生命保険の払込保険料額に応じて所得税と住民税が軽減される、生命保険料控除制度。この制度は2012年に改正され、介護医療保険料控除が新設された。そして現在は、新旧両制度が併存する形となっている。生命保険料控除制度とはどういうものなのか、控除額を最大にするにはどのような工夫が必要なのか、といった点について解説する。

目次

  1. 生命保険料控除制度とは?
    1. ●自分が契約者でない契約も控除対象になる場合がある
  2. 2012年1月1日以後申込契約に対する生命保険料控除の概要
    1. ●新制度での生命保険料控除額【所得税】
    2. ●新制度での生命保険料控除額【住民税】
    3. ●新制度での控除限度額について
  3. 2011年12月31日以前申込契約に対する生命保険料控除の概要
    1. ●旧制度での生命保険料控除額〜所得税〜
    2. ●旧制度での生命保険料控除額〜住民税〜
    3. ●旧制度での控除限度額について
    4. ●2012年以後に更新・転換・特約中途付加した場合の取り扱い
  4. 新制度と旧制度の生命保険料控除は合算が可能
    1. ●合算しないという選択肢もある
  5. 生命保険料控除を最大限活用するための計算術
    1. ●まずは3パターンの控除額を計算
    2. ●最も控除額が大きい申告方法を選択
    3. ●3つの控除額を合計する
  6. 2011年までに申込んだ医療保険を見直すという選択
  7. 生命保険料控除制度を理解して賢く節税

生命保険料控除制度とは?

医療保険,見直し
(画像=PIXTA)

「生命保険料控除制度」は所得控除の一種である。納税者がその年の1月1日〜12月31日までに支払った一般生命保険料・個人年金保険料・介護医療保険料の額に応じて、一定額の所得控除が受けられるのだ。

この制度を利用する場合、納税者は確定申告書に設けられた「生命保険料控除」の欄に必要事項を記入し、生命保険会社から送られてくる「生命保険控除証明書」を添付したうえで税務署にこれを提出する。

所得控除を受けると課税対象となる所得額が下がるため、そのけ所得税と住民税が安くなる。

●自分が契約者でない契約も控除対象になる場合がある

生命保険料控除制度の対象となるのは、一定の生命保険契約のうち、以下の条件のいずれかを満たす契約である。

・保険金等の受取人全てが、当該保険料の払込人になっている
・保険金等の受取人全てが、当該保険料の払込人の配偶者である
・保険金等の受取人全てが、当該保険料の払込人の親族である

つまり、生命保険料控除制度の対象となるかどうかは「契約者が誰なのか」ではなく、「保険料を誰が負担しているのか」「保険金の受取人が誰なのか」という点に基づき判断されるのだ。

例えば、契約者が妻、保険料負担者が夫、保険金受取人が子、という生命保険契約がある場合、これを夫の生命保険料控除対象とすることが可能である。

2012年1月1日以後申込契約に対する生命保険料控除の概要

生命保険料控除制度は2012年1月1日をもってその制度が改正され、現在は新制度と旧制度が併存する形で運用されている。新旧制度では保険種類ごとの控除額や控除限度額が異なるため、まずはそれぞれの制度における生命保険料控除額について知っておくことが重要だ。

新制度の対象になるのは、2012年1月1日以後に申込んだ契約および、同日以後に更新した契約である。また控除の種類には、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つがあり、それぞれの所得控除額は、以下のようになっている。

●新制度での生命保険料控除額【所得税】

・年間保険料2万円以下……払込保険料全額を控除
・年間保険料2万円超4万円以下……(払込保険料×1/2)+1万円を控除
・年間保険料4万円超8万円以下……(払込保険料×1/4)+2万円を控除
・年間保険料8万円超……一律4万円を控除

●新制度での生命保険料控除額【住民税】

・年間保険料1万2,000円以下……払込保険料全額を控除
・年間保険料1万2,000円超3万2,000円以下……(払込保険料×1/2)+6,000円を控除
・年間保険料3万2,000円超5万6,000円以下……(払込保険料×1/4)+1万4,000円を控除
・年間保険料5万6,000円超……一律2万8,000円を控除

●新制度での控除限度額について

保険料控除の限度額は以下の通りだ。

・3種類の控除を受ける場合…所得税12万円・住民税7万円
・2種類の控除を受ける場合…所得税8万円・住民税5万6,000円
・1種類の控除を受ける場合…所得税4万円・住民税2万8,000円

2011年12月31日以前申込契約に対する生命保険料控除の概要

旧制度の対象になるのは、2011年12月31日以前に申込んだ生命保険契約である。控除種類は、「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」の2つしかない。医療保険は新制度下において「介護医療保険料控除」の対象となるが、旧制度下では「一般生命保険料控除」の対象となるのだ。

それぞれの所得控除額は、以下の通りである。

●旧制度での生命保険料控除額〜所得税〜

・年間保険料2万5,000円以下……払込保険料全額を控除
・年間保険料2万5,000円超5万円以下……(払込保険料×1/2)+1万2,500円を控除
・年間保険料5万円超10万円以下……(払込保険料×1/4)+2万5,000円を控除
・年間保険料10万円超……一律5万円を控除

●旧制度での生命保険料控除額〜住民税〜

・年間保険料1万5,000円以下……払込保険料全額を控除
・年間保険料1万5,000円超4万円以下……(払込保険料×1/2)+7,500円を控除
・年間保険料4万円超7万円以下……(払込保険料×1/4)+1万7,500円を控除
・年間保険料7万円超……一律3万5,000円を控除

●旧制度での控除限度額について

保険料控除の限度額は以下の通りである。

・2種類の控除を受ける場合…所得税10万円・住民税7万円
・1種類の控除を受ける場合…所得税5万円・住民税3万5,000円

●2012年以後に更新・転換・特約中途付加した場合の取り扱い

2011年12月31日までに申込んだ生命保険契約であっても、以下の場合には新制度が適用される。

・2012年以後に契約の更新をした
・2012年以後に契約の転換をした(存続する元契約がある場合、その部分は旧制度の対象)
・2012年以後に特約の中途付加をした場合(リビングニーズ特約など保障がない特約を除く)

新制度と旧制度の生命保険料控除は合算が可能

新制度が適用される契約の控除額と旧制度が適用される契約の控除額は、合算することができる。ただし、控除種類ごとの限度額は所得税が4万円、住民税が2万8,000円となり、新旧制度全体の適用限度額は所得税が12万円、住民税が7万円となる。

例えば、旧制度の対象となる一般生命保険(年間保険料6万円)と新制度の対象となる一般生命保険(年間保険料6万円)に加入しているとする。旧制度による控除額は4万円、新制度による控除額は3万5,000円となりこれを合算すると7万5,000円になるが、実際に控除を受けられるのは適用限度額4万円になるのだ。

●合算しないという選択肢もある

生命保険料控除は、必ず新旧制度を合算しなければならないわけではない。新制度と旧制度とでは控除種類ごとの限度額が異なり、旧制度のみで申告した方がより大きな控除を受けられるケースがあるのだ。

例えば、旧制度対象の個人年金保険(年間保険料10万円)と新制度対象の個人年金保険(年間保険料6万円)に加入していると仮定する。この場合、新制度のみで申告した場合の控除額は4万円、旧制度のみで申告した場合は5万円、合算した場合は4万円となり、新旧両制度を合算せず旧制度のみで申告した方が、控除額が高くなるのだ。

生命保険料控除を最大限活用するための計算術

ここまで、生命保険料控除制度の仕組みについて詳しく解説してきた。では、生命保険料控除制度をしっかり活用して最大限の節税効果を生むには、どうすればいいのだろうか。ここからは、生命保険料控除を最大限活用するための計算術について解説する。

新制度対象の一般生命保険(年間保険料5万円)、個人年金保険(年間保険料10万円)、介護医療保険(年間保険料1万5,000円)と、旧制度対象の一般生命保険(年間保険料10万円)、個人年金保険(年間保険料10万円)に加入していると仮定する。

●まずは3パターンの控除額を計算

新制度対象契約と旧制度対象契約が併存している場合、まずは以下の3パターンの控除額を計算する。

・新制度のみで申告した場合の控除額
・旧制度のみで申告した場合の控除額
・新制度と旧制度を合算した場合の控除額

上で挙げた事例について所得税の控除額3パターンを計算すると、以下のようになる。

・一般生命保険
新制度のみで申告した場合……5万円×1/4+2万円=3万2,500円
旧制度のみで申告した場合……5万円
合算した場合……4万円

・個人年金保険
新制度のみで申告した場合……4万円
旧制度のみで申告した場合……5万円
合算した場合……4万円

・介護医療保険……1万5,000円

●最も控除額が大きい申告方法を選択

控除額の算出ができたら、次は控除種類ごとに最も金額が大きいものを選ぶ。今回の例でいうと、以下のようになるだろう。

・一般生命保険……控除額5万円(旧制度のみで申告)
・個人年金保険……控除額5万円(旧制度のみで申告)
・介護医療保険……控除額1万5,000円

●3つの控除額を合計する

控除種類ごとの金額が出たら最後にその金額を合計する。今回は、一般生命保険料控除5万円+個人年金保険料控除5万円+介護医療保険料1万5,000円を合計した11万5,000円の所得税控除を受けられることになる。

「介護医療保険料」という控除種類が新設された、新しい生命保険料控除制度。控除種類が増えたこともあり、新制度で申告をしたほうがより多くの控除を受けられるように思うかもしれないが、あながちそうとも言い切れない。

生命保険料控除額を計算する際は3つのステップを踏み、どの方法で申告すれば最も高い節税効果を得られるのか、慎重に判断することが大切だ。

2011年までに申込んだ医療保険を見直すという選択

新しい生命保険料控除制度では、一般保険料控除と個人年金保険料控除に加え、「介護医療保険料控除」が新設された。そのため旧制度の対象となる医療保険がある人は、これを見直し新しい医療保険に加入することで、年間控除額を大きくできる可能性がある。

例えば、旧制度の対象となる一般生命保険(年間保険料10万円)、医療保険(年間保険料8万円)、個人年金保険(年間保険料10万円)に加入しているとする。この場合の年間控除額は10万円であるが、医療保険を見直し新しい商品(年間保険料8万円)に乗り換えた場合、新契約については新制度が適用されるため年間控除額が12万円になるのだ。

近年は生命保険会社同士の競争が激化していることもあり、安い保険料で充実した保障が受けられる医療保険が多く販売されている。2011年以前に申込んだ医療保険がある人は、見直しを検討してみてはいかがだろうか。

生命保険料控除制度を理解して賢く節税

新しい生命保険料控除制度では、控除種類に介護医療保険料控除が新設された。これに伴い2011年以前申込みの医療保険に加入している人は、見直しをして新しい商品に加入することで、より大きな控除を受けられる可能性が出てきた。ただし、新旧制度が併存する現在の状況では、加入している保険の種類や年間保険料などによって旧制度を利用した方が、控除額が高くなる場合もある。確定申告をする際は、控除額について丁寧にシミュレーションし、どちらの制度を利用するのか決定することが大切だ。

曽我部三代
保険業界に強いファイナンシャルプランナー。富裕層の顧客を多く抱え、税金対策・相続対策を視野に入れたプランニングを行う。2013年より、金融関連記事のライターとしても活動中。