確定申告の時期が近付くと、申告の必要があるかどうかが気になるのが「医療費控除」だ。2016年分までは、申告のために掛ける手間に比べて還付金が少ないと判断して、申告自体を諦めてしまっていた人もいるのではないか。

この申告のために掛ける手間、つまり医療費控除の添付資料の準備に掛かる手間が2017年分の申告から大幅に軽減された。これを機に、還付金が少額であっても医療費控除を申請して、還付金を受け取ってみてはどうだろうか。

医療費控除を確実に行うための基礎知識

確定申告,医療費控除
(画像=PIXTA)

医療費控除は所得控除の一種で、高額な医療費を支払った納税者の事情を考慮して、所得から一定額の控除することで所得税を軽減するための制度である。

確定申告が義務ではない給与所得者が医療費控除の対象となる場合は、自分で確定申告をする必要がある。そのため、できるだけ見落としなく、確実に手続きを進められるように、本記事では申告までの流れをステップごとに確認しておきたい。

確定申告における医療費控除とは? 年間10万円以上自己負担した人の控除

医療費控除では、納税者本人と生計を一にする家族が1年間に支払った医療費総額から保険金などの補填分を差し引いた自己負担額が10万円を超えた場合、または総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5パーセントを超えた金額が医療費控除の対象となる。

ここで気を付けたいのは、所得税法上の「生計を一(いつ)にする家族」の定義と、医療費控除の対象金額だ。

・「生計を一(いつ)にする家族」は同居に限らない

ご存じの方も多いだろうが、納税者と「生計を一にする家族」とは、納税者と同居している家族に限ったことではない。納税者本人の子供が遠隔地の大学に就学しており、下宿先に生活費を月々送金しているようなケースや、老人介護施設に入居している高齢の親のために月々の施設入所費用を支払っているケースなどもそれに該当する。

故郷の実家で離れて暮らす親の場合も、仕送りによって生活が成り立っているような場合は「生活を一にしている」とみなすことができる。そのため、医療費を合算した上で、税務署等からの問い合わせに即答できるように、送金額がわかる振込票などを保管しておく必要がある。

扶養控除の対象からはずれている配偶者や社会人の子供の場合でも、同居して生活を共にしていれば生計を一にしていると認められ、医療費控除の対象となる点も覚えておきたい。

せっかくの機会なので、同居する家族はもちろんのこと、同居していない「生計を一にする家族」が1年間に支払った医療費も忘れずに合算して、医療費自己負担額が10万円を超えていないかの確認をしてほしい。

・医療費控除の境界線は2つ。自己負担額が「10万円超」、または「総所得金額等の5パーセント超」

そもそも、医療費控除は、家族が1年間に支払った医療費が高額なので、その分所得税を軽減するという目的で設けられている。その「高額な医療費」の基準となる金額が10万円、または総所得金額等が200万円未満であれば総所得金額等の5パーセントなのだ。

医療費控除の大原則は1年間の医療費自己負担額が10万円を超えることである。しかし、10万円を超えないからといって、即座に諦めてしまっては損をするかもしれない。

所得が給与だけの場合、給与所得は総所得金額等に相当する。年間給与所得が200万円未満であれば、保険料などの補填分を除いた医療費自己負担額が、給与所得つまり総所得金額等の5パーセントの金額を超えていないかを確認すべきだ。超えていたら医療費控除の対象になるので、確定申告をすれば還付金を受け取ることができる。

医療費控除はいつまでに?2月中旬までには必要書類の整理整頓を終えるのがベター

医療費控除は所得控除のひとつである。そのため、年末調整済みの給与所得者や年金受給者は、確定申告の「所得税および復興特別所得税・贈与税」の申告・納税期限である3月15日までに手続きを済ませたい。

12月になると会社から源泉徴収票が渡され、2月には健康保険組合等から医療費通知が届くケースが多い。これらが揃い次第、書類の準備を始め、2月中旬頃までにすべての提出書類を整えられると、余裕をもった申告手続きができるだろう。

確定申告期限に遅れても還付申告できる

確定申告が義務でない給与所得者が医療費控除を申請する場合は、期限までに確定申告を完了する必要がある。しかし、確定申告期限を過ぎても、翌年の1月1日から5年間は還付申告書を提出することができるため、手続きが間に合わなかったとしても諦めずに還付申告するのをお勧めする。

還付申告では、通常の確定申告と同じ確定申告書と添付書類等を提出すればよいので、以下の手順どおりに書面を提出するか、e-Taxで申告できることも覚えておくとよいだろう。

確定申告で医療費控除をする際に必要な具体的な手順と申請書の書き方

ここでは、確定申告の医療費控除に必要な提出書類と手続きの流れについて具体的に説明したい。

2017年分の確定申告より、医療費控除の申請に必要な書類は次のとおりに変更されている。
・「確定申告書」
・「源泉徴収票」原本
・「医療費控除の明細書」と、対象期間の医療費領収書(提出義務はないが5年間保管の必要あり)
・ある場合、必要事項が記載された正式な“医療費通知”原本(「医療費控除の明細書」への転記が可能で、医療費領収書の保管は必要なし)
・マイナンバーの本人確認書類の写し(e-Taxの申告では本人確認書類提出の必要なし)

2019年分までの経過措置として、確定申告書に添付する「医療費控除の明細書」の代わりに、従来どおり、すべての医療費の領収書を提出することもできる。

医療費控除の用紙はどこで手に入る?国税庁の確定申告窓口からダウンロード

医療費控除の申請に必要な書類は、「確定申告書」「医療費控除の明細書」の2点である。どちらも、国税庁ホームページ「平成29年度 確定申告に関する情報の総合窓口/確定申告書等作成コーナー」で作成できる。

医療費控除の申告に必要な「医療費控除の明細書」については、手書きの明細書様式と記載例が掲載されているので適宜印刷して使用してほしい。なお、明細書裏面には「医療費控除の明細書」に添付または提示が必要な書類も記載されているので、確定申告の際に忘れずに添付する必要がある。

一方で、パソコンを使わずに確定申告書や必要書類を作成する場合は、最寄りの税務署や関係機関に直接取りに行ったり、返信用封筒を同封の上で送付を依頼したりする方法もある。

医療費控除の書き方は?

パソコンの「確定申告書等作成コーナー」を利用して医療費控除を申告する方法には、「書面提出」と、「e-Taxによる申告」がある。

例えば、「書面提出」を選択した場合、表示されたページに必要事項を入力し、「入力終了(次へ)」をクリックすると、次ページが表示される仕組みになっている。

(1)「確定申告書等作成コーナー」をクリックすると、最初に「提出方法の選択等」ページが表示される。該当するものをチェックし、生年月日を入力してから、「入力終了(次へ)」をクリックする。

(2)「所得の種類選択」ページが表示されたら、該当するものをチェックして「入力終了(次へ)」をクリックする。

(3)「給与所得の内容等選択」ページが表示される。該当するものにチェックをつけて「入力終了(次へ)」をクリックする。

(4)「適用を受ける控除の選択」ページでは、医療費控除・セルフメディケーション税制どちらの場合も「医療費控除」をチェックする。

(5)「給与所得の入力」1/1ページから1/3ページまで逐次表示されるので、源泉徴収票に記載されている金額を正確に入力して、「入力終了(次へ)」をクリックする。

(6) 「支払者」情報ページが表示される。「所在地」と「氏名又は名称」を入力したら、「入力終了(次へ)」をクリックする。

(7) 「給与所得の入力内容確認」ページが表示されるので、訂正がなければ「次へ」をクリックする。

(8) 「収入・所得金額の入力」ページが表示されたら、表示された金額を確認して「入力終了(次へ)」をクリックする。

(9) 「所得控除の入力」画面が表示される。申請する控除欄「医療費控除」の「入力する」をクリックする。

(10) 「適用する医療費控除の選択」画面が開くので、「医療費控除」または「セルフメディケーション税制」のいずれかを選択する。

(11)「入力方法の選択(医療費控除)」ページが表示される。該当事項をチェックして、「次へ進む」をクリックする。

(12) 「医療費通知に記載された医療費の入力」画面に実際の金額を入力して、「次へ進む」をクリックする。

(13) 「計算結果の確認(医療費控除)」のページが表示される。控除額を確認したら「次へ進む」をクリックする。

(14) 控除額が入力された「所得控除の入力」画面が表示される。内容を確認したら、「入力終了(次へ)」をクリックする。

(15) 「計算結果の確認」ページが表示されたら、医療費控除額を確認して、「次へ」をクリックする。

(16) 「住民税等に関する事項の入力」ページが表示されるので、該当するものにチェックを入れて、「入力終了(次へ)」をクリックする。

17)「住所・氏名等入力」ページの1/3と2/3が逐次表示されるので、都度入力して「入力終了(次へ)」をクリックする。

(18) 住所・氏名等入力」3/3で還付金額が表示されたら金額を確認する。「受取方法」を選択して必要な情報を入力したら「次へ」をクリックする。

(19) 「マイナンバー入力」画面が表示されたら、マイナンバーを入力して「入力終了(次へ)」をクリックする。

(20) 入力済みの確定申告書A様式が表示されるので、必要な情報が記載されていることが確認できたら印刷する。

どう提出する? 持ち込みや郵送以外にも、e-Taxを活用した確定申告書類の出し方

以上のように、「確定申告書等作成コーナー」から入って、指示どおりに逐次必要事項を入力すれば、簡単に確定申告書を作成・印刷することができる。

かつては、確定申告書に添付書類を揃えて、最寄りの税務署や関係機関に直接持ち込むか郵送で提出する方法が主流であった。現在でも書面提出は一般的な方法として受け入れられている。

こうした書面提出による確定申告では、確定申告書と添付書類とあわせて、マイナンバーカード取得済みの場合はマイナンバーカードの提示が、取得していない場合はマイナンバーの通知カードと本人確認書類の写しを提出する必要があるのも忘れてはならない。

書面提出による確定申告とは別に、近年では、国税庁ホームページで確定申告書類を作成し、そのままe-Taxによって申告を完了できるようになっている。

e-Taxで確定申告する際には事前準備が必要になるが、次のようなメリットがあるので、今後は利用者増が見込まれる。

・時間に余裕のない人や体の不自由な人、税務署が遠方にあるような場合には、現地に赴く必要がないため非常に使い勝手が良い
・医療費の領収書や源泉徴収票等の記載内容を入力・送信すれば、提出不要
・マイナンバーの本人確認書類を送信すれば、写しの提出は不要

e-Taxの事前準備には、使用環境やマイナンバーに関して、次のような事前準備が必要になる。詳細については、国税庁Webサイトを参照してほしい。

・e-Taxに対応できるパソコンの利用環境を確認する
・電子証明書が組み込まれているマイナンバーカード(または住民基本台帳)を取得する
・ICカードリーダライタの準備
・毎年、事前準備セットアップファイルをダウンロードし、セットアップを行う

2017年分の申告から変わった確定申告における医療費控除の方法

本記事において、すでに医療費控除申請に係る提出書類等の変更について解説しているが、あらためて、2017年分からの医療費控除に関する大きな改正点をまとめておきたい。

医療費控除の申請どう変わった?医療費明細書と医療費領収書の取り扱いの変化

  従来の医療費控除申請では、確定申告書の添付書類として、1月1日から12月31日までに納税者と生計を一にする家族が支払った「医療費の領収書」すべてを提出または提示する義務があった。

税制改正により、2017年分からは、「医療費の領収書」すべての提出または提示の代わりに、確定申告対象期間の「医療費控除の明細書」を提出することになった。この「医療費控除の明細書」に該当するすべての医療費の領収書については、5年間保管する必要がある。

なお、健康保険組合等から配付される「医療費通知」(「医療費のお知らせ」など)に所定の事項の記載があれば、「医療費通知」原本を提出することで、「医療費控除の明細書」への転記が可能になり、領収書の保管も省略できるようになった。

「医療費通知」を提出する場合でも、「医療費通知」に掲載されていない保険適応外の自費治療や「医療費通知」発行後に受診した医療費があれば、「医療費控除の明細書」に記載し、対応する「医療費の領収書」を5年間保管しなければならない。

セルフメディケーション税制とは? 普段からの健康への気遣いが所得控除の対象に

2017年分より新設されたセルフメディケーション税制は、本来、増大する医療費を抑制する目的で設けられた医療費控除の特例である。この税制の浸透によって、国民の多くが日頃から健康増進に努め、医療機関での受診に至らず市販薬で対応できる程度の健康を維持できるようになることが期待されている。

セルフメディケーション税制とは、1月1日から12月31日の1年間で、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品および医療用から転用された一般用医薬品)を購入した費用総額の1万2000円を超える部分の金額を、上限8万8000円まで総所得金額等から控除することができるという制度である。

本税制を利用して、確定申告で控除を申請する際に必要になる書類は次のとおりである。
・確定申告書
・セルフメディケーション税制の明細書(手書きの様式と記載例は国税庁Webサイトを参照のこと)
・確定申告する対象期間中に、予防接種・がん検診・人間ドッグなど、健康維持のために一定の取り組みを行ったことが証明できる書類

セルフメディケーション税制による減税額と医療費控除による減税額は、国税庁Webサイトの総合窓口で必要事項を入力すると試算できる。試算した両方の減税額を比較して、より減税額が大きい方法を選択するのが望ましい。

いったんどちらかを選択して確定申告してしまうと、その後方法の変更を希望しても修正申告はできないので、どちらの方法が適切か申告前に慎重に選びたい。(ZUU online編集部)