「この保険はダメです」
「こんなに多くの保険に加入する必要はありませんよ」

そんな切り口から、FP(ファイナンシャルプランナー)が保険の見直しを提案するのは良くあることだ。だが、FPであっても、ほとんど語られることのない「保険の秘密」がある。

保険とは銀行や保険会社、監督官庁のそれぞれの既得権と利益のせめぎ合いのなかで成り立っている摩訶不思議な金融商品なのだ。そこにこそ、消費者を無視した不合理が隠れている。

生命保険会社の「最後の砦」

多くのFPは保険の商品内容や適正な保険金額という視点からアドバイスを行っている。彼らの主張に間違いはない。だが、私はFPの多くが同じ視点からしか問題を捉えようとしない点が「問題」だと思っている。もっと伝えるべき重要なことがあるはずだ。

生命保険にはFPが指摘しない利権がある。
それは「構成員ルール」と呼ばれる業界規則だ。

銀行の保険窓販を巡っては、最終的に全面解禁が認められた。それまで「保険会社でしか」販売できなかった生命保険を銀行窓口で販売できるようになれば、どうなるか。保険会社にとって少なからず痛手となることは察しがつくだろう。保険会社のビジネスモデルの根幹にかかわるといっても過言ではなかった。

ところが、それでも生命保険会社には最後の砦があった。それが「構成員ルール」なのだ。

セールスレディが握る「職域マーケット」

「構成員ルール」によって、グループ企業内の保険代理店は自社や関係会社の従業員に対し生命保険を販売することを原則として禁止している。企業が社員に対し不当な圧力をかけて保険加入を無理強いすることを防止するためだ。

ほとんどの銀行はグループ企業に保険代理店を擁している。しかし、このルールがあるために、銀行のグループ企業の従業員は生命保険を自社の代理店ではなく、保険会社の営業員から購入しなければならない。

たとえば、私が「この保険はとてもいい保険だ。ぜひ契約したい」と考えても自分が勤務する銀行の窓口でその保険を契約することはできない。さらに、たまたま窓口へやって来たお客様が自分の銀行のグループ企業に勤務している場合も保険を販売することはできない。保険会社の営業担当者から直接その保険を購入してもらうことになる。

上述した銀行が直接販売に手を出せない「職域マーケット」は保険会社にとって最も重要といって良い。昔ながらの保険のセールスレディがこの「職域マーケット」をいまでもガッチリと握っているのだ。職域マーケットは保険会社にとって、文字通り「聖域」と言える。

「職域マーケット」は銀行だけではない

ところで、四季報で銀行の主要な株主をチェックしてみると実に興味深い事実が見えてくる。銀行の主要株主は生命保険会社で占められているのだ。

生命保険会社と密接に結びついているのは銀行だけではない。大手の生命保険会社であれば年間何兆円という保険料が入り、それを運用する必要があるのだが、その資金の一部は株式投資に向けられる。

上場企業にとって生命保険会社に株を買ってもらい安定株主になってもらうことは望ましいことである。保険会社のセールスレディがお昼休みに「職域セールス」を行うことを認めるくらいお安いものだ。

そのFPの「保険の知識」は本物ですか?

私はFPという人たちを信用することができない。いや、少なくとも彼らの話を聞いても何の役にも立たない。なぜなら、銀行員の私から見て、彼らの多くは素人だからだ。

そもそも医師免許がない人間は医師を名乗ったり、医療行為を行うことはできない。税理士の資格のない人間が個別に具体的な税金の計算を行い、節税の指南を行うことも許されない。

しかし、FPは「一般名称」であり、それを名乗るのに何の資格も必要ない。たとえ試験に合格しなくても、誰でもFPを名乗ることはできる。金融知識のない人間がFPを名乗って起業しても、法的にはまったく問題がないのだ。

「悪質なFP」「名ばかりFP」がターゲットにするのは、自分たちよりも金融リテラシーの低い消費者である。無料相談などと言いながら、消費者の「将来への不安」「恐怖心」をあおり、高額の保険商品の契約へと誘導する……そんなFPが実際に存在するのだ。

「悪質なFP」「名ばかりFP」は百害あって一理なし。日本国民の財産を食い物にする彼らを社会から一掃しなければならない。そのためには、あなた自身が金融リテラシーを高める努力を怠ってはならないのだ。

あなたがFPに保険の見直しについて相談する際、試しに質問してみるがよい「構成員ルールって何ですか?」と。そのFPが明確に回答できたのなら、保険について相当の知見を有していると考えて良いだろう。(或る銀行員)

◇月々の保険料を考え直したい方は、まずは保険選びのプロに無料相談するのがおすすめ
>>保険見直し本舗の公式ページはこちら

【関連記事】
コープ共済はどんな保険?生命保険との違いやメリット・デメリットを解説
「保険代理店」は何をしてくれるのか? なぜあるのか? 業界構造やビジネスモデル
ペット保険は本当に必要なのか?治療費の統計データから飼い主目線で徹底検証
日本人の貯金と投資の割合は?ビジネスパーソンの約4割が資産運用を実践
厚生年金基金とは?厚生年金と何が違うの?