厚生労働省が7月12日に発表した2015年の国民生活基礎調査結果によると、1世帯あたりの平均年収は541万9000円となった。前年比2.5%アップ、3年ぶりの増加になる。その一方で生活が「苦しい」と感じる世帯は全体の60.3%を占め、依然として経済状況は厳しいのが現実だ。

子ども(18歳未満)のいる世帯の平均年収は2.4%アップの712万9000円だが、63.5%が「苦しい」と回答している。年収が少なければ苦しいと感じる世帯も多いだろうが、その割合が6割以上ということは、平均的な収入があっても苦しいということだ。子育て世代は、なぜそんなにも厳しいのだろうか。

平均値と実態を表す中央値の違いに注目

同調査によれば、子どもがいる世帯は全体の23.5%。一般的に収入が少ない高齢者世帯や単身世帯の増加により、全世帯平均の年収額を下げているが、子どものいる世帯だけを見れば、一部の高額所得者が平均を押し上げている。

そこで注目すべきが中央値だ。平均値が単純に全世帯の年収合計を世帯数で割ったものであるのに対し、中央値は全体のちょうど真ん中を示しており、その上下に同じ数の世帯がある。この中央値が633万円だ。実態は平均値よりもぐっと少ない金額なのだ。

表を見ていただくと、中央値を含む年収額600万から700万円未満の世帯が11.7%で確かに多い。そして400万から800万円未満まで100万円刻みで同程度の世帯がある。

一方、所得が1000万円以上の世帯が18.6%であることも重要である。この割合は徐々に増えており、まさに所得格差を表していると言えるだろう。

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平均年収では実感できないゆとりある生活

さらにサラリーマンの場合、給与の額面が年収712万円であっても、実際に受取れる金額は、所得税、住民税、社会保険料などが差し引かれたものだ。例えば、ボーナス別で月給45万円だとしても、手取りは約75~80%の35万円前後になる。源泉徴収だと負担感が薄くなるが社会保険料は上昇傾向であり、今後も超高齢化社会に向けて現役世代の負担は重くなっていかざるを得ない状況だ。

例えば手取り35万円として、住宅ローン返済15万円、食費8万円、光熱費2万円、通信費2万円を引くと残りは8万円。公立の小学校でも月平均2万5000円程度はかかることを考えると、贅沢していなくてもかなり厳しい家計だ。ボーナスで赤字の補填をして、ようやく乗り切れるギリギリのラインではないだろうか。

しかもこの手取り金額はここ数年、横ばい傾向が続いている。年齢の低い子どもであれば1年間で大きく成長し、食べる量は増え、興味の幅も広がる。その分費用もかかるので、前年と同じ収入では生活の満足度は下がってしまうのだ。

教育費の家計負担が重くのしかかる日本の教育事情

子どもに十分な教育を受けさせてやりたいと、親であれば誰もが思うのではないだろうか。しかしそのためには家計から多くの出費をしなくてはならないのが現実だ。

都心部では私立中学校に進学する子どもが増えている。そのため公立中学校の中には生徒数が少なくなって統廃合される学校もあり、ますます中学受験の傾向に拍車をかけている状態だ。受験のためには小学4年生くらいから塾に通い始めることが多い。費用は授業内容や授業内容によって大きく異なるが、平成26年度文部科学省調べによると世帯の年収金額によっても大きな差ができている。

この調査によれば、子育て世代の平均年収が含まれる600万から799万円の世帯が支出する金額と、1000万円以上の世帯の支出金額では倍近い差がある。このように偏りの大きい状況では、一部の高額所得者を除き、ほとんどの世帯で不満を抱えることになるだろう。

大学進学もまた、家計からの支出割合が大きい。世界の主要国と比べてみても、公的資金で賄われているのは米国と並んで非常に少ない。しかも、2000年に比べて2012年はさらに少なくなっている。教育への公的資金負担を増やしている米国とは逆の傾向である。

マネープランを立てて、教育にいくら費やせるのかを見極める必要

では、どうすればよいのだろうか。まず大切なのは優先順位を決めることだ。いいと思ったことを手当たり次第にしていては収入がいくらあっても足りない。マネープランを立てて、教育にいくら費やせるのかを見極めつつ、塾や習い事を厳選したい。

子ども本人にも年齢に合った言葉で説明することで、本当にしたいことは何かをしっかり考える習慣が身につけば、それもまた教育になる。また、教育資金準備のために、貯蓄だけではなく投資を検討するのもよいだろう。子ども名義でジュニアNISAを始めるのも将来が楽しみだ。税金が優遇される上リターンを見込めるし、子どもにマネー教育もできて一石二鳥ではないだろうか。

タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)36歳の時に2人の子をつれて離婚し、大手生命保険会社に営業として就職。そ の後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを発症。現在はがんとお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録FP

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