(画像= ZUU online 編集部)
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全世界のハイブリッド車累計販売台数で100万台を達成したレクサス。2005年4月に同社初のハイブリッド車「RX400h」を発売して以来、約11年での到達である。

グローバルにブランド戦略を推進するレクサスであるが、一方で日本では「アンチレクサス」と呼ぶべき層も存在する。普通に考えれば、クルマの好みは人それぞれであり、興味がなければ無視すれば良いだけの話であるが、特にネット上では未だレクサスに辛辣な意見が目につく。これは欧米ではあまり見られない傾向でもある。

日本を代表する高級車ブランド……あなたはレクサスが好きですか?

レクサスは「トヨタのエンブレム」を代えただけ?

レクサスは、1989年に北米地域で高級車ブランドとして誕生した。2005年には日本にも逆輸入という形で上陸する。開設から約1年間の取り扱いはGS、IS、SCの3車種であった。

日本でのブランド展開は10年ほどに過ぎない。しかし、それ以前からレクサスは「トヨタブランド」の別の車名で国内に存在していた。1989〜2006年まで販売された高級セダンのセルシオ、1991〜2004年のアリスト、1998〜2005年のアルテッツァ、高級クーペのソアラなどだ。

これらトヨタ車は、レクサスの日本国内でのブランド展開に伴ってLS、GS、IS、SCと名前を変えることになる。もちろん、エンブレムも変更された。セルシオやソアラなど、一定数のファンを有していた車名が次々と消滅し、アルファベット2文字に変わってしまったのである。

車名も含め愛着を抱いていたファンとしては、やるせない気持ちになるのも無理はない。筆者がソアラのユーザーだったら、決して良い気分はしないだろう。率直に言ってユーザーへの配慮が足りなかったのではないかと思う。近年はクルマを単なる道具と見る風潮もあり、車名なんてどうでもいいと考える向きもあるだろうが、そうではないユーザーもたくさんいるのだ。

これでは、いくら高級車ブランドであることを喧伝しても、「レクサスはエンブレムを代えただけ」「中身はトヨタと同じ」と言われても仕方がない。喧伝すればするほど言葉が上滑りするだけで、逆効果とさえ思えてくる。そもそも国内でブランド展開する第一歩でソアラをはじめとする「旧トヨタ車」のユーザーを置き去りにしているのだ。

クルマ選びと恋愛は似たようなところがある

クルマづくりの技術に関しても、サービスに関しても、申し分ないように感じられるレクサス。インテリアやエクステリアの質感はもちろんのこと、目に見えない部品の精度までトヨタ車の上を行っていることは言うまでもない。しかし、それだけで高級車ブランドとして十分に認知されたと言えるのだろうか。

開発者のほとばしる情熱、思想、魂、ストーリーの結晶として完成した一台のクルマに、ユーザーが良い意味で「何か」を感じ、かけがえのない「価値」を見出すことができなければ高級車ブランドとして確固たる地歩を築くのは難しいのではないか。それを多くのユーザーと分かち合えるようになるまでには、やはり時間を要するのだろう。

「あばたもえくぼ」ということわざがあるが、クルマも恋愛と同じで一瞬にして相手の心を奪う者は、どんな髪型でも、どんなファッションでも人を惹きつける「何か」を持っている。心の底から「好きだ」と言わずにいられない感情に、理由など必要ない。答えは意外と単純なところにあるのだ。(モータージャーナリスト 高橋大介)