(本記事は、谷本真由美氏の著書『世界のニュースを日本人は何も知らない』ワニブックスの中から一部を抜粋・編集しています)
日本の「トップニュース」に外国人は驚いている
外国人あるいは海外滞在歴の長い日本人にとって日本で驚くことのひとつが、テレビや新聞で報道されるニュースが他の先進国とはずいぶん違うということです。
昨今、北米でも欧州でもシリアの紛争が夜のニュースのトップを飾ったり、新聞で大きく取り上げられたりすることが当たり前になっています。中東の情勢が自国の通貨やビジネスに大きく影響するからです。
また石油を輸入している国にとってシリアの情勢は大変シビアな問題でもあります。
自分の生活や仕事に大きく影響しますから、こういった国際的なトピックにもアンテナを張る人が非常に多いわけです。
このような国際的なニュースを常にチェックすることは国際政治オタクだからでは決してなく、自分たちの生活にかかわることゆえのきわめて当たり前のことなのです。
ところが日本のテレビや新聞ときたらどうでしょうか。
驚くべきことに、日本ではこういった国際ニュースはマイナーな扱いで、公共放送のNHKやクオリティペーパーと呼ばれる大手一流新聞でさえ、次のようなトピックがトップニュースとして掲載されている有様です。
・老人の車が暴走 ・あおり運転事件続発 ・崎陽軒シウマイが売り切れ ・ヒグマに襲われた ・オリンピック会場に下水垂れ流し
どうでしょうか。どれもよく流れているニュースばかりですね。
日本のテレビや新聞ではこのようなニュースがトップで報じられることが多いのですが、「ヒグマに襲われた」とか「皇室のメンバーの婚約者が親の借金について説明する」なんて、海外でいえばはっきりいってゴシップ新聞に載る程度のトピック。にもかかわらず、日本ではクオリティペーパーであっても、なぜかこういった内容がニュースとして大きく取り上げられてしまうのです。
では、他の先進国ではどうでしょうか。
ニューヨークシティのキングスカレッジでジャーナリズムを教えるポール・グラダーさんが、アメリカの経済誌「フォーブス」のウェブ版で、信頼性の高い新聞のランキングを発表しています。トップテンは以下のとおりで、ベスト3などは日本でも誰もが知っているメディアが並んでいます。
1 The New York Times(ニューヨーク・タイムズ) 2 The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル) 3 The Washington Post(ワシントン・ポスト) 4 BBC(ビー・ビー・シー) 5 The Economist(エコノミスト) 6 The New Yorker(ザ・ニューヨーカー) 7 The Associated Press,Reuters,Bloomberg News(AP通信、ロイターブルームバーグニュース通信社) 8 Foreign Affairs(フォーリン・アフェアーズ) 9 The Atlantic(アトランティック) 10 Politico(ポリティコ)
これらのメディアのリストはアメリカのものが中心ですから、そのほかにイギリスでクオリティペーパーと呼ばれる有名新聞も加えて内容をざっと見てみましょう。
・オピオイド危機でジョンソン&ジョンソンに判決 ・アマゾンの火災でブラジルが貿易交渉でEUを脅す ・レバノン大統領がイスラエルのドローン攻撃は宣戦布告と述べる ・クルド人戦闘員、トルコ国境から撤退 ・香港デモは天安門を思い起こさせる ・英中銀総裁Facebookの仮想通貨を議論 ・ハリー(日本では「ヘンリー」)王子のプライベートジェット利用への批判
いかがでしょうか。日本の新聞とはかなり内容がちがうことに驚いたかと思います。
アメリカとイギリスのクオリティペーパーのトップニュースには国内外の政治経済のトピックが多く、日本のようにスポーツ選手や芸能人の話題なんて一切登場しないし、ましてやラーメン屋やイノシシに関するニュースなんて出るはずもありません。そのようなトピックは「食」や「スポーツ」といった別セクションに掲載されるか、週末版についてくるおまけのミニ雑誌に掲載される程度です。
日本の感覚からするとたいへんお堅い内容だと思ったことでしょう。しかしアメリカやイギリスではこういった内容のニュースを読むことが当たり前なのです。
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