API
(写真=PIXTA)

金融とテクノロジーの融合で新たなサービスを提供するFinTechの分野で、新たな動きが活発化している。それは金融機関によるAPI(Application Programming Interface)の公開・活用だ。

FinTechのAPIといってもわかりにくいと思うので、実際どのようなものなのかを紹介しよう。

FinTech分野に新たな動き

代表例は日本のFinTechベンチャー、マネーフォワード社が提供する全自動家計簿アプリ「MoneyForward」だ。複数の金融関連サービスの情報を一元管理するもので、2,600近い金融機関に対応し、証券投資も含め各口座や電子マネーの残高が一目でわかる。また、ネットショッピングやクレジットカードの購入履歴なども一元管理しており、家計簿として使える便利なAPIだ。

当初は同社が独自展開していたが、2015年8月に住信SBIネット銀行が業務提携を発表、顧客向け自動家計簿サービス「マネーフォワード for 住信SBIネット銀行」の提供を皮切りに新サービスを順次展開する計画だ。また、10月にはみずほ銀行が無料対話アプリ「LINE」のAPIと連携し、預金残高や入出金明細が照会できるサービス「LINEでかんたん残高照会」を開始した。

これまで金融機関が自行の口座データを外部に提供するなど考えられなかったことだが、このような動きが活発化しているのは、国内市場の縮小に直面する金融機関が、収益拡大と業務効率化を狙っているためだ。

API公開は銀行の収益維持・拡大が狙い

みずほ銀行の提携発表の10日ほど前、経済産業省の肝いりで開催された「第1回 産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)」には金融関係者やFinTech企業が参加し、銀行のAPI公開に関する議論が盛り上がったという。

銀行と外部サービスとのAPI連携が進めば、新たな金融サービスが続々と登場するとの期待がその背景にある。これを後押しするのは、いうまでもなくスマートフォンやタブレットなどモバイルデバイスの普及だ。

API公開で小売りやサービスなど他の業態を取り込むことができれば、銀行にとって大きなビジネスチャンスになる。銀行はこれまで、新しいサービスを立ち上げようと思っても実施するまでには数年かかっていたが、APIを公開・活用すれば、FinTech企業と組んで新たなサービスを迅速に開発、リリースすることが可能になる。

このような盛り上がりのなか、2016年3月、三菱東京UFJ銀行は2015年に続き「Fintech Challenge」を開催した。 今回のテーマは「より身近で便利なIT×金融のサービスづくり」で、12チームがAPIプロトタイプのプレゼンテーションを行った。

いずれも先進的でユニークな技術で、「割り勘」をキャッシュレス化する「CHECK」や、小売店のレジ会計をなくす「Paytter」などがある。

「CHECK」は飲み会などの参加者からの集金と店舗への代金支払いをシステム上で完結させ、飲食店の店舗予約とも連動する。また「Paytter」では購入したい商品の画像をユーザーが店内で撮影して価格を確認、購入はボタンを押すだけでレジに行く必要はなく、代金は銀行口座から直接精算される。

安全性に対するユーザーの信頼獲得が重要

このようなAPIが実用化されてくると、気になるのはやはりセキュリティだ。

銀行が外部サービスとつながれば新たなセキュリティホールが生じる可能性がある。照会と資金移動の権限が分かれるのでセキュリティはかえって向上するという専門家もいるが、素人としてはやはり不安を感じる。万が一の場合の責任の所在、補償分担も明確に示すことが求められる。

ただ、いずれにせよ、この流れは止まらないだろう。FinTechの台頭によって、銀行は従来の業態から大きな転換を迫られつつある。それは個人向け業務にとどまらない。積極的に取り組まなければ市場から取り残されるだけだ。(提供: 百計オンライン

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