かつては、バイクに乗ってツーリングに出かけるのは20代・30代の若者が多いイメージでした。しかし、時は流れ、最近では中高年バイカーの姿が目立つ傾向です。この中高年ユーザー向けに高額なバイクが続々発表。また、高所得者がレンタルでバイクを楽しむ傾向など最新事情を紹介します。

バイカーの平均年齢は52.4歳!年々高まる傾向

(写真=PIXTA)

中高年バイカーの割合は、どの程度いるのでしょうか?一般社団法人自動車工業会が公表した「2017年度二輪車市場動向調査」によると、2017年度のバイクの購入者で最も占める割合が多いのは50代(28%)でした。次いで60代が23%、40代は20%と40代以上の中高年だけで7割以上を占めていることがわかります。

一方、同年度の20代は6%、30代9%と中高年よりも大幅に下回っており、20代にいたっては70代以上の11%よりも下回っています。また、男女比では圧倒的に男性の方が多く2017年度の女性比率は21%です。男性のバイク購入平均年齢を見ると、下記のように右肩上がりになっていることが分かります。

・2011年度:49.5歳
・2013年度:51.3歳
・2015年度:52.1歳
・2017年度:52.4歳

この調査結果から、若者のバイク離れの深刻化する流れと中高年のバイク所有者の増加が確認できます。

中型・大型バイクは「趣味・レジャー」の用途が多い

バイクは、車と比べると小回りが利き置き場に困るケースが少ないため、「手軽な移動手段に利用されている」という印象が強い傾向です。ユーザー傾向は、長期的な高齢化が進んでいて若いユーザーの減少が顕著ですが、長期的な高齢化は二輪車(バイク)の使用用途に何か変化を及ぼしているのでしょうか?

二輪車の主な使用用途の調査では、「通勤・通学で会社・学校まで」と回答した人の割合が30%と最も多く、次いで「買い物・用足し」が22%を占めています。スクーター(126cc未満)は、通学・通勤・日常の買い物だけで7~8割を占めており、使用日数や走行距離の減少など、二輪車に乗る機会が全体的に減っているといえるでしょう。

一方、原付第一種(50cc以下)を除くオンロードとオフロードは「ツーリング」「趣味・レジャー」の占める割合が多くなっています。これらの傾向を考えると、バイクは若者が楽しむ物というよりも時間やお金に比較的余裕のある中高年が楽しむ物に変わりつつあるといえるでしょう。

見た目は往年の名車、中身は最新鋭の「ネオレトロ」が人気

バイクが時間やお金に比較的余裕のある中高年が楽しむ物に変わりつつある状況を各メーカーも把握しており、主役世代に向けた新型車の発表が相次いでいます。例えば、スズキが新型車として発表した「KATANA(カタナ)」もそのうちの1台です。KATANAは、1980年にカウル付きの大型バイク「GSX1100S KATANA」という日本刀をモチーフにしたデザインで注目された名車。

2000年のファイナルエディションを最後に販売が終了しました。その結果、2019年現在は新車が手に入らないため、新車販売時よりも高いプレミア価格で取引される例もあります。そのKATANAがスポーツバイクの「GSX-S1000」をベースに、最新機能を備えてカムバックしました。最近は、このような古いバイクではあるものの、最新機能を備えることで安全性能も高くなった「ネオレトロ」と呼ばれるシリーズが人気を集めています。

カワサキ(川崎重工業)も2018年7月1日に、伝説の名車「Z1」のネオレトロ車として「Z900RS」を発売して注目を集めました。販売当時には名車に強い憧れを抱いたものの、経済的な事情や結婚、育児などを理由に購入できなかった人たちが、時間とお金に余裕が出る中高年になって購入にいたるケースもあるようです。

バイクで人気があるのはネオレトロだけではありません。カワサキは、「Ninja H2 CARBON」という新しいモデルの発売を2019年7月1日に予定しています。最新の電子制御に馬力の大幅アップなど、現在の技術を搭載した1台ですが、価格は356万4,000円(税込み)と高額です。「ここまで高額だと買い手が現れにくいのでは?」と感じる人もいるかもしれませんが、中高年から多く発注を集めているのが現状のようです。

また、イタリアの高級スポーツバイクを手掛けるドゥカティ(DUCATI)も「Panigale(パニガーレ) V4 R」を発表しています。こちらもスーパーバイク世界選手権のベースとなったモデルに最新技術を搭載しており、価格は455万円(税込み)と高額です。また、カワサキのZ1・Z2をはじめ旧車人気も高まっています。

旧車を購入してレストア(新車に近い状態に回復)する中高年も増えており、絶版となった部品の再販が決定するなど、中高年がバイク市場を大きく盛り上げています。

年収1,000万円以上の利用者が多い?レンタルバイク

ここまで、中高年がバイク市場を大きく盛り上げていることを紹介してきましたが、中高年だけがバイク市場を盛り上げているわけではありません。女性や若者もバイク市場を盛り上げています。すでにご紹介した「2017年度二輪車市場動向調査」の二輪車使用者比率では、保有車のみの使用であるユーザーが60%に対し、レンタルを活用しているユーザーは36%、保有とレンタルの併用が5%です。

レンタルを活用しているユーザーを細分化すると、保有しながらレンタルを併用しているユーザーは5%、レンタルのみのユーザーは36%。レンタルユーザーの内訳を見てみると、女性が約2割、10~30代の若者で約3割となっており、中高年とは違う形でバイク市場を盛り上げています。また、「年収1,000万円以上」のレンタルユーザーが内訳の中で24%を占めています。

つまり、レンタルユーザーの約4分の1が年収1,000万円以上ということになります。「高所得者なら、レンタルよりも購入した方が良いのでは?」と感じる人も多いかもしれません。しかし、都市部では駐輪場が狭いなどの理由で、「購入しても大型バイクを止めるスペースを十分に確保できない」という問題を抱えています。

そのため、年収1,000万円以上の人でもバイクを購入して保有するのではなく、「乗りたいときにレンタルする」という選択肢が増加傾向といえるでしょう。大型バイクで人気のあるハーレーダビットソンも、全国の店舗で2018年にレンタルを開始しています。「バイクをレンタルすると、コストが高くついてしまうのでは?」と気になっている人も多いかもしれません。

全国でレンタルバイクを展開する「レンタル819」の料金表を見ると、基本料金と車両保険(任意)、オプション用品(任意)でバイクをレンタルできます。例えば、新車価格130万円台のホンダCB1100を8時間レンタルして、1日の車両保険とヘルメットを着けた場合には1万9,100円です。基本料金は、バイクのクラスで分かれています。(P-1~P-8の8段階、ホンダCB1100はP-5クラス)

最も高いP-8クラスを1日借りても基本料金は、2万9,900円と比較的安価にレンタル可能です。購入する際にかかる本体費用、車検費用や駐車場を借りる費用などのランニングコストを考えると、「バイクに興味はあるものの条件面で利用できない」人でも、気軽にバイクに乗りやすくなるでしょう。

要注意!東京都内では交通死亡事故の約3割がバイク

これまでは、中高年男性がバイクに回帰する流れを中心に解説してきました。しかし、中高年のバイク利用社の増加と同時にバイク事故も増えている事実にも目を向けておきましょう。警視庁によると、2018年に全国で発生した交通死亡事故のうち、17.4 %(東京都内では 30.8 %)を二輪車が占めています。

中高年ライダーは、年齢による体力の衰えがあるだけでなく、「バイク事故はそもそもケガに直結しやすい」ということを再認識することが必要です。例えば、長袖と長ズボン、グローブなどの転倒した際に身体を守ってくれる安全装備は必須といえます。急な天候の変化によるリスクを抑えるためにも、雨や霧でも曇りにくいシールドやレインコートを常備しておくなど、万全な安全装備を心がけましょう。(提供:Wealth Lounge

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