年末調整,書き方,申請,方法

年末調整では、普段あまり目にしない何通かの書類を記入・提出することとなるが、それらの記入方法などについてきちんと把握できているだろうか。せっかく書類を提出しても、その内容が誤っていれば当然所得控除を受けることはできない。今回は、例を挙げて各書類の書き方について解説するので、年末調整を行うときの一助としていただければ幸いだ。

目次

  1. 年末調整で必要な書類とは
  2. 年末調整書類の書き方・記入例
    1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
    2. 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
    3. 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
  3. 年末調整書類のよくある間違い

年末調整で必要な書類とは

年末調整で提出することになる主な書類は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と、「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」の2通。そのほか、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」や、各種保険料控除申告に際して添付が求められる「保険料控除証明書」などが、年末調整における必要書類一式だ。

「扶養控除等(異動)申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」に関しては給与支払者から配布がなされ、「住宅借入金等特別控除申告書」は該当控除の申請を行ったタイミングで必要年数分が送付、「保険料控除証明書」については年末調整に先んじて各保険会社から送付される。各書類を紛失してしまった場合は、年末調整までに再発行などを依頼して用意をしておこう。

所得控除は全部で14種類あり、年末調整ではこのうち11種類の所得控除について申告を行うことができる。しかし「扶養控除等(異動)申告書」は主に人的控除に関わる申告書であり、「給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」は主に物的控除に関わる申告書である。

いずれも関連する所得控除の適用を求める際に提出が必要なことは言うまでもないが、特に前者、「扶養控除等(異動)申告書」の提出は年末調整を受けるための要件のひとつとなっている。

ちなみに「扶養控除等(異動)申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」は、大概の職場においてどちらも11月末や12月初頭あたりに配布されることと思うが、それらが対象とする年に注意してほしい。「扶養控除等(異動)申告書」は受け取った年の「翌年」について申告するものであり、「給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」は「当年」について申告するものである。この違いについて、詳細は後述する。

年末調整書類の書き方・記入例

では各書類の記入方法を、それぞれが対応する所得控除と併せて解説していこう。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

「扶養控除等(異動)申告書」では、配偶者控除、扶養控除、勤労学生控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除について申告することができる。書式としては、申告書上段に納税者自身の個人情報、中段に控除対象配偶者および控除対象扶養親族の情報、中下段に障害者・寡婦(寡夫)・勤労学生控除にまつわる情報をそれぞれ記入する。

配偶者や扶養親族については項目の通り情報を記入するのだが、平成28年分からは各個人番号を記入する項目が増えた点に注意してほしい。また、障害者・寡婦(寡夫)・勤労学生控除については記入する項目が簡易で、必要に応じて適宜特記しなければいけない。控除を利用する場合は、申告書でも促している通り、裏面の注意書きなどをしっかりと確認しよう。

給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書

「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」では、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、寄付金控除、配偶者特別控除について申告することができる。

この申告書は納税者情報を記入する項目以外の記入欄が大きく4つに区切られており、左上が生命保険料控除、左下が地震保険料控除、右上が配偶者特別控除、右下が社会保険料控除及び小規模企業共済等掛金控除の項目となっている。

配偶者特別控除を除き、基本的に各保険会社より受け取っている保険料控除証明書を参考に記載すれば問題はないのだが、生命保険料控除の新・旧制度区分などには特に気をつけたい。申告書にも制度ごとの控除額計算式が記載されているものの、この表だけで生命保険料控除についてすべて理解することは難しい。

また、配偶者控除と配偶者特別控除は要件が全く異なるため、両方を重複して申請することはできない。いずれかの控除を申告した場合は、もう一方の控除に誤って記入することのないようにしよう。

給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

「住宅借入金等特別控除申告書」は、確定申告によって当該控除を申告した「翌年」から、年末調整によって申告することが可能となる。すでに一度申告を行っている書類であるため大枠は理解していることと思うが、注意点としては借入金等の年末残高や償還期間を誤りなく記入することだ。

加えて、連帯債務などがあるならばこれを漏らさず備考・摘要欄に記入すること。詳細は、保険料控除と同じく金融機関等から「残高等証明書」が送付されているはずなので、そちらを確認しよう。

年末調整書類のよくある間違い

「扶養控除等(異動)申告書」と「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」では申告する年が異なると前述したが、これを把握しないままに誤って情報を記入してしまうケースがある。例えば扶養控除の適用を受けようとするとき、扶養控除には一般・特定・同居老親等などの区分があるが、これを分けているのは主に生年月日(年齢)である。

扶養控除等(異動)申告書は「翌年」について申告するものであるから、記載する年齢も翌年のものでなければならないのだが、これを当年のものにしてしまう人が多いのだ。

たかがそれくらいと思うかもしれないが、年末調整の処理は多くの場合給与計算ソフトなどによって機械的に行っているため、1項目でも要件から外れる情報があればその時点で不適用と見なされてしまう。単純なミスほど見落としやすい部分でもあるため、申告の際は努々注意していただきたい。

年末調整を受けるためにはまず前提として扶養控除等(異動)申告書を提出することが不可欠である。逆に言えば、これさえ提出していれば基本的に年末調整は誰もが受けられる手続きでもある。積極的に所得控除を利用し、少しでも多くの還付金を受け取れるよう、ぜひ前向きに取り組んでほしい。

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