本記事は、前川 孝雄氏の著書『「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる: 上司も部下も幸せになるマネジメントの極意』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

ワークラライフバランスを考えるビジネスマン
(画像=たかす / stock.adobe.com)

「忙しくてやりたいことができない症候群」から脱しよう

部下への無関心さに気づいても「忙しくてできない」現実

私たちが開講する「上司力®研修」で、受講者に日々のマネジメント課題を聞くと、多く挙げられるのが部下の問題点です。「やる気がない」「主体性がない」「互いに協力しない」などなど。これをいかに解決するか。グループ討議で課題の真因を探り、対応策を協議してもらいます。

すると、どうやら自分たち上司の側が固定観念で部下を見ており、上司側の価値観ややり方を押しつけがちだったこと。また、部下の仕事の業績に関心はあれど、部下の気持ちや育成には無関心だったと気づきます。今後はもっと部下に寄り添い、思いを傾聴し、支援型マネジメントに変えなければと自覚するのです。

ところが、いざ部下一人ひとりの育成のために、面談、日々のマネジメントなどを実行しようとすると、「忙しくてできない」悩みにぶつかることが多いのです。

また、一般社員層対象の「キャリア研修」でも同様です。人生100年時代。自らのキャリアの棚卸しを行い、キャリアビジョンを考えていく中で、大切な気づきが生まれます。

日々のMUST(やらねばならない)の仕事に追われる「ライスワーク」のままではいけない。まずは自分がお役に立てるCAN(やれること)をしっかり見定めたライフワークに移行し、お役に立てることの積み重ねが働きがいとなり、究極の自分のWILL(やりたいこと)となるライクワークに昇華していくのだ、と。

「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる
(画像=「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる)

自律的なキャリアに向けた3ステップを自分なりにイメージして、行動に移すことが大切なのです(図10参照)。この気づきに、受講者の多くがワクワクし始めます。ところが、いざ行動に移そうとすると、実際には「忙しくて、できない」と嘆くことが多いのです。

たしかに日々の仕事は多忙です。管理職となればなおさらでしょう。ただ私は、多くの人が「忙しくて、やりたいことができない症候群」に陥っているのではないかと見ています。

繁忙時こそ見直したい、“仕事をしたつもり”になっていないか

世を見渡してみると、活躍される超多忙なビジネスパーソンほど、実はやりたいことを実現しているものです。例えば、星野リゾートの星野佳路代表。大好きなスキーの日程は、まず年間スケジュールの中で押さえ、最優先で敢行します。

その他、著名な経営者や政治家でも、自分にとって大切なリフレッシュや自己啓発の予定は優先して押さえ、隙間時間で日々実行している人は珍しくありません。

「忙しくて、できない」のは本当の理由なのか? 少し厳しく言えば、できない言い訳ではないのか? 本当はやらねばとわかっているのに、一歩踏み出す勇気がない。実行することの負荷に躊躇し、できない理由をつくってはいないか?

自身に問うてみてほしいのです。「自分はこれまで、本当にやりたいことで、忙しい仕事や生活の時間を割いてでも、やってきたことはなかったのか」と。誰もがそれぞれに思い当たるものです。自分の「やるべきこと」や「やりたいこと」が明確になったのに、「忙しくて、できない」というのは、実は自分の中で優先順位を下げているだけ。本気度と覚悟が足りないだけだと、気づくのです。

私たちは、忙しい毎日に追われていると、本来の仕事の目的に立ち返って考えたり、目的達成のための創意工夫を疎かにしたりしがちです。目の前の仕事をこなすことで、つい「仕事をしたつもり」になってしまうのです。本当に自分の大切な時間を割くべき仕事なのか、真に顧客や社会への貢献になっているのか。常に、内省する必要があるのです。

ゴールから逆算し、自分の時間を予約し職場でも共有すること

内省して得た「やるべきこと」「やりたいこと」を、いかに行動につなげるか。それには、自分のスケジュールにまず必要な時間をしっかりと書き込むことです。私も同様のスケジュール管理を実践していますが、働きがいあるキャリア形成のための時間を先に確保してしまうのです。管理職やミドル層であれば、若手以上に自分の時間が最も貴重な資源だと心得て、有効活用しましょう。

まず自分が本当にやりたいこと、目指すキャリアビジョンなどを見据えたゴールイメージを定めましょう。その上で到達したいゴールから逆算して、どの時点で、どんな内容で、どれだけの時間を費やすかを決めて、あらかじめ自分自身に予約するのです。

誰しも、自分が出るべき会議や出張など、他者と関わる予定はスケジュール表に記入します。しかしそれだけではなく、自分1人で行いたいこともスケジュール表に書き込み、大切なゴールへのプロセスを具体的な時間に落としておくのです。これを前提に、日常的に行うべき仕事時間もやりくりしていきます。

さらに、このスケジュールは職場で共有しておきましょう部下や同僚に、あなたの予約済みの時間を除き仕事のスケジュールを調整してもらうためです。

こうすることで、忙しい中でも自分にとって本当に大切なこと、真にやりたいことを着実に進めて、働きがいあるキャリアを育めるのです。

「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる: 上司も部下も幸せになるマネジメントの極意
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
株式会社働きがい創造研究所会長
青山学院大学兼任講師
1966年、兵庫県明石市生まれ。
大阪公立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。
「上司力®」提唱の第一人者。株式会社リクルートで『リクナビ』『ケイコとマナブ』などの編集長を経て、2008年に株式会社FeelWorks創業。
「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げて、研修事業と出版事業を営む。30年以上一貫して、働く現場から見た上司や経営のあり方を探求している。「上司力®研修」等で500社以上を支援。著書は『本物の「上司力」』(大和出版、2020年)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ、2019年)、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所、2019年)ほか約40冊。

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