人生の三大資金をご存じですか。「教育資金」「住宅資金」、そして「老後資金」のことです。この中でも、「老後資金」は金額や期間の見通しを立てにくく、不安に思う人が多いものです。

生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査」でも、84.4%もの人が「老後生活に不安を感じる」と回答し、年金や貯蓄の不足など「経済面での不安」を挙げています。

今回は、老後資金を貯める方法についてくわしく解説します。

老後のための預貯金ってどれくらいしているの?

老後,貯金
(画像=japolia /stock.adobe.com)

自分の貯蓄額が多いのか少ないのか、知る機会はなかなかありませんよね。厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査の概況」によると、「貯蓄がある」と答えた世帯は80.3%で、世代別の「1世帯当たり平均貯蓄額」は次の通りです。

年代 平均貯蓄金額
29歳以下 154万8,000円
30~39歳 403万6,000円
40~49歳 652万円
50~59歳 1,049万6,000円
60~69歳 1,337万6,000円

この調査では、「貯蓄の目的」までは調べていません。世代によっては養育資金・教育資金、あるいは住宅購入資金のための貯蓄も含まれている可能性があります。

預貯金残高だけが貯蓄ではない

貯蓄と聞くと、真っ先に浮かぶのは「銀行預金」や「郵便局の貯金」などではないでしょうか。しかし、金融機関の残高だけが貯蓄ではありません。

例えば、「養老保険」や「個人年金保険」など、生きていることでお金が受け取れる保険も、貯蓄に含まれます。財形貯蓄や確定拠出年金なども、立派な貯蓄です。

老後の預貯金は2,000万円必要ってほんとうなの?

「老後のために2,000万円の貯蓄が必要」という話を、聞いたことがありますよね。これは、2019年に金融庁がまとめた報告書に「老後生活費は毎月平均5万円赤字、30年分で2,000万円が不足」という試算結果があったことに由来しています。

報告書のケースは、「高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)」が、毎月収入約21万円、支出約26万円の生活を送った場合の試算です。実際にいくら必要なのかは、モデルケースではなく「自分のケース」で考えることが重要です。

自分の老後預貯金がどの程度いるか試算する方法

老後は「65歳から」を目安に

老後のための貯蓄を考える前に、「老後」がいつから始まるのかを考えましょう。

それぞれに考え方はあるでしょうが、金銭的な見方をするときは「65歳」を目安にするといいでしょう。企業の定年退職年齢であり、公的年金の受給が始まる年齢でもあるからです。

では、老後はいつまで続くのでしょうか。2018年の簡易生命表によると、男性81.25年・女性87.32年が平均寿命となっています。また、100歳に到達した人は3万7,000人以上にもなります。「老後資金」を計算するときには、老後期間は65歳から30年ほど続くと仮定しておくとよいでしょう。

自分がもらえる年金金額を知る

必要資金を計算する前にまず、もらえる年金額について確認しましょう。

厚生労働省の「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、現在老齢年金を受給している人の平均月額は、厚生年金受給者が約14万円、国民年金受給者が約5万円です。

正確な金額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、現時点の加入状況による年金額の情報を提供しています。より正確には、一般的な情報や平均額ではなく、「自分のケース」を知っておきましょう。

なお、会社に勤めている人は現在、給与から健康保険料と介護保険料(40歳から)が天引きされています。定年退職後は、多くの場合国民健康保険に切り替えることになり、その保険料は介護保険料と共に年金額から天引き、もしくは別途振込が必要となることに注意しましょう。

老後を大まかに計算する方法

老後に不足するであろう金額を試算するには3つのステップを踏みましょう。

  1. 月々の年金額から生活費を差し引いて、どれぐらい不足があるのかを計算します。

「年金月額-老後生活費=(A)月々の過不足金額」

  1. ①で出した金額に、老後の月数をかけ合わせます。

「(A)過不足金額×12ヵ月×30年=(B)老後期間の過不足金額」

  1. 最後に、現在の貯蓄金額から②で試算した金額を引き算します。

「現在の貯蓄金額-(B)老後期間の過不足金額=(C)貯蓄が必要な金額」

この「貯蓄が必要な金額」が、今から老後までの間に準備しておくべき金額となります。

老後の生活費用はいくら?

老後の生活費をいくらに想定するかが重要です。「現在の生活費-老後不要になる出費=老後生活費」で、おおよその金額がわかります。

「老後不要になる出費」は、子どもの授業料や習い事などの教育費用、住宅ローンなどが挙げられます。不要になるタイミングと金額を把握しておきましょう。また、勤務スタイルによっては、現在の衣料費や交際費などが不要になる場合もあります。

老後不要になりそうな出費の中でも、「育ち盛りの子の食費」「出勤日の昼食代」など細かいものは、そのままにしておきましょう。老後の人間関係によって新たに生まれる交際費や、自分の習い事、孫のイベントなど、楽しみに使うお金に切り替えることができます。

今からできる老後の貯金方法を年代別に紹介

老後のために貯蓄が必要な金額がわかったら、世代に合った方法で老後資金を貯めましょう。40代・50代・60代では、それぞれ家計費における支出構成と老後までの時間が異なります。年代別に今からできる貯金方法を紹介します。

40代は先取り貯蓄でコツコツ貯めるのがおすすめ

40代は、子どもの成長に伴い授業料や塾代などが増加し、家計の大きな割合を教育費が占めている世代です。後半から50代にかけては、教育費で最も金額の大きい「大学進学費用」がかかるため、教育費用の積立も必要になってきます。

一方、仕事では責任ある役職に就く頃でもあり、妻の復職やパート開始を検討する家庭も多いことから、収入の増額も見込めるでしょう。

65歳になるまで約20年残っているため、少しずつ貯めていくことで不足分を補える可能性があります。例えば、先ほど計算した「(C)貯蓄が必要な金額」が1,000万円だった場合、「1,000万円÷(12ヵ月×20年=240ヵ月)=約4万2,000円」となります。さらに週単位で割ると、約1万円です。

いきなり大きな金額を目指すのではなく、継続できる金額をコツコツ積み重ねましょう。目標金額の半分程度でも、家計や教育費用を圧迫しない金額で行うのが長続きのコツです。金融機関の「自動積立サービス」や「定額自動入金サービス」などを利用して、先取り貯蓄しておくのがおすすめです。

50代は教育費負担が終わってから、ラストスパート

50代は、一般的に最も収入が高くなる時期ですが、ちょうど子どもの大学費用を支払っている世代でもあります。それを乗り切ってしまえば、子どもは独立し、一気に負担が軽減します。また、そろそろ住宅ローンが終わる世帯も出てくるでしょう。

学費負担中も、余剰を作り出せるのならばコツコツ貯金に回しましょう。学費負担が終わってから、学費同等分を貯蓄に回せば、1年で100万円ほど貯められます。65歳まで10年として、100万円×10年=1,000万円になります。

貯蓄は、40代同様に先取り貯蓄でよけておくことがおすすめですが、ある程度まとまったら定期預金口座に移しておくといいでしょう。

60代は収入がある期間を伸ばすのが鍵

60代は、前半と後半で大きく生活が変わります。「高年齢者雇用安定法」により65歳までの雇用機会は確保されています。その後は、意欲と機会があるのならば継続して働き、収入がある期間を延ばす方がおすすめです。

そろそろ「貯める」ではなく「つかう」ことにシフトチェンジする世代です。退職金や個人年金などを上手く組み込んで、ゆとりある生活を送りたいものです。

年金を増やす方法を検討する

自営業など、国民年金のみの人は年金だけでは心許ないかもしれません。「付加年金」や「国民年金基金」など、将来の年金額を増やす制度を検討するのもいいでしょう。

定期的に見直しながら老後に備えよう

老後資金のための貯蓄も必要ですが、今の生活を圧迫してしまっては意味がありません。必要な出費分は確保しつつ貯蓄に回す余剰を捻出できるように、ライフスタイルを定期的に見直しましょう。

老後資金形成は、「今」がいちばん早いタイミングです。将来のために、小さな一歩から始めましょう。

文・高田麗(ファイナンシャルプランナー)
国内保険会社で生命保険と損害保険の営業を兼務、外資保険会社では顧客相談室を経験。退職後は、保険についての「わからない。めんどうくさい」を少しでも解消できればと、保険・金融記事の執筆を開始。関心分野は、保険ジャンル全般(生保・損保・社保)や、生活に密着した金融サービスなど。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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