医療費控除の申請で判断に迷うのが、対象となる交通費の範囲だ。原則と例外とを事前に把握しておきたい。確定申告に領収書の提出は必要ないが、税務署に説明できるよう医療機関ごとの記録を残しておこう。集計には国税庁の「医療費集計フォーム」が便利だ。

医療費控除における交通費の適応範囲とその判断材料を解説

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(画像=PIXTA)

多額の医療費を支払ったとき、確定申告を行えば所得税が還付される。対象となるのは医療費全額ではなく、保険金などで補てんされる金額と10万円(または所得金額の5%)を引いた額だ。

納税者はまず、医療費控除を受けられるかどうか計算する必要がある。このとき判断に迷うのが「医療費に何を含めていいのか」という点だ。医療費には、「診療や治療の対価」や「医薬品の購入の対価」などに加え、診療を受けるために直接必要となった「交通費」も含まれる。

ただし、この交通費が認められる範囲に制限がある。自分が「医療を受けるための交通費」だと考えていても、税務署は認めない場合もあるので注意が必要だ。

●交通費の医療費控除 通院に伴う自家用車のガソリン代・駐車場料金は控除対象外

  交通手段として自家用車を使う人もいるだろう。自家用車で通院するための「ガソリン代」「駐車場代」は医療費控除の対象となる交通費だろうか。答えは「対象とならない」だ。

国税庁のサイトに、納税者から質問された事例に対する回答が、他の納税者の参考として掲載されている。その中に「自家用車で通院する場合のガソリン代等」についての質疑応答事例がある。

国税庁が「医療費控除の対象とならない」と答える理由は、医療費控除の対象となる通院費は、医師などの診療を受けるため「直接必要なもので、かつ、通常必要なもの」でなくてはならず、また通院費は「人的役務」への支払いを指すからだとしている。

「人的役務」とは人間が行うサービスのことだ。電車やバスの運転手に手間賃を払うような支出であれば医療費控除の対象として認められる。自家用車を自分で運転する場合は、他人のサービスを受けて支出をするわけではないから、医療費控除の対象にはならないのだ。

この回答は「所得税基本通達」に基づいている。課税関係は全て法律に根拠がある。おおもとになるのは「所得税法」であり、それを補う「所得税法施行令」がある。厳密には法律ではないが、税務署の実務で拠り所にされるものに「所得税基本通達」がある。

医療費控除について、所得税法に、医療費とは(医療に)「関連する人的役務の提供の対価」(そのうち通常必要であると認められるもの)とある。所得税法施行令でも病院などへ「収容されるための人的役務」とされており「病状に応じて」「一般的に支出される水準を著しく超えない部分」と決められている。所得税基本通達では「直接必要な費用」「通常必要なもの」とされている。

これらの法律の内容をまとめると、医療費控除の対象となる交通費は「他人が運転してくれるもので、医療に直接関係があり、通常用いられるもの」を利用した場合の「常識的な金額まで」だとイメージできるだろう。「自家用車で通院する場合のガソリン代等」への国税庁の回答で「人的役務」の代表例とされているのが「電車賃」「バス賃」などだ。

これらの代表的な交通機関に加え、法の規定に沿っていれば、事情によってはそれ以外も認められることもある。例えば、離島から海を渡って島外に診療を受ける場合が認められたり、雪山遭難などで緊急搬送されるヘリコプターの費用などが認められたりすることもある。

国税庁サイトの質疑応答例にも「一般的な回答にすぎず、納税者が行う具体的な場合には当てはまらないこともある」と注意書きがある。特殊な場合は、税務署に相談するとよいだろう。

●こんなケースは? 公共交通機関はOKでタクシーは特別な事情以外では基本的にNG

国税庁から配布されている「医療費控除を受けられる方へ」という案内パンフレットでは、「控除の対象に含まれないものの例」として「タクシー代(電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除きます)」が挙げられている。

日常生活での通院費に公共交通機関は認められるが、身近ではあっても原則タクシーは認められない。法律が認める「通常の」交通手段ではないからだ。

ただし、例外的に、公共交通機関を使えない事情があればタクシーが認められる。国税庁の質疑応答事例にも「病院に収容されるためのタクシー代」が認められたものがある。この事例は「突然の陣痛のため」で、回答では「タクシー代は一般に認められないが、病状からみて急を要する場合や、電車、バス等の利用ができない場合には認められる」とある。これは入院時のケースだが、パンフレットでは通院費にもついても同様の取り扱いをしている。

電車やバスが使えない場面としては、次のような場合があるだろう。

・急を要する場合
・夜間で電車もバスも止まっている場合
・病状(歩くことができないなど)から見て電車やバスの利用が困難な場合
・電車やバスなどの路線が少ない地域で利用が困難な場合

タクシーを利用した場合は必ず領収書をもらわなければならない。2017年分確定申告から医療費控除の申請に領収書を提出する必要はなくなったが、5年間は自宅で保管することになっている。税務署から尋ねられた際には、交通費の領収書と受診した医療機関の領収書をもとに、どの時間帯にどこのどんな診療科を受診したものか明確に説明できるようにしておく必要がある。

●通院時の付き添いは控除対象?被治療者の年齢や病状によって対応は変化

  控除対象となる交通費は、診療等に「直接必要なもので、かつ、通常必要なもの」に限られており、原則は患者本人の通院に限られている。

ただ、国税庁サイトの質疑応答事例のように「患者さんを世話するための家族の交通費」が認められることもある。子どもの通院に母親が付き添う場合のように「年齢や病状からみて、患者を一人で通院させることが危険な場合」だ。この場合、付添人の通常必要な交通費が医療費控除の対象となる。

ただ、子供が入院した後は、母親が子どもの世話のために通院しても控除対象とは認められない。患者本人が通院しているわけではないからだ。

医療費控除における交通費の控除申請の仕方を解説

2017年の確定申告から医療費控除の申請方法が大きく変わった。領収書の提出がなくなった代わりに、「医療費控除」の明細書を提出しなくてはならなくなった。もちろん交通費についても明細に記載しなければならない。

●交通費申請の書類は?Excelで管理シートを作成しておくと便利

  領収書の提出はなくなったが、確定申告後5年間は税務署が確認のために領収書の提出を求めることがある。そのため、自宅で保管しなければならない。

一方、医療費控除の対象として認められる交通費は公共交通機関であることが基本だ。これらの公共交通機関でいちいち領収書をもらうことはあまりないだろう。

それは国税庁も理解している。一般の疾病ではないが、「医療費控除の対象となる出産費用の具体例」を説明するページでは「通院費用については領収書のないものが多いのですが、家計簿などに記録するなどして実際にかかった費用について明確に説明できるようにしておいてください」とある。

法律上、医療費控除の対象として認められる交通費は「診療等を受けるために直接必要なもので、かつ通常必要なもの」である。公共交通機関では領収書でなくても認められるが、その交通費がどの診療をうけるためのものだったのかは必ず説明できるようにしておかなくてはならない。普段から、医療機関ごとに、治療を受けた日と交通費のメモする習慣を身に着けておきたい。

「医療費の明細」は、「医療を受けた方の氏名」「病院・薬局などの支払先の名称」「医療費の区分」「支払った医療費の額」「生命保険や社会保険で補てんされる額」を記入する。

1年を通じて「医療を受けた人」「支払先」ごとにまとめて記入することもできる。例えば、AさんがB病院に年に10回通院した場合、AさんについてB病院への10回分の診療費と10回分の交通費をまとめて記入すればよい。エクセルで管理シートを作成し、その都度必要事項を入力しておき、確定申告時にソートをかけて合計額も算出しておくと作業が楽で便利だろう。

出来上がった明細書は、税務署に提出したものと同じものを保管しておこう。税務署から問い合わせを受けたときに、個々の領収書とともに、明細の計算についても説明ができる。

●交通費の計上方法は? 総合計を国税庁発行の医療費集計フォームに記載して提出

確定申告書は国税庁のサイトで簡単に作成可能だ。サイト内に「確定申告書等作成コーナー」というページがある。必要項目を入力していけば申告書ができ上がる。申告書だけでなく、それに添付する各種内訳書等も作成でき、さらにその内訳を申告書の必要箇所に自動的に反映してくれるという便利な機能もある。

医療費控除についても便利な機能があるので活用したい。国税庁サイト「確定申告書作成コーナー」などから「医療費集計フォーム」をダウンロードできる。

この「医療集計フォーム」はエクセルで出来ており、必要な個所を入力する。「医療費を受けた方の氏名」「病院薬局などの名称」「医療費の区分」「支払った医療費の金額」などだ。

交通費の「医療費の区分」は「そのほかの医療費」となる。セルをクリックすると「該当する」というタブが出てくるので、それを選択する。1件1件入力してもよいが、あらかじめ手元で受診者別に医療機関、医療費の区分ごとの集計がなされているのなら、その金額を入力しても良い。医療費控除の対象となる医療費の合計額は、特に計算しなくても「医療費集計フォーム」で自動的に行われる。

確定申告書を国税庁サイトの「確定申告書作成コーナー」で作成するときに、「医療費集計フォーム」の内容を反映させることもできる。確定申告書をサイト内で作っていき、医療費控除を入力する段階に進むと、「入力方法の選択(医療費控除)」を聞かれるので、そこで「医療費集計フォームを読み込む」を選択する。そして「次へ進む」をクリックしていくと、自動的に確定申告書作成に反映される。

「入力方法の選択(医療費控除)」で、国税庁の「医療費集計フォーム」を使わない選択もできるが、別途、必要項目の記載された明細書を作成して確定申告書に添付する必要がある。転記する手間や計算ミスを考えると、国税庁サイト内の「確定申告書コーナー」で国税庁の「医療費集計フォーム」を読み込んで作成する方が便利で確実だ。

医療費控除は医療費がかさんだ納税者への配慮だ。積極的に活用したい。ただ、適用範囲は細かく決まっており、事前の情報収集が大切だ。また、領収書の提出はないが、明細を自分で作成して提出しなくてはならない。国税庁サイトの「医療費集計フォーム」を使うと簡単で正確に確定申告ができる。便利な仕組みを賢く使って税の負担を軽減しよう。(ZUU online編集部)