本記事は、上林 周平氏の著書『部下の心を動かすリーダーがやっていること』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

部下の心を動かすリーダーがやっていること
(画像=lime/stock.adobe.com)

あなた次第で、人の心はここまで動く

共感には、組織をガラリと変えるすごい力があります。

それは、デザイン会社Goodpatchの社内で行われたプレゼン大会でのことでした。
私がよく知っている企業で、とても印象に残っているエピソードです。
Goodpatchは東証グロース市場に上場もしている素晴らしい企業です。しかし2016〜2018年頃の急拡大の時期に、組織は崩壊しかけていたといいます。創業者の土屋社長はカルチャーを大切にする方ですが、よいチームをつくろうというカルチャーさえ、その当時は失いかけていたそうです。社内の空気は最悪で、離職者も相次いでいました。
詳しくは土屋社長のnoteで公開されていますが、さまざまな手を打つものの事態が好転しない中で、ある新卒社員のプレゼンで一気に潮目が変わります。
SXSWという世界最大級のクリエイティブ・カンファレンスへの参加資格をかけた社内プレゼン大会で、彼はマイクの前に立ち、こう言いました。

「僕は経験も少ないし、ノウハウのプレゼンもできないけど、このGoodpatchの事が大好きです! 僕はこの会社を世界で一番有名なデザイン会社に成長させたいです! SXSWでGoodpatchを世界に売り込む経験をさせてください!」
(引用元:https://note.com/naofumit/n/na27fc54d1d68

それは、洗練されたビジネスプレゼンではありませんでした。むしろ、言葉の端々にぎこちなさがありました。
けれど、聞いていた社員の多くが心を打たれたのです。長く在籍していたメンバーたちも、誰も口にできなかった「会社を好きだ」という言葉を、心の中で再び取り戻しました。この出来事をきっかけに、チームは再生していきました。
社内のSlackには「応援してる」「あの発表、すごく良かった」といったコメントが並び、社内の温度が上がっていきました。論理でも制度でもなく、一人の想いがチーム全体に「熱」を取り戻させた瞬間でした。

企業のパーパスや理念の浸透、仕組みの構築など、マネジメントには様々な打ち手があります。どれも大切ですが、いかにも“しつらえられたもの”という感じがして、頭には入っても心に届かないことは珍しくありません。
そんなときに、身近な人の率直な言葉一つでざわざわっと心が動いてしまう。そんな経験がないでしょうか。

今職場のリーダーに求められているのは、この共感の力をチームに満たすことです。あなたが見せる姿勢や言動一つで、人の心は動きます。

人間観でマネジメントの型は変わる

時代が変わり、価値観が多様になり、働き方の選択肢も増えました。
けれど、「マネジメントの型」は、意外とアップデートされていません。そこに、今の組織が抱えるズレの原因があります。
そこでまずは、あなたのマネジメントタイプをチェックしてみましょう。

部下の心を動かすリーダーがやっていること
(画像=部下の心を動かすリーダーがやっていること)

このチェックリストは、アメリカの心理学者・経営学者ダグラス・マクレガーが1950年代に提唱した「XY理論」をもとに、つくったものです。
この「XY理論」は、人材マネジメントの原点とも言える考え方です。面白いのは、「人をどう信じるか」という一点でリーダーの行動がまったく変わってしまうこと。
先ほどのチェックリストは、「あなたがどう人を信じているか?」にも通じています。

たとえば、あなたが「人は基本的にサボるものだ」と考えているなら、自然と管理や監視が強くなります。一方で、「人は信頼されれば応えようとするものだ」と信じているなら、任せ方や声のかけ方が変わってきます。

つまり、マネジメントのスタイルは知識やスキル以前に、「人間をどう見ているか」というリーダー自身の人間観に左右されるのです。

部下の心を動かすリーダーがやっていること
(画像=部下の心を動かすリーダーがやっていること)

この「人間観の違い」を軸にしたのが、マクレガーのXY理論です。

X理論は「人は本来、怠ける存在であり、外からの管理や罰が必要」という考え方。これに基づけば、リーダーの役割は命令と監督による強制になります。
一方Y理論は「人は仕事を自然な活動と捉え、適切な環境さえあれば自発的に責任を引き受け、創造性を発揮する」という考え方。リーダーは権限を移譲し、メンバーの主体性を引き出すことに力点を置きます。

さらに1970〜1980年代、日本的経営を分析したウィリアム・オオウチは「Z理論」を提唱しました。これはX理論とY理論を踏まえつつ、人が組織の一員として価値観を共有し、集団的に働くスタイルに注目したものです。稟議制度や集団的責任、職場以外の人間関係を重視する文化などが特徴として挙げられます。
このようにマネジメント理論は、工程管理から始まり、人材の動機づけや組織文化の在り方にまで広がってきました。
そして今、私たちが直面しているのは、感情や共感をどう扱うかという次のステージなのです。

部下の心を動かすリーダーがやっていること
上林 周平(かんばやし・しゅうへい)
株式会社NEWONE代表取締役
大阪大学人間科学部卒業。
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア入社)。BPRや民営化に関するコンサルティングに従事。
2002年株式会社シェイク入社。人材育成事業の立ち上げを行い、商品開発責任者として従事。2015年代表取締役副社長に就任。
2017年9月エンゲージメント向上支援を目的に、株式会社NEWONEを設立。
著書に、『人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書』(アスコム)、『組織の未来は「従業員体験」で変わる――人手不足の時代にエンゲージメントを高める方法』(英治出版)がある。

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