(本記事は、ビジョン税理士法人編著『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』セルバ出版の中から一部を抜粋:編集しています)

ネットで稼ぐ人はこの数年でグッと増えている

確定申告
(画像=JHK2303/Shutterstock.com)

あかり:最近ネットビジネスに関連するテレビコマーシャルが目につきませんか。

なるみ:女性向けのオークションやフリーマーケットのテレビコマーシャルをよく目にします。

あかり:ネット環境の充実や、スマホの普及もあって、これからもネットビジネスがどんどん拡大していくと言われているんですよ。

なるみ:ネットビジネスは自宅でできるし、ネット環境があれば始めることができるので、初期投資が少ない上に自分のペースでスタートできるなど、たくさんのメリットがあるからでしょうかね。

●クラウドソーシングなど、ネット収入の種類は増えている

なるみ:私は「せどり」で稼いでいますが、これもネット収入になりますか。

あかり:「せどり」はものを売るタイプのネット収入になりますね。例えば、古本屋や骨董市で安く仕入れてネット上で販売して得た収入がそうです。

他にも私がしているアフィリエイトやアドセンス、YOUTUBEからの収入、「クラウドワークス」や「ランサーズ」などのクラウドソーシングサイトを通して得た収入、株式やFXの運用で得た収入などもネット収入となります。

まとめると図のようなものがあります。

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(画像=『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』より)

なるみ:本当にたくさんの種類があるんですね。

あかり:ネットビジネスはこの数年で急速に拡大した新しいビジネスなので、これからも様々な種類のネット収入が出てくると思います。

ネットを通して稼いだお金はネット収入になりますから、確定申告の対象になると考えてください。

売上計上のしかたは

●売上時と入金時に計上するのが原則

あかり:なるみさんは、お客さんに商品を発送する前に代金を入金してもらってるんですか。

なるみ:そうです。代金の振込みが確認できしだい商品を発送するようにしています。

あかり:商品を渡して売上が確定するタイミングと代金が入金されるタイミングがほとんど同じなんですね。

私のしているアフィリエイトの場合は「8月分の報酬は〇円です。報酬の振込みは9月末です」と売上が確定するタイミングと、報酬が振り込まれるタイミングがズレてしまうのです。

なるみ:記帳はどうしたらいいのですか。

あかり:原則は売上が決まったときに売上を計上することになっています。これを発生主義での記帳というのですが、左図のように2回記帳をします。売上が確定した段階で売上を計上し、この相手勘定としてツケとした売上代金は売掛金として記帳します。そして、入金があった時点で入金の記帳をし、売上代金を受け取ったときに売掛金を減少させる記帳をします。

なるみ:売上が決まったときと入金があったときの2回記帳が必要なんですね。

あかり:そうです。ただし、2回の記帳が負担だという人のために、一定の条件をクリアすれば入金があったときに売上の記帳もまとめて行う現金主義での記帳が認められているので、そちらを選択すれば1回の記帳ですませることができます。

●現金主義のメリットは記帳が楽なこと

なるみ:現金主義のメリットは記帳が楽なことですが、デメリットってありますか。

あかり:現金主義による場合、青色申告特別控除は10万円が適用されますので、節税効果が低くなってしまいます。また、売上代金の回収漏れによって売上の記帳が漏れてしまうリスクもあります。

やはり発生主義会計によるほうが正確性が高い記帳になるので、発生主義での記帳がおすすめです。

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(画像=『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』より)

ネット株収入の申告は

●確定申告が面倒なら「特定口座」&「源泉徴収あり」を選択

あかり:ネット株の確定申告では、株を購入するにあたって証券会社や銀行に開設した口座が「特定口座」か「一般口座」なのかを確認します。

なるみ:はじめに特定口座をつくることをすすめられることが多いようですが、どうしてなのですか。

あかり:特定口座は税金の計算や納付を簡単に行えるようにつくられた口座です。売買損益の計算も証券会社でやってもらえます。

しかし一般口座は、売買損益の計算から税金の計算まで自分でしないといけないのです。そこでお客さんの手間を考えて特定口座をすすめているんだと思います。

特定口座はさらに「源泉徴収あり」の口座と「源泉徴収なし」の口座に分かれていて、源泉徴収をありにしておくと、お給料の源泉徴収と同じように証券会社が納付までしてくれますので、図のように確定申告をする必要がありません。

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(画像=『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』より)

●源泉徴収なしの口座のときは

なるみ:ということは、源泉徴収なしを選択すると、自分で確定申告をしないといけないんですね。なんでわざわざ面倒な選択肢が用意されているのですか。

あかり:源泉徴収ありを選択していると源泉徴収されてしまいますので、資金がねてしまい資金効率が低下します。そこで、源泉徴収なしがあると聞いたことがあります。

なるみ:なるほど。儲けがたいしてない場合は、源泉徴収ありを選択していたほうが確定申告する必要がないので楽ちんなんですね。

●複数の口座を持っている場合は損益を相殺できる

あかり:株式の申告で注意することが2つあります。

1つ目は「内部通算」です。

複数の口座を持っている人が一方で利益が出たけれど他方で損失が出た場合にその損益を相殺できるというものです。内部通算は「株式×株式」など同じ金融商品の間でしか認められていません。

「株式×FX」、「株式の損失と給与所得」など他の所得との通算はできません。

なるみ:同じ金融商品どうしの通算しか認められないわけですね。

あかり:2つ目の注意点は「損失の繰越」です。例えば、今年の株式の取引で売買損失が出た場合、損が出ているので申告義務はありません。しかし、損失が出たことを報告するために確定申告をすることで翌年以降3年間の譲渡益と打消し合うことができます。

なるみ:翌年以降の税金を減らすことができるわけですね。

あかり:この内部通算や損失の繰越の適用を受けるためには、必ず確定申告をする必要があるので注意してください。

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(画像=『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』より)

FX収入の申告は

●税務署は支払調書で把握している

なるみ:株と違ってFXは申告しなくてもバレないって聞いたことがあるんですが…。

あかり:現在、証券会社は税務署への支払調書の提出が義務化されていますから、誰がどこの地域でいくら利益を得ているかを税務署は支払調書で把握できるようになっています。納税を逃れることはむずかしくなっています。

なるみ:なるほど。申告しないとバレたときが怖い!

●FXの税率は一律15%、他の所得と分けて計算する

あかり:FXは、株と違って「特定口座」がないので一定の利益がある場合は自分で確定申告しないといけません。FXの税率は店頭FXと取引所FXともに一律15%(所得税、住民税と復興特別所得税を合わせた税率は20:315%です)で、他の所得と分けて計算します。

なるみ:給与所得や事業所得とは分けて計算するんですね。

あかり:ええ、FX所得のみです。

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(画像=『平成31年度:令和元年の税制改正対応版 Q&A:対話式 超わかりやすい ネットで稼ぐ人の確定申告』より)

●確定申告を忘れていても損失の内部通算と損失の繰越控除が使える

あかり:FXも株式と同様に内部通算と損失の繰越が使えるので、損が出ても確定申告をして節税しましょう。

なるみ:確定申告で内部通算を忘れてしまったらどうしたらいいですか。

あかり:確定申告書の提出後にFXなどの内部通算や繰越控除を行うには、「現在納税されている税額が過大なので、その税額を戻してください」と税務署にお願いする必要があります。これを更正の請求といいます。

なるみ:いつまでにしないといけないんですか。

あかり:申告期限から5年以内です。サラリーマンなどで確定申告の義務がない人が申告を忘れていた場合は納めすぎた税金を取り戻すための還付申告をしてください。なお、源泉徴収あり、なし等で「できる、できない」があるので、専門家に相談してください。