年の瀬になり、年末調整だけでなく、確定申告を意識するようになった人も多いことだろう。毎年慣れているならともかく、起業や投資、ふるさと納税や医療費控除で、年明けに初めて確定申告する人は「失敗したらどうしよう」「ちゃんとできるかな」と不安かもしれない。そこで確定申告の内容のポイントをざっくりと解説する。恒例行事となっている人にも再確認してもらえればうれしい限りだ。

確定申告とはそもそもどんなものか

確定申告,基本
(画像=PIXTA)

確定申告とは、平たく言うと「毎年1月1日から12月 31日までの間の『収入−支出=所得』をすべて計算し、さらにその計算した金額に基づいて納めるべき税金を算出し、納税したり前払した税金との過不足を精算したりする作業」のことを言う。この中で大事なプロセスは次の3つだ。

1.確定申告に必要な書類を準備する(確定申告書や決算書などの用紙、医療費控除などの必要資料など)
2.確定申告書や決算書、その他書類を作成する
3.申告書に従って納税あるいは還付の手続きを行う

「確定申告は個人事業主や株の売買をやっている人など、ごく一部の人の特殊な作業だ」というイメージを持つ方がいまだに少なくない。なぜかというと、日本人の8割超は会社員であり、ほとんどの人は年末調整という企業による税金の調整で確定申告しなくても済んでいるからだ。

しかし、本来、日本の税制では原則「申告納税制度」というスタイルを取っている。年末調整は特殊な作業に過ぎない。さらに、年功序列が崩れ、給料などの上昇が見込めず、老後の財政不安が広がるようになった昨今、会社を辞めて起業する人や、副業でビジネスや投資を行う人が増えている。また、医療費がかさんだ人やあちこちにふるさと納税を行った人は確定申告しなければ税の恩恵を受けられない。

つまり、確定申告はごく一部の人のものではなく、ほとんどの国民に必要なものなのだ。

確定申告を行う時期はいつか?

確定申告は、毎年2月16日から3月15日まで(3月15日が土曜日あるいは日曜日の場合は、翌々日あるいは翌日の月曜日まで)に行うこととなっている。1日でも過ぎると期限後申告となってしまい、ペナルティを課されることがあるので注意しよう。

また通常、税務署の開庁時間は月曜から金曜まで(ただし祝日などは除く)の朝8時30分か夕方の5時までとなっている。しかし一部の税務署では確定申告期間中、日曜日でも確定申告の相談や申告の受付などを行っている。

なお還付申告については2月15日以前からでも行うことができる。2月の下旬から3月15日までの間は相談や申告で窓口がかなり込み合うので、還付申告の場合は1月中に提出した方が得策だ。ただし確定申告の計算期間はその年の12月31日までとなっているので、行うならば年が明けて1月からにしておこう。

どういう人が対象か 大別すると2種類?

確定申告の対象となる人は2種類いる。「確定申告しなくてはならない人」と「確定申告しないと損する人」だ。

【確定申告しないといけない人】

・配当金をもらった人(配当所得)
・アパートや建物、土地の賃貸による収入があった人(不動産所得)
・フリーランスなどのように個人でビジネスを行い、生計を立てている人(事業所得)
・退職金をもらった人(退職所得)
・株などの売買や不動産や金などの譲渡があった人(譲渡所得)
・利子による収入がある人(利子所得)
・山林の伐採や立木の譲渡のある人(山林所得)
・ふるさと納税で返礼品を50万円分以上受け取った人、生命保険の満期金をもらった人やくじや競馬などで多額の賞金をもらった人(一時所得)
・年金収入を400万円超受け取っている人(公的年金等の雑所得)
・年金収入は400万円以下だが他の所得の合計が20万円を超える人
・FXなどによる収益のある人(雑所得)

また、正社員やバイト・パートのような給与所得者は通常、年末調整で完結するため確定申告は不要となるケースが多いが、以下のような人は確定申告をしなくてはならない。

・給与収入が2000万円を超える人
・給与収入が2000万円以下でも不動産収入や配当収入、株の売買など給与所得以外の所得の合計が年間20万円を超える人
・2つ以上の会社から給与所得を受け取っている人

【確定申告をしないと損する人】

・医療費控除や雑損控除がある人
・年末調整時に調整し忘れた生命保険料控除や損害保険料控除、社会保険等がある人
・住宅ローン控除を初めて受ける人(2年目以降は年末調整のみでOK)
・年の途中で退職して年末までに再就職しなかったために年末調整が受けられなかった人
・ふるさと納税を6カ所以上の自治体に行った人

必要な書類

申告の内容によって様々だが、大まかには次のようになる。

【提出必須書類】

次のいずれかの書類は必ず提出しなければならない。

1.確定申告書A
所得の種類が給与所得、公的年金等、その他雑所得、配当所得、一時所得のみで、かつ、予定納税(前年所得税が15万円以上の場合に払うことになる前払税金)がない人が利用できる。

2.確定申告書B
事業所得や不動産所得など、所得の種類に関係なく誰でも利用することができる。

確定申告書Aの方がシンプルな作りだが、迷ったら確定申告書Bを利用するといい。

【ケースに応じて提出が必要な書類】

・給与所得の源泉徴収票:給与所得のある人
・青色申告決算書、収支内訳書など:事業所得、不動産所得などがある人
・申告書第三表:分離課税となる所得(譲渡所得のある人、FX取引の雑所得)がある人
・申告書第四表:分離課税となる所得(譲渡所得のある人、FX取引の雑所得)において損失を受けた人
・医療費控除のレシート、計算明細書など:医療費控除のある人
・ふるさと納税の寄附の証明書:ふるさと納税を行った人
・住宅ローン控除の計算明細書、登記簿謄本など:住宅ローン控除を初めて行う人

これ以外にも、所得や控除の内容に応じて、様々な書類が必要となる。

作成方法は手書き、ソフト、Webサイトなど

作成方法は次のいずれかで行うことができる。

1.手書きで作成
2.個人用会計ソフトで作成
3.国税庁のWebサイトで作成
4.e-taxで作成

2.で作成したデータをe-taxで送信することもできる。また3.については、e-taxで送信することも郵送用データを作成し印刷することも可能だ。さらに、作成したデータを保管すれば、翌年以降、作成の際に個人情報の記入などを一部省略することができる。

提出方法窓口、郵送、オンライン

確定申告書の提出は、次のいずれかの方法によることができる。

1.窓口に直接提出
2.郵送で提出
3.e-taxで提出(ただし、事前に利用開始のための手続きが必要)

1.で間に合わなかった場合は、税務署に時間外収受箱があるので、同日以内ならそちらに投函することも可能だ。また、2.に関しては、3月15日の消印まで有効となっている。

また、窓口や時間外収受箱で提出する場合や郵便で提出する場合は、税務署から後日問い合わせや税務調査があった場合、修正が必要な場合に備え、コピーも提出し、収受印を押してもらうようにしよう。窓口提出以外の場合には、返送に必要な切手を貼った返信用封筒を添付しておくことも忘れないでおきたい。

納税方法は? 最近はクレカも対応

納税は次のいずれかで行うことができる。

1.現金に納付書を添えて納付する
2.銀行口座から振替納税する
3.ネットバンキングやATMで納税する
4.ダイレクト納付をする
5.クレジットカードで納付する

1.は、税務署や郵便局、銀行などで納付することができる。また、納税額が30万円以下なら、コンビニで納付することも可能だ。ただし、コンビニの場合はバーコード付の納付書が必要となる。

2.は、事前に口座振替依頼書で手続きを行っておくことが必要だ。一度振替納税の手続きをすれば、次回以降も自動引き落としとなる。振替納税の時期は4月中旬あたりになる。

3.と4.はe-taxで申告を行っている場合に向いている。特に4.は振替日を自分で決めたい人にはオススメだ。ただし、いずれも事前の手続きが必要となる。

5.は、2017年からスタートした。クレジットカードの手数料が納税額に応じてかかるが、事前の手続きは特に必要なく、専用ホームページでクレジットカードの番号さえ入力すればOKだ。日中窓口に行くヒマもなく面倒な手続きをやる余裕もない人は、これで納税をすませるとよいだろう。

還付のスケジュール 4月ごろ振り込みが多い

還付は医療費控除や雑損控除、ふるさと納税や住宅ローン控除などで納め過ぎた税金の税金あるいは一部を返金してもらうことを言う。ただし、現金で戻してもらえるわけではなく、確定申告書第一表の右下に書かれた口座に還付金が振り込まれることになる。

還付が振り込まれるのは、先述の納税振替とほぼ同時期で、4月中旬から下旬となる。4月を過ぎても振り込まれていない場合には、一度管轄の税務署に問い合わせるとよいだろう。

相談窓口は税務署の窓口など

確定申告についての相談は、税務署窓口の他、電話などで行われている。また、確定申告時期になると、駅の周辺などで管轄地域の税理士会の税理士によって相談コーナーを設けていたりすることが多い。本やネットだけでは解決しない不安や悩みは、こういったところで直接相談するとよいだろう。

電子申告(e-tax) オンラインで可能に

電子申告(e-tax)は、従来、紙で行ってきた確定申告をオンラインで行えるというものだ。窓口や郵送のコストが省け、自宅での作業で完結するので納税者の負担も減ることとなる。「せっかくだから電子申告にチャレンジしたい」という人もいるだろう。

国としても、税行政のスリム化の一環として電子申告を推し進めている。特に、2020年からは、青色申告をしている個人事業主が確定申告を電子申告で行った場合には、通常の青色申告控除額に加え、さらに10万円控除される見込みだ。

電子申告する場合は、マイナンバーカードや住民基本台帳カードに組み込まれている「公的個人認証サービスに基づく電子証明書」などの電子証明を取得する必要がある。また、開始届や利用者識別番号の取得といった手続きも事前に行わなければならない。

いったん手続きを済ませれば、画面の内容に従って必要事項を入力して確定申告を仕上げることになる。

電子申告の利用可能時間は、通常は税務署の開庁スケジュールとほぼ平行しているが、確定申告時期に限っては、土日を含め、24時間稼働している。ただし、期日が近くなればなるほど回線は込み合い、通信しにくくなるので注意したい。

注意点 期日は厳守しよう

もっとも注意したいのは期日の厳守だ。1日でも送れると期限後申告として扱われる。期限後申告の場合、申告書を提出した日が納税の期限となる。

また、期限後申告をしたり、申告をしなかったことにより後日、税務署により所得金額の決定を受けたりすると、本来納付すべき税額(本税)の他に無申告加算税を納付しなくてはならなくなる。無申告加算税は、本税が50万円までならその15%、50万円超の部分についてはその20%にあたる金額が計算される。ただし、遅れても自主的に申告し納税した場合には、5%に軽減される。この他、遅れたことにより、本来の納期限から起算して計算される延滞税も課されることになる。

さらに青色申告を行っている場合には2年連続して期日に遅れると青色申告の承認が取り消されることになる。遅れたことによるデメリットは大きい。期限を守って申告を行っていただきたい。

鈴木 まゆ子 
税理士、ライター、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、仮想通貨に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、仮想通貨、お金に関する心理学についても独自に研究中。共著『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、信成国際税理士法人)。

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