円以下の人は確定申告不要」と述べたが、これはあくまでも「所得税の確定申告が不要」というだけだ。住民税においては別途申告が必要になる。

なぜかというと所得税は所得税法という法律によって決められているが、住民税は地方税法で定められており、こちらにはこのような規定はないからだ。そのため、お住まいの自治体の役所に行き、3月15日までに確定申告をしていただきたい。

注意3 確定申告しないと確実に損する人

年末調整でも確定申告でも言えることだが、税金の申告を行うと納税しないと行けない人もいれば還付を受ける人もいる。先ほど注意1で確定申告が必要な人について述べたが、この内、「確定申告をしないと確実に損する人」というのが3及び5に該当する人だ。

なぜかというと、毎月の給与から源泉徴収されている所得税は、本来の徴税額より若干多めに金額が設定されている。「年末調整は税務署がお小遣いをくれるもの」と誤解している人がいるのだが、その原因はまさにこれだ。大抵の正社員は年末調整を行うと、税金が還付される。言い換えると、年末調整も確定申告も行わなければ、税金を多くとられたまま、自分が損することになる。

この他、年末調整の際、住宅ローン控除の書類や保険料控除の書類を提出し忘れた人なども確定申告をした方が有利だ。面倒がらずに作業を行ってほしい。

いかがだろうか。「年末調整をしなくていい」というのは気がラクそうに見えるが、実は単に国の独自の判断で対象外とされているに過ぎない。それを過ぎれば確定申告という負担が個々人にかかってくるだけなのだ。毎年年末、緑色の用紙を渡されるたびに「面倒くさい…」とため息をつく人もいることだろう。しかし、確定申告はもっと面倒くさい。会社がその面倒くささを肩代わりしてくれていることに感謝しつつ、書類準備をコツコツと行ってほしい。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「 税理士がつぶやくおカネのカラクリ

【編集部のオススメ記事】
最前線で活躍する大人のスキンケアの心得とは(PR)
ZUU online8月記事ランキング 丸井は百貨店ではない、300万円超えのスーパーマリオ……
デキるビジネスパーソンは脂を身体に乗せず、仕事に乗せる。(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
NISA口座おすすめランキング、銀行と証券どっちがおすすめ?(PR)