(本記事は、ビジョン税理士法人編著『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』セルバ出版の中から一部を抜粋:編集しています)

青色申告と白色申告はどっちがおトク

確定申告
(画像=Princess_Anmitsu/Shutterstock.com)

●記帳が必要なのに特典がない白色申告はメリットなし

なるみ:記帳次第で申告の方法が変わることはわかりました。では、青色申告と白色申告ではどちらがおすすめですか。

あかり:ズバリ青色申告がおすすめです。

その理由は平成26年から白色申告でも記帳と帳簿の保存が義務づけられたので、白色申告の「記帳が不要」というメリットがなくなってしまったためです。それなら特典がたくさんついている青色申告のほうが断然おトクです。

なるみ:でも、青色の記帳は大変って聞きますが。

あかり:青色申告では、正式な帳簿=複式簿記で記帳するというのがのぞましいですが、それが難しいのなら複式簿記でなくてもできる、初心者向けのやさしい青色申告がありますよ。

なるみ:2つの青色申告ってそれぞれどのような特徴があるのですか。

あかり:まず、青色申告は65万円と10万円のどちらの特別控除を受けるのかを選択することができます。

もちろん65万円控除のほうが節税効果は高いのですがこれには正式な帳簿=複式簿記で記帳するという要件があります。

10万円控除のほうはおこづかい帳をつける感覚の簡易簿記で記帳をすればOKです。

●ビギナーは青色申告10万円控除がおすすめ

なるみ:白色申告で求められる記帳と青色申告10万円で求められる記帳はどちらが簡単ですか。

あかり:それぞれ用意する帳簿が異なりますが、難易度はほとんど変わりません。

記帳の手間もほとんど同じことを考えると、白色申告を選択する理由がないように感じます。

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(画像=『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』より)

青色申告にはおトクな特典があるってホント

●65万円の特別控除で節税効果が期待できる

あかり:ところで、65万円の青色申告特別控除でどのぐらいの節税になると思いますか。

なるみ:適用する税率が10%でも6万5000円ぐらい節税できますよね。

あかり:実は65万円特別控除を受けると、所得税だけではなく住民税、国民健康保険税(国民健康保険料)の計算にも影響します。

例えば、年間所得が195万円の場合、全部で約15万円ぐらい節税が可能です。

●特別控除以外にも40以上の特典が!

なるみ:特別控除以外にも特典がありますか。

あかり:青色申告の特典は、下図のように青色申告特別控除以外にもあります。

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(画像=『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』より)

1つ目は、「赤字を翌年以降3年間繰り越せる」という特典です。思ったほど儲からなくて経費がかかりすぎて赤字が出た場合、その赤字を繰り越して翌年以降の所得から差し引くことができます。

●家族に給料を出しているとき

あかり:2つ目は、家族に給料を出しているとき「家族に支払った給料を全額経費にできる」という特典です。

なるみ:白色申告では経費にできないんですか。

あかり:白色申告でも家族に支払う給与を経費にできますが、配偶者は86万円、生活費を一緒にしている家族は1人につき50万円までしか経費として認められないのです。

なるみ:配偶者に年間200万円のお給料を支払っても経費にできるのは86万円ということですか。

あかり:そうなんです。家族にお給料を支払っている人は、青色申告を選択することをおすすめします。

この特典を利用するには「青色専従者給与に関する届出書」の提出が必要なので忘れないようにしてください。

なるみ:白色申告と記帳の手間がほとんど同じなら、10万円控除の青色申告にチャレンジしてみます。

10万円控除と65万円控除を選ぶポイントは

●所得が出ていなければ65万控除が無駄になることも

なるみ:65万円控除と10万円控除の節税効果を比べると、どのような人でも65万円控除を受けたほうがおトクなんですか。

あかり:青色申告の人は収入から経費、青色申告特別控除額(10万円と65万円のどちらかを適用)、所得控除を差し引いて計算した課税所得金額に税率を掛けて計算するので、収入が少なければ10万円の控除で十分な場合もあります。

なるみ:複式簿記の記帳をがんばっても節税効果が同じっていうことですか。

あかり:収入が低い場合はそうなることがありますから、青色申告の特別控除は収入金額や記帳に掛けられる時間を勘案して選ぶことが必要です。

●所得が出ている人は65万円控除がおトク

あかり:例えば、昨年度600万円の収入があり、経費は180万円でしたという場合、所得控除は基礎控除だけなので、600万円から経費180万円と青色申告特別控除65万円と基礎控除38万円を差し引いた317万円が課税所得金額になります。

税金は317万円×10%から9万7500円を差し引いて21万9500円になります。もし、10万円控除で申告していたら、所得が372万円、税率が20%で所得税額は31万6500円になります。

なるみ:9万7000円も所得税の金額が安くなるなら、複式簿記で頑張る価値がありますね。

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(画像=『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』より)

確定申告を楽チンに済ませるにはどうすればいい

●帳簿の記帳を習慣化する

なるみ:確定申告を効率よく済ませる方法ってありますか。

あかり:直前になってためこんだ資料を一生懸命整理、記帳することになると、とても大変です。

やはり大切なのは決めた日に必ず記帳することです。その日のうちに記帳するのがよいのですが、難しい場合であってもせめて週に一度決まったペースで記帳するのがいいと思います。あまりためこむと証憑資料を紛失したり、イヤになったりしますから。

●資料の整理のコツ

なるみ:証憑資料の整理のコツなどはありますか。

あかり:領収書やレシートはノートに貼るか、コピー用紙に貼って、月ごとにファイリングしてください。日付順でも勘定科目別でもかまいません。また、通帳のコピーやクレジットカードの明細書も漏れなくファイリングし、月末にまとめて入力しましょう。

会計ソフトに入力するときは勘定科目別にまとめると入力がしやすくなります。

●記帳の管理を減らす3つのポイント

なるみ:記帳の負担を減らす方法はありませんか。

あかり:記帳の負担を減らすための3つのポイントがあります。

1つ目は事業専用の普通預金口座をつくることです。事業関連の支払いや入金はすべて預金口座で行い、通帳を見ればお金の流れや取引内容がすぐに把握できるようにしておきます。

2つ目は事業用のクレジットカードをつくることです。経費の支払いはなるべくこのカードを使うことで、現金払いに比べてお金の管理がしやすくなります。

3つ目は領収書やレシートをもれなく整理しておくことです。また、記帳の対象となるのは事業に関するものだけなので、プライベートの領収書やレシートは分けておきます。

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(画像=『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』より)