会社員などの場合は、基本的に会社の人事部や総務部の担当者が源泉徴収を行うため、自分で税金に関する確定申告を行う必要はない。しかし、年末調整の際に、会社員自ら扶養を会社に申告し、扶養控除の手続きを行わなければならない。ここでは、扶養控除の範囲や金額、手続きなどについて説明する。
扶養控除にまつわるQ&A
扶養控除とは何か?
扶養控除とは、会社員が、自分の子ども、両親や親族などを養っている場合に適用される控除の制度である。会社員の場合には、1年に1回の年末調整の際に、会社に扶養控除の申告書を提出する必要がある。
扶養控除とは、会社員が、自分の子ども、両親や親族などを養っている場合に適用される控除の制度である。会社員の場合には、1年に1回の年末調整の際に、会社に扶養控除の申告書を提出する必要がある。
扶養控除の範囲は?
扶養控除が適用される範囲は、納税者の配偶者を除く扶養親族のうち生計を同じにしている人で、年間の合計所得金額が48万円以下の人(令和元年より38万円以下の人)、青色事業専従者、事業専従者でない人、ほかの人の扶養親族、控除対象配偶者になっていない人である。
扶養控除が適用される範囲は、納税者の配偶者を除く扶養親族のうち生計を同じにしている人で、年間の合計所得金額が48万円以下の人(令和元年より38万円以下の人)、青色事業専従者、事業専従者でない人、ほかの人の扶養親族、控除対象配偶者になっていない人である。
扶養控除の金額は?
扶養控除の金額は、控除対象者となる扶養親族の年齢によって異なり、親族1人について38万円から63万円に設定されている。また、70歳以上の親族については、同居か否かで控除額が異なる。
扶養控除の金額は、控除対象者となる扶養親族の年齢によって異なり、親族1人について38万円から63万円に設定されている。また、70歳以上の親族については、同居か否かで控除額が異なる。
扶養控除とは?
一言で「扶養控除」と言っても、大きく分けて、税法上の扶養控除と社会保険上の扶養控除の2種類がある。それぞれの概略は、以下のとおりである。
●税法上の扶養控除
所得税の控除、住民税の控除、配偶者控除、配偶者特別控除に関するものである。つまり、税金に係る控除制度のことを言う。
税法上の扶養控除を項目別にまとめると、次のようになる。
・1年の単位 1月?12月 ・所得要件 1年間の所得が48万円まで(配偶者のみ95万円まで) ※給与収入の場合…収入額から55万円を引いた金額 年金収入の場合…65歳以上は110万円を引いた金額 65歳未満は60万円を引いた金額 ・収入要件 給与収入のみの場合…103万円
●社会保険上の扶養控除
健康保険や年金に関するものである。社会保険全般に係る控除制度のことを言う。
社会保険上の扶養控除を項目別にまとめると、次のようになる。
・1年の単位
社会保険の扶養にする日から1年間
(9月に扶養する場合は9月から翌年の8月まで)
・所得要件
所得という捉え方はしない
・収入要件 以下の3点の要件すべてを満たしていること
- 1年間の収入の見込み額が130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入180万円未満)であること
- 同居の場合は、収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満、別居の場合は収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満であること
- 給与所得等の収入がある場合は、月額10万8,333円以下。雇用保険等の受給者の場合は、日額3,611円以下であること
扶養控除の要件
扶養控除は、所得税が減額される制度であるため、厳格な要件が定められている。それぞれの項目の要件は、以下のとおりである。
●親族
配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる「里子」)、市町村長から養護を委託された老人
●生計が同じ
納税者と生計を同じにしている人
●所得制限
年間の合計所得金額が、48万円以下
※給与のみの場合は給与収入が103万円以下の人
●事業従事者
青色申告者の事業専従者として、その年を通じて1度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
扶養控除の手続き
会社員が扶養控除を受けるためには、会社が1年に1回行う年末調整の際に、会社員自身が会社に扶養に関する申告書を提出しなければならない。
確定申告の制度でもわかるように、日本では、税金の計算は、納税者それぞれが税務署に対して行う「申告制度」を取っている。
会社員の場合は、個々で税金の申告をする必要はなく、会社の人事部や総務部などの担当部署がまとめて手続きを行ってくれる。ただし、扶養控除については、個々の状況などに左右されるので、会社員自ら申告書を記載し、提出する必要があるのである。
毎年12月頃になると、会社の人事部や総務部などの担当者から、すべての会社員に対して、「扶養控除等(異動)申告書」が配布される。会社員は、自分の世帯の状況に応じて、必要箇所を記入し、会社に提出しなければならない。
記入する項目は、次のとおりである。
・申告者(会社員)の住所・氏名、生年月日※全員記入
・源泉控除対象配偶者※対象の配偶者(妻又は夫)がいる場合に記入
・控除対象扶養親族※対象の扶養親族がいる場合に記入
・障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生※対象者がいる場合に記入
・他の所得者が控除を受ける扶養親族等※対象者がいる場合に記入
・16歳未満の扶養親族※対象者がいる場合に記入
上記の項目を「扶養控除等(異動)申告書」に記入し、会社があらかじめ定めた期限までに提出しなければならない。あとの手続きは、会社の担当者が行ってくれるので、会社員はその後何もする必要はない。
なお、その年1年間の給与の総額が2,000万円以上の会社員、中途退職者で再就職の予定がある人、あるいは2カ所以上の会社などから給与をもらっている人は、会社が行う年末調整の対象にはならず、自分で確定申告の手続きをしなければならない。
控除される金額は?
●扶養控除額
会社員が扶養している親族などがいる場合、控除額は、扶養親族の年齢、同居の有無によって、以下のようになる。
種 別 | 扶養親族の年齢 | 扶養控除額 |
扶養親族 | 満15歳以下 | 0円 |
一般扶養親族 | 16歳以上18歳以下 | 38万円 |
特定扶養親族 | 19歳以上22歳以下 | 63万円 |
一般扶養親族 | 23歳以上69歳以下 | 38万円 |
老人扶養親族 | 同居かつ70歳以上 | 58万円 |
同居以外かつ70歳以上 | 48万円 |
※満15歳以下の扶養親族は、2011年(平成23年)に廃止
扶養親族の年齢は毎年12月31日時点での満年齢
上の表でわかるように、扶養控除は16歳以上の扶養親族がいる場合に適用され、年齢によって38 万円~63万円の金額になる。
なお、70歳以上の老人扶養親族の場合、同居しているか否かで控除の金額が異なるが、病気の治療 のために、該当する親族が長期入院をしているときは、「同居」と取り扱っても問題ない。ただし、老人ホーム等に入所しているときは、「同居以外」に該当する。
●配偶者控除額
配偶者控除とは、収入が全くなかったり、少なかったりする配偶者がいる場合に、所得税から一定の金額を控除し、税金の負担を軽減する制度である。
配偶者の年収が103万円以下の場合に適用され、最大38万円が控除される。納税者の年収が1,195万円まで控除額は段階的に減額され、年収1,195万円を超えれば控除額は0円になる。
配偶者特別控除とは、納税者の配偶者の年収が103万円を超え、配偶者控除が適用されない場合でも、適用される納税者の所得額から一定の金額を控除し、税金の負担を軽減する制度である。
ただし、この控除は、配偶者の年収が201万円までで、最大の控除額は38万円となっている。納税者と配偶者の年収に応じて、段階的に控除金額は減額され、配偶者の年収が201万円を超えた場合と、納税者の年収が1,195万円を超えた場合には、控除される金額は0円になる。
なお上記の扶養控除は、納税者の子ども、親などが対象となるため、配偶者は含まれないことになる。
配偶者控除額は、納税者の所得額によって、以下のようになる。
納税者本人の合計所得金額 | 一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※老人控除対象配偶者は、12月31日時点で年齢が70歳以上の配偶者
●配偶者特別控除額
配偶者特別控除とは、納税者(会社員)の配偶者に年間48万円以上の所得があり、上記の「配偶者 控除」が適用されない場合に、控除が受けられる制度である。
納税者の所得額 | |||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
|
(↓)配偶者の所得額 |   | ||
48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
119万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
例えば、配偶者の所得金額が48万円を超えて95万円以下(給与年収103万円を超えて150万円以下まで)の場合、配偶者控除は適用されない。
ただこのような場合は、配偶者特別控除が適用されて、配偶者の年収(給与)が150万円以下であれば、最大で38万円までの所得控除が受けられる。
配偶者の年収(給与)が155万円(所得金額100万円)の場合、配偶者特別控除額は最大36万円まで減額されることになる。
従って、配偶者特別控除で満額の38万円の控除を受けるためには、配偶者の年収を150万円までに抑える必要がある。