納税者が一般の寡婦である場合、寡婦控除という所得控除を受けることができる。 この記事では、寡婦控除について分かりやすく解説する。

執筆者:森 泰隆

寡婦控除とは

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(画像=PIXTA)

納税者が一般の寡婦である場合に、寡婦控除という所得控除を受けることができる。

Q


寡婦(夫)とは?

寡婦とは夫を失った妻のことを指す。未亡人という言い方もある。 寡婦の寡は「やもめ」と読み、なぜ「やもめ」になったのかは止むや病むから来ているとか、屋守からきているなど様々な説がある。

寡婦とは夫を失った妻のことを指す。未亡人という言い方もある。 寡婦の寡は「やもめ」と読み、なぜ「やもめ」になったのかは止むや病むから来ているとか、屋守からきているなど様々な説がある。


Q


寡婦控除の控除対象になる人は?

寡婦控除の中で一般の寡婦(令和元年分以前)は、夫と死別していたり、離婚後に結婚しておらず、夫の生死が明らかでないなどの人で、扶養家族や生計を一にする子がいる人である。 総所得金額が500万円以下である夫と死別していて結婚しておらず、夫の生死が明らかでない人は扶養親族が無くても、寡婦控除の対象となる。

寡婦控除の中で一般の寡婦(令和元年分以前)は、夫と死別していたり、離婚後に結婚しておらず、夫の生死が明らかでないなどの人で、扶養家族や生計を一にする子がいる人である。 総所得金額が500万円以下である夫と死別していて結婚しておらず、夫の生死が明らかでない人は扶養親族が無くても、寡婦控除の対象となる。

特別の寡婦

一般の寡婦と特別の寡婦では控除額も違う。

●一般の寡婦とは?

夫と離婚した後、再婚しておらず、扶養家族がいて合計所得が500万円以下の人か、夫と死別・または夫が生死不明になっており、扶養親族がおらず合計所得金額500万円以下の人を一般の寡婦として扱う。

●特別の寡婦とは?

一般の寡婦に該当する条件にさらに一定の条件を満たせば、特別の寡婦となる。

夫と死別や離婚後に結婚していない人や夫の生死があきらかでない人で、扶養親族も居て、さらに合計得金額が500万円以下ならば、特別の寡婦として寡婦控除を受けることができる。

令和2年からひとり親控除の創設により廃止される。

●控除額の違いは?

一般の寡婦であれば、27万円の控除が受けられる。特別の寡婦ならば、さらに上乗せして35万円の控除が受けられる。

寡婦控除と寡夫控除

寡夫控除は、寡婦控除を夫に変えた妻のいない夫のための制度である。妻と死別、離婚していて後に結婚していないことというは同じである。

しかし、寡夫控除を受けるにはそれに加えて、生計を一にする子がいること、合計所得金額が500万円以下であることをすべて満たさなくてはならない。

控除額は27万円で、需給のハードルが高い割に控除額が少ないなど不公平感が指摘されていた。

寡婦控除の特別の寡婦と同様に、令和2年からひとり親控除の創設により廃止される。

寡婦控除改正

令和二年度の改正により、寡婦控除が見直されることになった。

寡婦控除が見直され、寡夫控除と寡婦控除の特別の寡婦が廃止されて、ひとり親控除が創設されることになった。

ひとり親控除の創設

ひとり親控除の創設によって、どう変わるのだろうか?従来の寡婦控除との違いを説明していきたい。

●ひとり親の定義とは?

ひとり親は現在結婚してない人、夫(妻)の生死が明らかでない人で、生計を一にする子がいること、合計所得が500万円以下であること、事実婚の状態でないことが挙げられる。

従来の寡婦控除では事実婚でも適用されていたが、ひとり親控除では事実婚は適用外とされている。

●ひとり親控除を受けるには?

原則として、従来の寡婦控除の手続きと同じになる。

源泉徴収を受けるならば、ひとり親に該当することを記載した給与所得等の扶養控除等(異動)申告書を提出する。

ただ、改正後は事実の記載の必要が無くなった。

ひとり親控除は、寡婦控除の特別の寡婦と同じ一律35万円となっている。

ひとり親控除を受けられる子どもの条件

子どもなら無制限に控除を受けられるわけではない。子どもの総所得金額が48万円以下で生計を一にしていることが条件である。

ひとり親控除は生計を一にしている子であれば、年齢制限はない。

もし個人事業主として働いていて、子どもを青色事業専従者として給料払っていたとしても、ひとり親控除の条件さえ満たせば、控除を受けられる。

寡婦控除と配偶者控除

配偶者控除を使っている年に配偶者が亡くなってしまった場合はどうなるのだろうか。費用できるのか、それとも配偶者控除をそのまま寡婦控除に切り替えられてしまうのだろうか。

●途中で亡くなってしまった場合の配偶者控除の扱い

もし、年の途中で配偶者が亡くなってしまった場合に配偶者控除はどうなるのか?

その場合、亡くなった時点で配偶者の要件を満たしているかが判断基準となる。

その年の1月1日から亡くなった日までの合計所得が、配偶者控除の48万円以下かどうかで控除を受けられるかどうかが決まる。月割計算は行わない。

ただし、その年の12月31日までに再婚した場合、亡くなった配偶者か再婚相手のどちらかの配偶者控除しか受けられず、二重で受け取ることはできない。

●配偶者控除と寡婦控除との兼ね合い

寡婦控除の条件を満たしていると仮定し、すでに配偶者控除の対象にもなっている場合は、どうなるのか?寡婦控除の判断は12月31日の時点となっている。

その時点で寡婦控除の条件を満たしており、亡くなった時点で配偶者控除の条件を満たしているならば、両方の控除を受けることができる。

寡婦控除改正で変わらない人

ひとり親控除の創設によって、特別の寡婦を受けていた人の控除額は35万円のまま変わらずひとり親控除に移行される。寡夫控除を受けていた人は控除額が27万円から35万円にアップし、ひとり親控除に移行する。

これまで27万円の一般の寡婦の寡婦控除を受けていた人は、控除額も名称も今まで通り寡婦控除を受けることになる。

住民税の寡婦控除

住民税の寡婦控除なら控除額はどうなるのだろうか。そして、ひとり親控除の創設でどう変わるのだろうか。

●寡婦控除改正前

寡婦の場合、死別であっても離婚であっても生計を一にする子がいるならば、合計所得が500万円以下なら30万円の個人住民税の控除が受けられる。

死別であって合計所得500万円以下で子供以外の扶養親族がいる場合、合計所得500万円超で子供か子供以外の扶養親族がいる場合、離婚していて合計所得500万円以下で子供以外の扶養親族がいる場合、離婚していて500万円超の合計所得と子供か子供以外の扶養親族がいる場合は26万円の控除となる。 寡夫の場合、死別であっても離婚であっても子供が居て、合計所得が500万円以下なら26万円の控除となっていた。

●ひとり親控除

ひとり親控除の創設で合計所得500万円超なら男女ともに控除は受けられない。

女性は合計所得が500万円以下で子供が居れば、死別であっても、離婚であっても、未婚の母であっても30万円の住民税の控除が受けられる。それ以外は一般の寡婦控除のまま26万円の住民税の控除となる。

男性は26万の控除が30万円に上がったのと、未婚の父も同様に30万円の控除が受けられることとなった。

●支払う税金を試算

所得税率が10%の年収(課税所得195万円~330万円未満)なら、ひとり親控除の創設により、寡夫控除の対象の人は所得税では35万円―27万円=8万円×10%で年間8,000円安くなる。住民税なら0,000円の差額なので、10%と改定すると4,000円安くなる。

未婚の父母は、ひとり親控除の創設により、最大で所得税35万円、住民税30万円で、共に10%の税率として合計65,000円税金が安くなることになる。

寡婦控除改正・ひとり親控除創設による事実婚の扱い

寡婦控除改正とひとり親控除の創設により、未婚の親は控除を受けられる一方で、事実婚は寡婦控除を受けられなくなった。

●事実婚の定義

事実婚は、通常の法律婚と異なり、両者が結婚の意思を有し行動生活をしながら、婚姻届けなどの手続きを踏まない形態のことを言う。

また、厚生労働省の労働白書によると、日本では約98%が婚姻関係で生まれてきた嫡出子であるが、欧米諸国に比べると婚外子の割合が著しく低くなっている。

●住民票への記載

同棲と事実婚は似て非なるものである。

同棲するだけで、住民票の届け出をする人は少ないだろう。事実婚は、住民票に反映させることで事実婚という一つの証明になる。

転出届の世帯主との続き柄に妻(未届)夫(未届)と記載されて、それが住民票の証明となる。

●受けられるメリットデメリット

事実婚は法律婚と同様に、社会保険においては扶養家族として扱われる。

年収などの法律婚の条件を同様に満たしていれば、厚生年金ならばパートナーの年収が130万円未満ならば、第3号被保険者として加入出来て保険料を免除できる。

健康保険も扶養家族に入ることができる。

しかし、事実婚では通常受けられる配偶者控除や配偶者特別控除などの控除は認められていない。相続権もなく、生命保険の受取人になることも原則できない。

寡婦控除で事実婚が認められなくなったことはデメリットが一つ増えたことにもなる。

寡婦控除の対象は子供だけではない

ひとり親控除の創設により、子ども以外の扶養親族が寡婦控除を受けられなくなるわけではない。年老いた親を扶養控除にすることができる。

●老人扶養控除

その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の納税者か配偶者の父母・祖父母で、合計所得が48万円以下で生計を一にしているなら老人扶養控除として、控除の対象となる。

同居老親と同居以外の老親で控除額が違う。

同居している場合は、58万円の控除を受けることができる。同居していない場合は48万円の控除となる。

祖父母が病気やケガの治療のために長期で入院している場合であっても、同居と認められる。

ただし、老人ホームに入居している場合などは同居とは認められない。

●寡婦控除との併用

一般の寡婦としての寡婦控除と扶養控除(老人扶養控除含む)を併用することができる。

気をつけたい適用漏れ

年末調整で寡婦控除・ひとり親控除は控除されるが、申請しなければ適用されない。

自ら、勤務先に扶養控除等(異動)申告書に該当する旨を記載して、提出しなければならない。

もし、忘れていて年末調整で受けられなかったならば、確定申告で申請することもできる。

まとめ

令和2年度の税制改正から寡婦控除が改正され、ひとり親控除の創設に伴い、これまで控除の対象でなかった未婚の父母が控除の対象となり、一方で事実婚は対象外となった。

対象になったことも対象から外れたことを教えてくれる人も少ないだろうし、勤務先で年末調整の際に、こちらから言わなくても勝手にやってくれることもないだろう。

まず、対象かもしれないと思ったら、近くの税理士や税務署に問い合わせてみるといいだろう。