2018年のお正月を念願のマイホームで迎えた人もいるかもしれない。また今年、住宅を買おうという人もいるだろう。キャッシュ一括で支払いを済ませるというケースもなくはないだろうが、一般に住宅ローンを利用する人が多いだろう。

そんな人たちには、年度末までに大きく重要な仕事が残っている。それは「住宅ローン控除」の申請だ。住宅ローン減税とも呼ばれる。一定の条件に合致していれば金額が戻ってくる制度のため、知っていても決して損はない。

住宅ローン控除とは何か

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(画像=PIXTA)

住宅ローン控除は、正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれている。

国税庁Webサイトには、「No.1213:住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」として記載されているほか、財務省や国土交通省のサイトにも解説がある。

【参考】
国税庁
財務省
国土交通省

それぞれのフォーマットが異なりわかりづらいため、改めてまとめてみた。

具体的には、ローンを組んで新規住宅や中古住宅を購入、あるいはバリアフリーなど特定の改修工事を行った際に、税金面で優遇が受けられる制度である。年末のローン残高に応じて一定額が所得税から控除されるため、納めすぎた税金がかえってくることになる。所得税から還付しきれなかった場合でも、住民税から差し引けるようになっている。

住宅ローン控除の制度自体は、なにも目新しいものではない。その歴史は1972年と古く、住宅税制の制度変更によって毎年のように目まぐるしく変わっている。しかし、住宅ローンを毎年のように新しくスタートするケースはまれのため、今回初めて耳にした人も少なくないであろう。

この住宅ローン控除を受けるための条件は、後に詳しく説明するとして、実際どの程度の金額が還ってくるのか。それは、年末時点の住宅ローン残高の1%分で算出される。つまり年末時点でローンが3000万円残っていれば、30万円が控除されるということになるのだ。

そして算出対象となるローン残高には、上限が設けられている。一般住宅の場合は4000万円(認定長期優良住宅の場合は、5000万円)が上限と定められているため、各年で最大40万円、さらに控除期間は10年間と決まっているため、最大400万円という高額な金額が控除される。2014年の消費税率引き上げ(8%運用)が契機となって最大控除額が大幅に拡充されただけに、見逃すことはできない。

どうやって受けるのか

住宅ローン控除を受けるためには、確定申告による手続きをしなければならない。年間所得2000万円以上の高額所得者や個人事業者などは、毎年確定申告して納税額を算出しているはずである。

しかし、多くのサラリーマンにおいては、確定申告の経験がないことがほとんどである。というのも、普通のサラリーマンの場合、源泉所得税が差し引かれる形で給与が支給されており、年末調整するだけで納税が完了するため、基本的には確定申告を行う必要がないのだ。

そのため、今回の住宅ローン控除を目的として、初めて確定申告に挑むという方も多いだろう。したがって、確定申告についてごく基本的な部分についてもふれておく。まず、2017年度の確定申告期間は、2018年2月16日(金)~3月15日(木)と定められている(還付申告は1月から行える)。この期間内に、自身の住まいを管轄する税務署で手続きを行わなければならない。

提出の方法としては、税務署に書類を持参、もしくは郵送するほかに、e-Taxを利用してインターネット上で完結させるという3つが用意されている。しかし、e-Taxについては、事前の手続きやICカードリーダーの購入も必要である。パソコンの豊富な知識があり、今後も継続して確定申告を行う場合は有効な手段だが、初めての場合は少しハードルが高いといわざるを得ない。

住宅ローン控除は、住宅ローンを申し込んだ個人が対象となる制度である。一人でローンを申し込んだ場合は、その名義人本人が申告すれば問題ないが、もしも夫婦二人の収入合算でローンを申し込んだ場合は、その二人とも確定申告する必要があるのだ。つまり、住宅を取得した家庭単位ではないということを認識しておかなければならない。

住宅ローン控除を受けるための条件

では、住宅ローン控除を受けるための条件について説明する。この制度の適用範囲は広く、一般住宅、認定住宅(長期優良住宅、低炭素住宅)、バリアフリー改修促進税制、省エネ改修促進税制、三世代同居対応改修税制、耐久性向上改修税制など多岐にわたる。しかし、バリアフリーや省エネの場合、別のリフォーム減税(特定増改築等住宅借入金等特別控除)のほうが有利になる可能性もあるため、ここでは一般住宅に絞って説明する。

新築住宅における主な要件

  • 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
  • 新築もしくは取得の日から6ヵ月以内に居住し、年末まで済み続けていること
  • 床面積が50平方メートル以上で、床面積の1/2以上が居住用であること
  • 控除を受ける年の年収が3000万円以下であること
  • 入居した年、その前後2年間に長期譲渡所得の課税特例を受けていないこと

中古住宅においては、新築住宅要件に加えて、以下いずれかを満たす必要がある。

  • 木造建築物などの非耐火建築物で築20年以内、マンションなどの耐火建築物で築25年以内
  • 一定の耐震基準に適合していることが証明されるもの
  • 既存住宅売買瑕疵保険への加入

これらが住宅ローン控除の前提となる条件だが、注意点を補足しておこう。10年以上の住宅ローンについては、金融機関だけでなく勤務先からの融資も対象である。しかし、仮に繰り上げ返済などで、10年を切った場合はその時点で住宅ローン控除適用は終了となる。

床面積が50平方メートル以上という数字は、登記簿謄本に記載されている数字が前提である。また住宅の一部を店舗利用、貸家となっていた場合でも、床面積1/2以上が居住用であれば問題ない。しかし、本人の居住が前提のため、投資用の物件や親族居住用では適用できない。後に提出書類のところでもふれるが、住民票を写していることが必要である。

不動産の売却や買い替えなどとなる場合はさらに注意が必要となる。マイホームを売却し、「居住用財産の3000万円控除」や「長期譲渡所得の特例」などを受けている場合は、即住宅ローン控除を受けることできない。

確定申告で必要となる書類 

各種条件をクリアーしている場合は、住宅ローン控除を受けるために確定申告が必要になると上述した。しかし、初めての場合は複雑で慣れない作業に戸惑うことが多い。そこで、いわゆるサラリーマンの方が住宅ローン控除のための確定申告を行うケースに絞り、必要な書類を、入手先も含めてまとめておく。

必要書類名 / 入手先
確定申告書(A様式) / 税務署、国税庁Webサイト
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 / 税務署、国税庁Webサイト
住民票の写し / 市町村役場
建物・土地の登記事項証明書 / 法務局
建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し / 契約した不動産会社
源泉徴収票 / 勤務先
ローンの年末残高証明書 / 住宅ローンを借り入れた金融機関

記載する書類として、「確定申告書」、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」の2種類が必要である。ともに税務署で直接入手もしくは国税庁Webサイトからダウンロードすることが可能である。確定申告書にはA様式とB様式の2種類があるが、サラリーマン・OLなどの給与所得者はA様式を使えば問題ない。

各種ガイダンスなどを参考にして、自宅で作成することも可能だが、初めての場合は、おそらくすんなりとはいかない。こうした不安がある場合は、多少面倒でも税務署に足を運んで相談しながら作成することを推奨する。特設会場などが準備されている場合もあるが、申告期限ぎりぎりに行くと混雑は避けられないため、早めの着手もあわせて推奨しておきたい。

次に申請に必要な書類について説明する。基本的に5つの書類が必要となるが、それぞれ入手先が異なる。住民票の入手は身近なものでイメージがわきやすいだろう。また2016年分の確定申告からはマイナンバーの記載が必要となり、マイナンバーカードを持っていれば住民票の写しは不要となっている。

建物・土地の登記事項証明書については、法務局で取得もしくは郵送申請も可能である。取得日から3ヵ月間有効のため、余裕を持って準備しておくべきだ。建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)は、購入時に不動産会社から受け取ったもので、もちろんコピーで問題ないが、購入価格がわかるものでなければならない。源泉徴収表は勤務先から発行するもので、書面で発行した原本を利用する。最期にローンの年末残高証明書については、住宅ローンを組んでいる金融機関から毎年年末に発行されている。こうした書類がどれ一つ欠けても申請はできないため、準備できるものから計画的に着手すべきである。

2年目以降の住宅ローン控除は年末調整で

住宅ローン控除は、確定申告をしなかったとしても何のペナルティもない。しかし、仮に忘れてしまって申告期間(3月15日)を過ぎてしまった場合でも、5年以内であれば遡って還付を受けることができる。

そして、住宅ローン控除は1年目については確定申告が必須だが、2年目以降は年末調整することができる。もう少し詳しく言うと、税務署が発行する「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」および金融機関が発行する「ローンの年末残高証明書」を、生命保険料控除申告書などとともに会社に提出するだけで処理が終わる。つまり、確定申告という壁は、1年目だけを乗り越えればよいのだ。

入居月によって控除額が変わる 

住宅ローン控除について説明してきたが、ルール上の注意点を最後に紹介しておく。入居日が年末年始になりそうな場合、12月になるのか、1月になるのかで控除額に差が発生してしまうケースがあるのだ。

仮にローンの全金額が4000万円だった場合で、比較してみる。12月に入居した場合は、住宅ローン残高は全く減ることなく、いわば全金額が控除の対象となる。つまり1%にあたる40万円が控除される。

しかし、1月に入居した場合は、その年の年末のローン残高が対象となるため、1年分が返済されているであろうことからローン金額は4000万円から減っており、減税額も自ずと減る形となる。12月入居の場合は、すぐに1回目の確定申告がやってくるため慌しいが、トータルで受け取る金額が変化するため、入居月についてはよく考慮して決めるべきである。(ZUU online編集部)