住宅ローン控除とは、住宅を借入金で取得した人などが、原則10年間(一定の場合は13年間)、年末のローン残高の1%を所得税から控除できるというものだ。

住宅ローン控除を適用するための条件は非常に多く、内容も複雑だが、カテゴリーに分けて見ていくと自身が満たさなければならない条件、把握していなかった条件がわかりやすい。

今回は、住宅ローン控除を受けるための条件を、対象となる住宅の範囲、入居時期、借入金、控除を受ける個人、受けるための手続きの5つに分けて解説する。

中村太郎
中村太郎
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

住宅ローン控除に関するQ&A

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(画像=PIXTA)

住宅ローン控除を適用するための条件は非常に多い。個別の条件に入る前に、まずはQ&Aをもとに住宅ローン控除のポイントをつかんでおこう。

Q


住宅ローン控除の対象となるのは?

住宅ローン控除を受けられるのは「自分の住む家を買う」と「自分の家をリフォームする」の2パターンしかない。専門的に言うと、住宅の「取得」と「増改築等」となる。

「取得」は、新築でも中古でも、戸建てでもマンションでも構わない。ただし自分が住むための家である必要がある。「増改築等」は、100万円を超えるリフォーム、修繕や模様替えのことで、自分自身が所有する家である必要がある。「住宅の取得等」とは、取得と増改築等の総称になる。

なお住宅ローン控除という名称のとおり、対象は「住宅」に限られる。居住用でない事務所や賃貸物件は対象外だ。ただし、半分以上が住むためのスペースであれば対象となる。増改築であれば、リフォーム代の半分以上が居住部分に充てられていればよい。

住宅ローン控除を受けられるのは「自分の住む家を買う」と「自分の家をリフォームする」の2パターンしかない。専門的に言うと、住宅の「取得」と「増改築等」となる。

「取得」は、新築でも中古でも、戸建てでもマンションでも構わない。ただし自分が住むための家である必要がある。「増改築等」は、100万円を超えるリフォーム、修繕や模様替えのことで、自分自身が所有する家である必要がある。「住宅の取得等」とは、取得と増改築等の総称になる。

なお住宅ローン控除という名称のとおり、対象は「住宅」に限られる。居住用でない事務所や賃貸物件は対象外だ。ただし、半分以上が住むためのスペースであれば対象となる。増改築であれば、リフォーム代の半分以上が居住部分に充てられていればよい。


Q


控除の上限額が高くなる「認定住宅」って何?

住宅ローン控除の対象となる新築住宅の中に、「認定住宅」というものがある。「認定長期優良住宅」と「認定低炭素住宅」の総称で、簡単に言うと「長く住めるいい家」と「地球に優しい家」のことだ。

認定住宅にあたるかどうかは建設業者が建てる前から計画しているので、買った側が登録などの手続きをしなくてもよい。業者からもらった認定計画通知書や証明書を確定申告時に提出すれば、通常より住宅ローン控除の上限額が高くなるのでお得だ。

ただし優遇されているだけあって、認定住宅は「新築等」でなければならないという条件がある。新築か、新築後に誰も住んでいない住宅を取得するケースでなければ、認定住宅としての特典は受けられない。

住宅ローン控除の対象となる新築住宅の中に、「認定住宅」というものがある。「認定長期優良住宅」と「認定低炭素住宅」の総称で、簡単に言うと「長く住めるいい家」と「地球に優しい家」のことだ。

認定住宅にあたるかどうかは建設業者が建てる前から計画しているので、買った側が登録などの手続きをしなくてもよい。業者からもらった認定計画通知書や証明書を確定申告時に提出すれば、通常より住宅ローン控除の上限額が高くなるのでお得だ。

ただし優遇されているだけあって、認定住宅は「新築等」でなければならないという条件がある。新築か、新築後に誰も住んでいない住宅を取得するケースでなければ、認定住宅としての特典は受けられない。


Q


住宅ローン控除には種類がある?

「住宅ローン控除」の正式名称は「住宅借入金等特別控除」だが、頭に「特定増改築等」がついた「特定増改築等住宅借入金等特別控除」という控除もある。後者はなじみがない人が多いと思うが、実は住宅ローン控除は2種類あるのだ。

「特定増改築等」とは、増改築等のうち高齢者のためのバリアフリー改修工事、省エネ改修工事、多世代同居改修工事等を行った場合で、一定の要件を満たすものである。該当すれば、「特定増改築等住宅借入金等特別控除」が受けられるが、増改築等による「住宅借入金等特別控除」の条件も満たすので、どちらかを選択できる。

「住宅ローン控除」の正式名称は「住宅借入金等特別控除」だが、頭に「特定増改築等」がついた「特定増改築等住宅借入金等特別控除」という控除もある。後者はなじみがない人が多いと思うが、実は住宅ローン控除は2種類あるのだ。

「特定増改築等」とは、増改築等のうち高齢者のためのバリアフリー改修工事、省エネ改修工事、多世代同居改修工事等を行った場合で、一定の要件を満たすものである。該当すれば、「特定増改築等住宅借入金等特別控除」が受けられるが、増改築等による「住宅借入金等特別控除」の条件も満たすので、どちらかを選択できる。

住宅ローン控除の全体像

住宅ローン控除の全体像を確認しよう。ここからは住宅ローン控除を受けるための5つの条件を解説する。

   住宅・増改築等の内容  控除計算式  控除の種類・控除期間
 自分の住む家を買う
 (取得)
 認定住宅  ローン残高×1%
 (控除上限額が最高)
 住宅借入金等特別控除
 (10年・13年)
 認定住宅以外の新築住宅  ローン残高×1%
 中古住宅
 自分の家をリフォームする
 (増改築等)
 通常のリフォーム
 特定のリフォーム
 (特定増改築等)
 A×2%+(B-A)×1%
 ※
 特定増改築等住宅借入金等特別控除(5年)
 上記と選択可

※A:特定増改築等のローン残高、B:増改築等のローン残高(A、Bそれぞれに上限あり)
控除期間は、2019年(令和元年)10月~2020年(令和2年)末の間に入居した場合のものである。

住宅ローン控除の条件1:対象となる住宅の範囲

まずは、住宅ローン控除の対象となる住宅の条件から解説する。

新築住宅、認定住宅、中古住宅、増改築の4区分で見ていこう。

●新築住宅の条件

次のすべてにあてはまるもの

・自己の居住の用に供している
・床面積の2分の1以上が居住用
・床面積が50㎡以上
・新築または建築後使用されていない

●認定住宅の条件

・新築の条件
  +
次のいずれかにあてはまるもの
・認定長期優良住宅
・認定低炭素住宅

●中古住宅の条件

・新築の条件
  +
次のいずれかにあてはまるもの
・築20年以内(耐火建築物の場合は25年)
・過去2年以内に一定の耐震基準を満たしていることの証明や評価が行われている
・過去2年以内に既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されている
・家屋の取得日までに耐震改修を行うことについて申請し、かつ居住日までに耐震基準に適合している

●増改築の条件

次のすべてにあてはまるもの

・自己が所有し、かつ居住の用に供している
・増改築後の床面積が50㎡以上
・増改築後の床面積の2分の1以上の部分が居住用
・増改築等の工事費が100万円を超える(2分の1以上が居住部分)

増改築等とは次のいずれかにあてはまるもの

・増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕または大規模な模様替えの工事
・マンションなどの区分所有建物のうち、その人が区分所有する部分の床、階段または壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
・居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床または壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
・構造強度・耐震基準に適合させるための一定の改修工事
・一定のバリアフリー改修工事
・一定の省エネ改修工事

●対象とならない例

・賃貸用物件の取得や増改築
・親族や事実婚、生計維持関係にある人等から取得した住宅
・自分で住まない住宅の取得
・自分で所有していない家の増改築等

<よくある質問>

Q


2軒目の住宅にも使えるのか

回数に制限がないので、家を買い替えて移り住んだ場合でも、同じ人が控除を受けることは可能だ。ただし住宅ローン控除の制度自体に時限措置があるので、期限が法改正で更新されず、将来使えなくなる可能性はある。現行法では、2021年(令和3年)12月31日までの居住が必要となる。

回数に制限がないので、家を買い替えて移り住んだ場合でも、同じ人が控除を受けることは可能だ。ただし住宅ローン控除の制度自体に時限措置があるので、期限が法改正で更新されず、将来使えなくなる可能性はある。現行法では、2021年(令和3年)12月31日までの居住が必要となる。


Q


仕事の関係で住んでいる家が2つあるが住宅ローン控除は両方受けられるか

主たる1つの家屋のみ住宅ローン控除の対象となる。

主たる1つの家屋のみ住宅ローン控除の対象となる。

住宅ローン控除の条件2:入居開始時期

次のすべての条件を満たさなければならない。

・住宅の取得・新築等・増改築等の工事から6ヵ月以内に入居していること
・住宅ローン控除を受ける年の12月31日まで引き続き住んでいること

<よくある質問>

Q


単身赴任した年はどうなる?

親族が取得等から6ヵ月以内に入居後、引き続き居住し、事情が解消したら一緒に居住することが認められるときは引き続き居住しているとして扱い、住宅ローン控除の対象となる。
参考:国税庁No.1234「転勤と住宅借入金等特別控除等」

親族が取得等から6ヵ月以内に入居後、引き続き居住し、事情が解消したら一緒に居住することが認められるときは引き続き居住しているとして扱い、住宅ローン控除の対象となる。
参考:国税庁No.1234「転勤と住宅借入金等特別控除等」

住宅ローン控除の条件3:対象となる借入金等

●金額

特に条件はない。(住宅ローン控除額には上限がある)

●返済期間

10年以上にわたって分割返済する契約になっている。

●借入先

住宅ローン控除という呼び方から、金融機関からの借入金でないと受けられないと誤解されやすいが「借入金等」とは、借入金と債務のことである。

金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などでもよい。

●金利

無利子または0.2%に満たない利率の借入金は該当しない。※2016年(平成28年)12月31日以前に居住の用に供する場合の利率は1%

なお、住宅ローン控除の対象となる借入金や債務は元本のみである。

<よくある質問>

Q


土地のみの借入金等では受けられないのか。

受けられない。

建物と土地の両方に対する借入金等であれば、全額を住宅ローン控除の計算対象にできる。土地を先に取得するために借入れを行った場合、この借入れを住宅ローン控除の対象とするには一定の要件を満たす必要がある。借入れをする前に専門家や税務署に相談するとよい。

受けられない。

建物と土地の両方に対する借入金等であれば、全額を住宅ローン控除の計算対象にできる。土地を先に取得するために借入れを行った場合、この借入れを住宅ローン控除の対象とするには一定の要件を満たす必要がある。借入れをする前に専門家や税務署に相談するとよい。


Q


繰り上げ返済を行い、ローンの返済期間が10年未満になったらどうなるか

10年未満となった年分以後、控除が受けられなくなるが、すでに適用されたものには影響しない。

住宅ローン控除の対象となる借入金等は「契約において償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済することとされているもの」であればよいとされている。(租税特別措置法第41条第1項、同法基本通達41-19)

10年未満となった年分以後、控除が受けられなくなるが、すでに適用されたものには影響しない。

住宅ローン控除の対象となる借入金等は「契約において償還期間が10年以上の割賦償還の方法により返済することとされているもの」であればよいとされている。(租税特別措置法第41条第1項、同法基本通達41-19)

住宅ローン控除の条件4:控除を受ける個人の条件

・合計所得金額3000万円以下
・非居住者でも可 ※2016年(平成28年)3月31日までは居住者のみ
・当年、前年、前々年に所得税のマイホーム特例、マイホームの軽減税率の特例、マイホームの買い替え特例など一定の譲渡所得の特例の適用がないこと

<よくある質問>

Q


非居住者が住宅ローン控除を申告して意味があるのか

2016年(平成28年)4月からは、家屋の取得者が居住者であるか非居住者であるかにかかわらず、その者と生計を一にする親族が、その家屋に年末まで引き続き居住していれば、住宅ローン控除を受けられる。しかし国内源泉所得がなければ意味はない。

2016年(平成28年)4月からは、家屋の取得者が居住者であるか非居住者であるかにかかわらず、その者と生計を一にする親族が、その家屋に年末まで引き続き居住していれば、住宅ローン控除を受けられる。しかし国内源泉所得がなければ意味はない。

住宅ローン控除の条件5:控除1年目は確定申告が必要

住宅ローン控除を受ける初年度は、確定申告が必要だ。2年目以降、会社で年末調整を受ける人は、会社に必要書類を提出し、年末調整で住宅ローン控除を適用できる。年末調整を受けない人は、2年目以降も確定申告書の提出で受ける必要がある。

住宅ローン控除の条件は国税庁の「チェック表」で

住宅ローン控除の条件は非常に多い。確定申告をする前に、必ず国税庁の「住宅借入金等特別控除チェック表」で条件を確認しておこう。

国税庁:令和2年分(特定増改築等)住宅借入金等特別控除を受けられる方へ