家を買ったら確定申告を行うことで減税の対象となる。でもその手続きは確実に行わないと、受けられるはずの減税が対象外となってしまったり、多く納税してしまったりという例もある。失敗しないためのマイホームに関する確定申告についてまとめておこう。

マイホームについての確定申告とは?

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(画像=PIXTA)

マイホームを購入したら減税が受けられる。そう聞いたことのある人は多いだろう。

しかし実際の手続きとなると意外に面倒でどんな手順で進めていいのか非常に分かりにくい。またマイホームと言っても、新築、中古、リフォーム、買い替えによる売却益・売却損のあるなし、資金の贈与を受けた場合などケースにより実に様々である。いずれにしても正確に確定申告を行わなければ措置を受けられない場合がほとんどである。

まずはマイホーム取得時のローン減税からその手続きを見ていこう。

住宅ローン控除のための確定申告

住宅ローンを組んで購入した場合に、その翌年の1月1日から行える。ローンを組んだ金融機関から10月ごろに融資についての年末借入残高証明が送られてくる。その証明書を含めた必要書類をそろえ翌年以降に行う。では11月や12月の年の瀬に購入した家の場合は申告に間に合わないのでは?と思うかもしれない。住宅ローンの還付申告は必ずしもその翌年度の確定申告受付期間にする必要はない。期限は5年間あるのであえて申告期間の混雑時に行わなくてもよいとういことになる。

ローン額に応じて還付される内容としては次のようになっている。

  • ローン借入額残高の1%
  • 控除期間は10年間
  • 対象となる住宅ローンの最高額は4000万円以下

1年間で控除される最高額は40万円以下で、10年間では400万円にもなる。さらに基準規定をクリアした優良住宅や低炭素住宅を取得した場合にはこの額が5000万円まで引き上げられるので、控除額もあがる。

この控除を受けるためには条件がもう少し細かく決まっている。借入は金融機関、住宅支援機構などからで最低10年間の借入期間であること。自らが居住するマイホームで引き渡しから6ヵ月以内に居住していること。床面積が50㎡以上で自己の居住する部分が2分の1以上を占めていること。さらに中古住宅の場合、マンションなどの耐火建築物では築25年以内、それ以外の耐火でない建築物の場合は20年以内の建物であることなどだ。

親族からの借入金で購入した場合ではローンとしての条件を満たせない、また築古を取得してリフォームした物件をマイホームにする場合でも控除は難しそうだ。中古物件の場合にはどのような控除方法があるのだろうか

中古住宅の場合は住宅ローン控除はどうなる?

ここ2~3年、ストック住宅への注目が高まっている。しかしあまりにも築年数の古い中古住宅でも控除が受けられるのか心配だと考える人も多いだろう。先ほどの条件を見ても築20年~25年より古くない住宅であることが条件とされている。結論から言うと築古の中古住宅の購入でも所得税の控除は受けられる。但しそのハードルは決して低くない。

中古住宅の場合は前述の条件にプラスアルファされる形で次のいずれかを満たす必要がある。

(1) 構造別の耐久年数

  • 耐火建築物(鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリード造など)で25年以内の建築
  • 耐火以外の建築物(木造)20年以内の建築

(2) 次のいずれかの耐震基準を満たしていること

  • 耐震基準適合証明の取得
  • 耐震等級1級以上の住宅性能評価書の取得
  • 既存住宅売買瑕疵保険の加入

(1)をクリアしている住宅で心配がないことは前述の通りだが、それ以上の築年数の住宅購入では(2)に挙げる条件を満たさなければローン控除が受けらえない可能性が出てくる。各条件について説明するが上で挙げたうち、住宅性能評価書も瑕疵保険いずれにおいても耐震基準に適合していなければ得られない。購入後のリフォーム物件としては対象となりにくいためローン控除を受けるためには耐震基準適合証明を取得することが不可欠となることを前提とする。

耐震基準適合証明とは

そのままの耐震性では住宅ローン控除が受けられない築年数の建物に対し、必要な改修工事を行い、現行の耐震基準に適合しているという証明を受けることである。

ただし少しその証明を受けるタイミングに注意しなくては控除が受けられない可能性もでてくる。基本的に耐震賃基準適合証明をけるのは引渡し前でなければならない。しかし売買契約の後、引渡し前に耐震工事を行い売主が適合証明を受けている物件を購入するという事例は稀なケースだ。築古の中古物件の購入では買主が引渡し後リフォームを行う。耐震工事ももちろんその時点で同時に行うのが一般的である。このような手続き上の不具合を解消するために「仮」の耐震基準適合証明を受けることができる制度が追加された。手順は次のようになる

売買契約書締結
↓(取引の条件上、この時点で耐震診断をする場合もある)
耐震基準適合証明書の仮申請

引渡

耐震診断を受診する

耐震改修工事(リフォーム工事と同時進行の場合が一般的)

耐震基準適合証明書の発行申請

入居

入居後の翌年に確定申告

このように中古住宅で20年又は25年以上の築年数の建物をリフォームする際には上記のような流れで購入決済前からの手順が重要となる。しっかりとその流れを踏んでおかなければ、ローン控除を受けられなくなる。

また引渡から入居後6ヵ月以内という規定にも充分注意が必要だ。一般的に決済時には事前に新住所へ住民票を異動し、新住所で所有権移転登記を行う。最新の住所でされた所有権登記に融資設定を行いたいとの金融機関の意向であり登記費用も抑えられる。便宜上の手続きなのだがそれでは実質的な入居日の特定ができなくなる。中古物件を仲介する会社や融資を行う金融機関がこのような手続きを把握していない場合があるため、ローン控除が受けられず後になってもめるケースも少なくない。

築古の物件で住宅ローン控除を受けたい場合は、購入検討時から斡旋する不動産会社にこの手続きの流れについてしっかり説明を受けておくことが必須だ。

マイホームをリフォームする場合の減税措置

自宅をローンでリフォームする際には住宅ローン減税だけではなくそのリフォームの内容によって選ぶ減税方法をさらに詳しく調べる必要がある。投資型減税、ローン型減税である。

投資型は減税分を初年度にまとめて還付を受け、ローン型では5年間で還付を受ける。ローン型では一般的な増改築についても適用がされるが、投資型では利用できない。反対に耐震改修費用については投資型で適用されローン型では対象外となる。

投資型での減税

耐震、バリアフリー、省エネについて要件を満たすリフォームである場合。さらに耐震とバリアフリーについては減税制度の併用ができる。所得税の額から工事費用の10%または控除限度額の少ないほうの額が適用される。耐震、省エネの控除限度額は25万円、バリアフリーリフォームでは20万円である。

ローン型での減税

リフォームローンを返済期間5年以上の借入金で行う場合が対象。「バリアフリー」「省エネ」の一方又は両者の併用さらに「投資型減税」との併用も可能である。入居した年から5年間所得税から上記対象リフォーム工事費用についてのローン年末借入残高2%とそれ以外のリフォームの工事費用部分の年末ローン残高の1%を合計した額が控除される。

住宅ローンでの減税

返済期間10年以上のリフォームローンを借りて行い、一定要件を満している場合に対象となる。入居後10年間、所得税からローン年末残高の1%の控除。年間控除額の上限は40万円(10年間で最大400万円)。控除の主な要件としては床面積が50平方メートル以上で自己所有、および居住。リフォーム費用は100万円以上。これらは前述したとおりである。

リフォームではローン期間が10年以上でありさらにバリアフリーや省エネなども施す大規模な工事をする場合には適用される減税措置が様々あるのでフルに活用すべきだと言える。

このようにマイホームにかかった費用について所得税から減税を受ける手続きは多岐に渡る。 新築の住宅を購入する場合は比較的個人でも容易に確定申告を行うことが可能であるが、中古物件の購入、リフォーム工事費についての減税についてはその契約、発注時から減税についてアドバイスを受けられる関係業者かどうかで後に制度を利用できない可能性も否定できない。

確定申告の手順もおさえておこう

確定申告はその年度の1月1日から12月31日までに得た所得を計算し税務署に申告することである。所得税額を確定する税務処理のことをいう。会社員では個人で確定申告をする機会がないため、手続きに戸惑う人が多い。

いざとなって慌てることのないよう、手続きの理解と準備は欠かせない申告である。また初年度に確定申告を行っておけば、住宅ローン減税では翌年から年末調整で対応してもらえるためきっちりと間違いのないように申告しておきたい。

  • 確定申告の期間は翌年2月16日~3月15日 申告の期間としては前年度分について翌年の2月16日から3月15日だが、住宅ローン減税等は還付申告であるため、年明けすぐの1月1日から5年間の期限で提出ができる。通常の期間は混雑が予想されるため、窓口へ相談しながら申告したい人は上記1ヵ月の期間以外に行うほうが得策であろう。

申告方法

居住地を管轄する税務署に確定申告書及び必要書類を持参するか、郵送で行う。またe-TAXを利用した電子申告も可能であるが複雑なため持参して不明確な点について相談した上で申告するほうが結果的に早道にもなる。基本的に土日は受け付けていないが、申告の時期には一部の税務署で日曜日にも特設会場を設置した相談や受け付を行っている。仕事の都合でどうしても平日に行けない場合は日曜日の窓口について調べてみるといいだろう。

【参考】国税庁・税務署の位置を調べる

必要書類

ここでは住宅ローン減税について会社員等、給与所得のある人が申請する場合の必要書類をまとめてみる

  • 確定申告書A
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅ローンの年末残高証明書
  • 源泉徴収票
  • 住民票の写し

これらはどの住宅の場合にも必要な書類であり、ケースによっては次の書類も必要となる

  • 家屋の登記事項証明書、請負契約書の写し、売買契約書の写し等(家屋の新築または新築家屋の購入のみの場合)
  • 敷地の登記事項証明書、売買契約書の写し等(家屋の敷地も住宅ローンの場合)
  • 耐震基準に適合した家屋である証明書(中古住宅の場合)
  • その他

マイナンバーに関する書類として(1)(2)のいずれか
(1)マイナンバー通知カード若しくはマイナンバーの記載された住民票の写しプラス、運転免許証・パスポート等
(2)マイナンバーカード

申告書の作成と提出方法

申告書を作成するのは慣れていない人にはとても分かりづらい。個人のケースによって記入方法が変わってくるので、説明書を読みながらでも自身のケースがどれなのかということでまず悩む。その場合には次にあげる作成と提出の方法がある。

管轄税務署の相談窓口で作成して提出する

適切に作成できたかどうかが不安な場合はe-TAXによる電子申請や郵送による申請では結局不備があったときに二度手間となる。特設会場に出向くことができる人はその場で相談を受けながら作成することが手堅い。

先に自分で作成してみる

国税庁のサイトから申告書作成のページを開くと、申告書が入手できる。必要事項を入力することで自動計算された申告書を印刷することもできるし、手書きのほうがいい人は白紙を印刷し、自身で記入することで作成できる。出来上がった申告書と必要書類を持参するか郵送で提出することが可能だ。また税務署の特設会場にもパソコンが設置してあり、担当職員に相談しながら作成することも可能である。

還付金の受け取り方

還付金の受け取り方は預金口座への振込または郵便局での現金受け取りかを選べる。振込を選択する場合には申告書に指定の金融機関の口座を記入する。

郵便局での受け取りでは後日送られてくる通知書と身分証明書を持参して窓口で受け取る。

スムーズに手続きするためには

申告に不備があると何度も税務署とやり取りをしなくてはならない。電話や郵送でのやり取りでは結局スムーズにいかず、仕事を抜けて後から税務署に出向くというケースも少なくない。やはり初めて確定申告するという人は税務署の特設会場で手続きをするほうが良い。

必要書類についても準備に時間がかかるものも多い。借入残高証明書を紛失してしまったことに気付いたとしても金融機関に再発行の手続きをすればよいがやはり日数がかかる。

土地、建物の登記事項証明書の発行も土日では行っていない。郵送でのやり取りにはやはり日数がかかる。一般財団法人 民事法務協会の行う「登記情報提供サービス」を利用してインターネットで取り寄せることも可能であり、費用も手間も軽減される。

買い替えの場合の注意点

元の家を買い替えて次の家でローンを組むという購入方法の場合では他にも注意すべき点がある。 「3000万円控除」と「住宅ローン控除」の併用はできないからだ。元の家を売却した譲渡益について3000万円控除を受けてしまうと、住宅ローン控除は受けられない。必ずシミュレーションしていずれか一方、優位な方を選択しなくてはいけない。

シミュレーション
想定 2500万円で購入した住宅を3000万円で売却(費用は150万円)譲渡益350万円
ローン残高が1500万円
購入した家は 3500万円 1500万円を資金とし2000万円をローン

  • 3000万円控除を受けた場合
    売却益につき税額0円  ローン控除適用なし

  • 3000万円控除を受けない場合
    売却益350万円について 350万円×20.315%=約71万円 の税額を納付
    ローン控除を10年間受ける
    2000万円の年末の残高の1%を10年間(年限度額40万円)
    (*一般的な会社員年収500万円で子供二人専業主婦が扶養家族の世帯で所得税が約13万円住民税20万円と仮定すると) 2000万円×1%=20万円  初年度で13万円の控除+住民税7万円分の合計20万円が適用される。ローン残高は減少していくので実質的には10年間全てが20万円の減税ではないが長期間で元利均等払いが一般的な住宅ローンでは20万円×10年間に近い額の控除が見込めるだろう。3000万円控除で71万円の税金を支払ってしまい、ローン控除を受けたほうが節税効果も大きくなる可能性が高い。

マイホームの購入資金の贈与を受ける場合

また住宅取得についての一部資金を親などから贈与を受けた場合も、ローン額そのままが控除の対象とならないことがある点に注意したい。

例:3000万円の家を購入する。諸経費や引越費用など込みで3300万円かかるので親から500万円の資金贈与を受け、2800万円のローンを組んだとする。しかしこの場合、2800万円の借入金額としてローン控除は受けらえない。家の価格3000万円から贈与額500万円を引いた2500万円がその対象額と算定されてしまう。

このような場合は500万円の贈与を一括に受けるのではなく、住宅資金として認められている200万円と通常贈与として認められている110万円を先に受けることで自身が組む2800万円のローンが借入総額として計算される(引っ越しにかかる費用などは次年度に別で受けるようにするなどの考慮が必要ではあるが)。

マイホームに関係する所得税減額制度。それを受けるために必要な確定申告はとにかく複雑である。これに加え、固定資産税や登録免許税の軽減措置についても取りこぼしのないように理解しておきたいた。これから購入を考えている人、また既に購入し2018年に確定申告を予定している人の参考になれば幸いである。(片岡美穂、行政書士、元土地家屋調査士)