本記事は、前川 孝雄氏の著書『「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる: 上司も部下も幸せになるマネジメントの極意』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

仲のいい会社員
(画像=siro46 / stock.adobe.com)

職場ぐるみで心理的安全性をつくり育もう

心理的安全性は上司と部下が職場ぐるみでつくるもの

そもそも、どうすればメンタル不調者が出ない職場にすることができるのでしょうか。それには、心理的安全性の高い職場をつくることが大切です。心理的安全性は、もっぱら経営者や上司が社員のために確保すべきものとして語られます。それも重要ですが、社員一人ひとりの心がけも含め、職場ぐるみで取り組むことが不可欠です。

自ら心理的安全性をつくるには、5つの習慣を身につけることから始めましょう。

習慣① 開口一番の肯定語活用

仕事が思うに任せず、不本意な状況に至ると、真っ先に否定的な発言をしがちです。相手の意見に疑問や反発を覚えると、つい「でも」「しかし」と反論したくなります。これでは相手は頭から否定されたと受け取ります。

また、否定語ばかりを発していると悪感情が増幅し、自分もますますネガティブ思考になり、対立を深める悪循環に陥ります。そして、否定語が多い人からは人心も離れ、協力者も減っていくでしょう。

とはいえ、自身の反論を封じるばかりも本意ではないでしょう。そこでお勧めは、開口一番の否定語は控えること。第一声は「なるほど、そう感じたんだね」「そういう考え方も理解できるよ」など、肯定的に応じる口癖を身につけましょう。まずは相手を認めた上で、自分の意見を述べるのが望ましい順序です。

習慣② 見えない未来を楽しむ

不透明な将来に不安が漂う現代。大学の教え子たちからも「将来が見えないから不安」との声を多く聞きます。しかし、「20代のあなたが、数十年後の自分の姿をすべて知ることができたら幸せだろうか?」と問うと、否と答えます。

すでに結果が見えてしまった未来を歩むだけの人生など、楽しいはずがありません。若者のみならず、今日は誰にとっても、これからの人生で最も若い日。日々様々な出会いがあり、想定外の未来が切り拓かれていくものです。

これから何が起こるかわからないからこそ、ワクワクするのです。ミステリーツアーに参加して予期せぬ景色に感動したり、誕生祝いのサプライズ・プレゼントに驚きと喜びを感じるのと同じです。

見えない未来だからこそ楽しみととらえ、自らチャレンジし続ける習慣を身につけることです。

習慣③ スキルとしての笑顔を

「笑顔は性格ではなくスキルです」。これは私が敬愛する経営者の1人、株式会社日本レーザーの近藤宣之会長の言葉です。自ら常に笑顔でいようと決め、日頃から意識して口角を上げ、笑顔をつくる習慣を心がけているとのこと。そのポジティブな感情が周囲に伝播し、巡り巡って自分にも良い反応が返ってきて、良好な人間関係が形成されるのです。

皆さんは日々の仕事やマネジメントに追われ、無意識に渋面になっていませんか?楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなるのです。

習慣④ 「ありがとう」を口癖にする

被害者意識で不満や愚痴ばかりを口にしていると、その瞬間はすっきりするかもしれませんが、周囲にいる人を不愉快にし、徐々に自分自身も後ろ向きな感情に陥ることになります。大切なのは、不満より感謝。人から受けた小さな配慮や親切を流してしまうことなく、明るく「ありがとう」と感謝の念を伝えるように心がけましょう。

笑顔での感謝の言葉は相手の心に響き、好印象を与えます。「感謝した人々は、そうでない人々よりも幸福で、否定的な感情や結果の影響を受けにくい」とは、「Gの法則」を唱えたアメリカの心理学者ロバート・A・エモンズ氏の言葉。“感謝は人のためならず”です。自他ともに幸福にする口癖として、身につけましょう。

習慣⑤ ポジティブな人とつき合う

SNS上では、匿名のネガティブな書き込みが数多くみられます。それらばかりを読んでいると、自分もネガティティブな思考にとらわれてしまいます。人とのつき合いでも、他責で人のせいにばかりする人たちとグループになり一緒にいると、同じ心理に染まってしまうものです。よって、意識的にポジティブな考えや発言の人とつき合うことです。

たとえ若手社員であっても、自らがポジティブな思考や発言を心がけることで、職場を前向きに変えていくことはできるのです。

以上、“自ら心理的安全性をつくる5つの習慣”をご紹介しました。
上司の皆さんは、部下への習慣づけを促すためにも、まず自分自身が身につけ、率先垂範を心がけてください。

「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる: 上司も部下も幸せになるマネジメントの極意
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
株式会社働きがい創造研究所会長
青山学院大学兼任講師
1966年、兵庫県明石市生まれ。
大阪公立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。
「上司力®」提唱の第一人者。株式会社リクルートで『リクナビ』『ケイコとマナブ』などの編集長を経て、2008年に株式会社FeelWorks創業。
「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げて、研修事業と出版事業を営む。30年以上一貫して、働く現場から見た上司や経営のあり方を探求している。「上司力®研修」等で500社以上を支援。著書は『本物の「上司力」』(大和出版、2020年)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ、2019年)、『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所、2019年)ほか約40冊。

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「働きがい改革」に本気の上司がチームを覚醒させる:
上司も部下も幸せになるマネジメントの極意
  1. 部下が自ら育つ、働きがいを育む「上司力」の3ステップ
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