本記事は、前川 孝雄氏の著書『「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる: 上司も部下も幸せになるマネジメントの極意』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

都市を眺めるビジネスパーソンのグループの後ろ姿
(画像=etamorworks / stock.adobe.com)

働きがいを育む上司力とは

上司の仕事は、1人ではできない組織成果を出すこと

私は前職「リクナビ」編集長時代の2006年に『上司力トレーニング』(ダイヤモンド社)を出版、2008年にFeelWorkを創業してからは、日本を代表する大手企業を中心に500以上の企業・団体で「上司力®研修」を開講してきました。

さらに広くそのコンセプトを伝えるべく、約40冊の書籍発行、累計2,000回を超える講演、テレビ・ラジオなどへの出演、新聞・雑誌・WEBメディアなどへの連載も多数実施してきました。その営みが評価され、「上司力®」はFeelWorksの登録商標となっています。

私は上司力をこう定義しています。

「部下1人ひとりの持ち味を踏まえて仕事を任せ、育て活かし、共通の目的に向かう組織の力を高め、個人では達成できない結果を導きだす力」

人材育成においては、日々部下のマネジメントにあたる上司の役割が要です。上司にとっては、自分が動くことが仕事ではありません。人を動かし組織を動かすこと、すなわち上司の働きかけで部下全員が活躍し、連携することでチームが一丸となり、個人の力だけでは成し得ない大きな成果を生み出すことこれが上司の仕事の神髄なのです。

上司は、部下1人ひとりの意欲と可能性を信じ、その持ち味が強みとなり開花できるようバックアップすること。すなわち「管理職」ではなく「支援職」であると自覚しましょう

上司の本来の役割は、部下に指示命令をして従わせることではなく、部下が自律的に働ける環境を整え、一人ひとりが働きがいを感じながら成長・活躍する伴走者だと心得ることです。

現場で人が育つ3つのステップ

私は、人が仕事を通して成長するには、3つのステップがあると考えています。

ステップ① 「任される」

「任される」の中には、次の4つのプロセス「上司から伝えられた仕事の目的に納得する」「『あなただからこそ任せた』と動機づけられる」「部下自身が仕事の目標(「3割ストレッチの法則」が反映されること)と計画を表明する」「上司に提案して相談の上、承認を得る」を含みます。

ステップ② 「やり遂げる」

任された仕事の主体者は部下自身ですから、その達成責任も部下が担うものです。難しい局面が出てきても、途中で投げ出させてはいけません。部下自身が創意工夫し、周囲を巻き込む努力を重ねながら、自分で最後までやり遂げることが肝要。

上司は、そのよき相談相手になることです。

ステップ③ 「振り返る」

期間内に目標が達成できることもあれば、仕事にはアクシデントがつきものですから、未達に終わることもあるでしょう。しかしこの業績評価を受ける期間はあくまで節目です部下の成長や活躍はその後も期待できるもの。

ゆえに、上司と共に仕事の結果とプロセスを振り返ることが、さらなる飛躍や挽回へとつながります

上司による3つの支援

この部下にとっての「3つのステップ」を上司側から見ると、「任せる」「応援する」「内省させる」という「3つの支援」になります。上司は部下を育て活かすために、「3つのステップ」すべてに関わる必要があるのです。

支援① 「任せる」

長年多くの企業・団体で「上司力®研修」を開講してきて感じるのは、管理職の多くが、第1段階の「任せる」ことにつまずく傾向です。部下本人の実力より少し重い仕事を任せるのは勇気がいるからです。自分は本当に任せきれているかどうか、ぜひ振り返ってください。

支援② 「応援する」

任せた仕事の主体者は部下であり、上司の役割は応援し続けることです。仕事のプロセスでは、アクシデントが次々と起こるもの。経験値のある自分がやったほうが早いという考えが頭をよぎるかもしれませんが、決して部下の仕事を奪ってはいけません。

部下本人が打開策を考え行動できるよう導きましょう。部下が経験値の浅い仕事に悩んでいる時にも、安易に答えを教えることは避けましょう。部下自ら進め方や軌道修正に気づけるよう質問を投げかけたり、適切な人脈を紹介したりするなど、サポートすることです。

支援③ 「内省させる」

節目には、部下がやり遂げた仕事を有効に振り返れるよう、上司は部下に「内省させる」ことです。見通し以上の結果が出た場合に、単に「今期は上出来だったね」と伝えるだけでは、部下は学びを逃してしまいかねません。

「期初にあなたの役割と目的を確認し、一緒に目標を決めたね。今期の仕事について、どう思っている? プロセスには色々あったと思うけれど、まず自分自身で振り返ってほしい。うまくいった理由、難しかった理由を教えてくれるかな?」などと問いかけましょう。

内省させる上で重要な視点は、評価はあくまでも一時期の断面を表したものに過ぎないこと。部下の成長は続きます。成功要因や失敗要因を学習材料と自覚させて、次のチャレンジへどう向かっていくかを、部下自身に考えさせ腹落ちさせることです。

部下自身の成長への「3つのステップ」と、上司による「3つの支援」がうまく噛み合うことで、部下は働きがいを高めながら成長し続けられるのです。

「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる: 上司も部下も幸せになるマネジメントの極意
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
株式会社働きがい創造研究所会長
青山学院大学兼任講師
1966年、兵庫県明石市生まれ。
大阪公立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。
「上司力®」提唱の第一人者。株式会社リクルートで『リクナビ』『ケイコとマナブ』などの編集長を経て、2008年に株式会社FeelWorks創業。
「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げて、研修事業と出版事業を営む。30年以上一貫して、働く現場から見た上司や経営のあり方を探求している。「上司力®研修」等で500社以上を支援。著書は『本物の「上司力」』(大和出版、2020年)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ、2019年)、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所、2019年)ほか約40冊。

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「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる:
上司も部下も幸せになるマネジメントの極意
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