地方転職
(写真=PIXTA)

昨今、地域経済活性化のため、政府をはじめ各自治体や民間企業が様々な取り組みを行っており、その中の一つにUターン・Iターン転職の促進があります。

ところが、大都市圏在住の75%のビジネスパーソンが「地方転職に関する求人情報がない」と言っています。これは一体どういうことなのでしょうか。

地方転職とは

ここでいう地方転職とは、一都三県や京阪神などのいわゆる都市圏で現在就業中の方が、それ以外の各地域へ転職することを意味しています。

今回、現在大都市圏で就業している方が地方転職に対して、実際にどのようなイメージを持っているのかを聞いてみました。

地方転職に関する意識

まずアンケートの冒頭では、「地方で働くことやUターン・Iターンに興味があるか」を質問しています。その結果、「興味あり」と回答した方は55.2%と半数以上を占めました。

今回アンケートに回答した方の73%が一都三県か京阪神の出身ということでしたので、出身地に限らず都市圏出身の方でも、地方での就業に興味を持つ方が多いことがわかります。

また、「地方で働くことやUターン・Iターンに興味あり」と回答した理由として、最も多かったのは、「ストレスの少ない生活環境/子育て環境が期待できる」という回答で、二番目に多い回答が「職場環境が良い」でした。

都市圏では生活に便利な環境がそろっている反面、ストレスを感じる機会が増えてしまう面もあるのでしょう。特に30代、40代の方はそのような回答をした割合が高いという特徴が見られました。仕事で一定の経験を積み、次のキャリアを考えたときに、携わる仕事の内容だけでなく長く続けていける環境を求めている様子が伺えます。

一方で、地方へUターンする理由として最も多そうなイメージのある「地方に住む親族の病気や介護」という理由を選択した方は19.6%にとどまりました。今回のアンケート回答者には地方出身の方が少なかったため、このような結果になったと考えられます。

さらに、「地方で働くことやUターン・Iターンに興味なし」と回答された方も、条件次第では、地方転職に興味があるという結果も出ています。

その条件として一番多かった回答が「給与・処遇が今より良くなれば」でした。

地方転職で給与や処遇を良くすることは簡単ではないと思いますが、生活環境が変わると、食費や家賃などの生活に関わる支出額は都市圏での生活時とは変わってきます。一概に給与や処遇の額面だけで判断せず、各地域の生活等にかかる費用を考慮した実質的な生活の質についても考慮し、判断するのが良いでしょう。

このようなアンケート結果から、大都市圏で就業している多くの方が、条件次第で地方転職に興味を持っており、前向きにとらえていることがわかります。

地方転職に対する不安

多くの方が地方転職に興味を持っていることがわかりましたが、実際に行動されている方はまだまだ少ないのが現状です。

では、そういった地方転職に興味を持っている方が、実際に地方転職に踏み出せない背景にはどのような理由があるのでしょうか。

「地方で働くときの不安・懸念はどのようなことですか」という質問に対して、一番多かった理由は「給与・処遇が今より悪くなる」という理由で、次に多かった理由が「正社員の求人が少ない」という、どちらも雇用条件に関する不安です。

その他にも「やりたい仕事がない」「キャリアが活かせない」などの回答が続いています。

75%のビジネスパーソンが地方の求人情報がないと回答!

地方での雇用環境について、求人情報の情報源としてどのようなものがあるかという質問に対しては、53.1%の方が転職/求人サイト、22.3%の方が企業のHPと回答しました。やはり、インターネットを活用して情報を集めるのが一般的のようです。

続いて、「地方転職に関する求人情報をどの程度お持ちですか?」という質問をしたところ、75%もの方が「全くない」と回答されました。

最近では、転職/求人サイトでUターン特集等が組まれることもあり、地方活性化への取り組みが増えてきたとはいえ、まだほとんどの方には情報が伝わっていない状況が見えてきます。業界や各地域によっても、地方の求人情報の質・量には違いが出ています。

また地方転職となりますと、ご家族をお持ちの方などはタイミングも重要になってくると思いますが、多くの方は「仕事が見つかればいつでも」と考えているようです。

以上のことから、地方転職に対する不安や懸念というものは、具体的な求人情報や生活情報がなく、漠然としたイメージから発生しているのではないかと考えられます。

地方に対するイメージ

また、どの地域であれば働いてみたいと思うのかも質問してみました。人気の高かったエリア1位~3位は下記となりました。

【人気エリア ベスト3】
1位:九州・沖縄エリア
2位:東海エリア
3位:中国・四国エリア

人気1位の九州・沖縄エリアについて選んだ理由も伺ったところ、もっとも多かったのが「自然が豊かだから」という理由でした。やはり生活する中で、豊かな自然のある環境を望む方は多いようです。

他にも「発展が期待できるから」という理由を挙げた方が20代に多くみられました。特に福岡市などは国から戦略特区に指定され、企業の本社が福岡市に移るといった例も見られるようになっています。東京の一極集中を避ける新たな経済の中心としての活性化が期待されています。

また、一般的にUターンの理由として考えられる「出身地だから」という回答をした方が意外と少なかったことから、地元に戻るという理由以外での地方転職に対する興味の高さが改めてわかります。

地方転職について

最後に「あなたは、転職したいと思っていますか?」という質問をしたところ、現在、転職に対して前向きな考えを持っている方は60%にも上りました。

終身雇用や35歳転職限界説などの、これまで一般的と思われていた考え方は大きく変わってきています。自身の将来のキャリアを考えたときに、転職して環境を変えることを選択肢の一つとして持っている方は非常に増えています。

今後は、地方転職に関連した情報が増えていくことで、働く場所・地域についての考え方は変わっていくと思われます。必ずしも大都市圏に限らない、地方でも大都市圏と同様の成果を生み出し地域経済の活性化につなげよう、と考える方が増えていくのは自然の流れでしょう。

【1.地方で働くことに興味がありますか?】

【2.UターンやIターンに興味がありますか?】

【3.地方で働くことに興味がある理由】

【4.地方で働くことに興味を持つ条件】

【5.地方で働くときの不安・懸念はどのようなことですか?】

【6.地方に転職することを考えた場合、どのようなものが途方転職の情報源になると思いますか?】

【7.「地方転職に関する情報(求人情報)」をどの程度お持ちですか?】

【8.Uターン・Iターンするならいつの時期がいいと思いますか?】

【9.あなたがそのエリアを選んだ理由(九州・沖縄エリア)】

【10.あなたは、転職したいと思っていますか?】

【調査概要】
・調査期間:2016年3月4日(金)~2016年3月8日(火)
・有効回答数:1,000件
・対象者:一都三県(東京都/神奈川県/千葉県/埼玉県)、京阪神(京都府/大阪府/兵庫県)で就業されている方

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