家族を扶養すると所得税などが安くなる扶養控除が受けられます。ただ、実は一口に扶養控除と言っても配偶者控除や特定扶養親族控除など、いくつか種類があります。
この記事ではちょっとわかりにくい扶養控除について、できるだけ簡単にまとめます。少しでも参考になれば幸いです。
同居していなくても扶養の対象に
扶養控除はいくつか種類がありますが、そのすべてにおいて、扶養する方と扶養される方が生計を一にすることが必要です。まず、この「生計を一にする」という言葉について説明しておきしょう。
生計を一にするとは同居するという意味ではなく、生活費を共有するということです。同居していなくとも仕送り等で生活費を共有していれば生計を一にすると見なされ、扶養控除の対象とすることができます。例えば進学等で下宿する子に仕送りをし、生計を一にしていても控除の対象とすることができます。
また、扶養される方に多くの所得があってもいけません。38万円を超える所得(給与収入だと年収103万円)がある場合は扶養対象とすることはできませんので気を付けてください。
これを踏まえ、次項からそれぞれの扶養控除について見ていきましょう。
配偶者以外の3つの扶養控除
配偶者以外の親族を扶養する場合、その親族の年齢によって3つの種類があります。親族の年齢は、その年の12月31日時点の年齢で換算してください。では、それぞれどのような内容なのか見ていきましょう。
一般の扶養親族控除
まずは一般の扶養親族を扶養する場合です。扶養される方が16歳以上だと対象となります。この扶養親族がいる場合は、扶養する方の収入から38万円控除が受けられます。
0~15歳の場合は扶養対象とならない点に注意してください。0~15歳の児童が家族にいる場合は「児童手当」を受け取れますから、そちらで恩恵を受けましょう。
特定の扶養親族
扶養される方が19歳以上23歳未満の場合、「特定扶養親族控除」となります。この扶養親族がいる場合は、扶養する方の収入から63万円控除することができます。一般の扶養親族より大きな控除が受けられ、より大きな節税となります。
老人扶養控除
次に、70歳以上の扶養親族がいる場合は「老人扶養親族控除」が受けられます。同居している場合は扶養する方の収入から58万円の控除が、同居していない場合でも48万円の控除が受けられます。
配偶者も同様の控除が
以上3つが配偶者以外の親族を扶養する場合の扶養控除です。配偶者は別に「配偶者控除」か、あるいは「配偶者特別控除」が受けられます。
配偶者の控除の場合は扶養する方にも収入の要件があるということに注意が必要です。扶養する方が給与収入の場合、年収1,120万円を超えるまでは38万円の控除があり、1,220万円を超えると0になります。
配偶者控除も配偶者に38万円を超える所得があると使うことができません。しかしその場合でも、配偶者の所得が85万円までなら配偶者特別控除が利用できる可能性があります。
どれくらい税金が安くなるの?
扶養する方が恩恵を受けられる扶養控除ですが、実際にどの程度税金が安くなるのでしょうか。これは扶養する方に掛かる税率によって違いがあります。
所得税は「課税される所得金額」に応じて税率が決定されます。課税される所得金額とは、他に所得がない会社員の場合、まず給与額面(年収)から給与所得控除を引いた金額を算出し、そこから扶養控除など各種の所得控除を引いて残る金額のことです。
節税額は国税庁の「所得税の速算表」を利用しましょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
※国税庁 所得税の速算表
仮に「課税される所得金額」が300万円の場合、約29万円が所得税(復興税含まず)となります。仮に一般の扶養控除38万円を利用すると課税される所得金額は262万円となり、所得税は約25万円となります。この場合では約4万円の節税となりました。
計算式 | 所得税額 | |
---|---|---|
扶養なし | 300万円-9万7,500円×10% | 29万250円 |
扶養あり | {(300万円-38万円)-9万7,500円}×10% | 25万2,250円 |
▲3万8,000円 |
所得税は累進課税のため、扶養控除による節税額は扶養する方の年収が多ければ多いほど大きくなります。
扶養控除は税制だけではなく社会保険にもある
この記事では税制上の扶養控除についてお伝えしました。ややこしいですが、一般に扶養控除と言われているものには社会保険上のことを指している場合もあります。今回ご紹介した税制上の扶養控除と若干要件が違いますから、そちらにもご留意ください。
扶養親族は勤務先に届出を。年末調整も受けましょう。
扶養する方は、扶養の事実が発生したらすみやかに勤務先に届け出てください。退職しない限り年末調整も必ず受けましょう。
今回の記事では扶養控除の仕組みについてお伝えしました。少しでも皆さんの家計の一助になれば幸いです。
文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)/fuelle
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