本記事は、上林 周平氏の著書『部下の心を動かすリーダーがやっていること』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

部下の心を動かすリーダーがやっていること
(画像=Nadim_Graphic_Art/stock.adobe.com)

「自走化」する仕組みをつくる
「気合い」に頼ると、よい取り組みでも消滅していく

成長を加速させるフィードバックの起点づくりをしよう

どんなに良いカルチャーができていたとしても、人は慣れていく生き物です。
最初は新鮮で前向きな気持ちが強くても、時間が経つと少しずつテンションが下がったり、元の状態に戻ったりすることがあります。

そのため「推せる職場」を持続的なものにしていくには、評価やオンボーディングといった「仕組み」を整えることが欠かせません。属人的な頑張りに頼るのではなく、誰がリーダーになっても、どんなメンバーが入っても、一定以上のカルチャーと成長の循環が保たれるような土台をつくることが重要です。

まず、目標設定と評価の仕組みは、仕組み化の中でも中核となる要素です。一人ひとりのメンバーが自分の役割を自覚し、適度にストレッチした目標を持つことによって、自律的な行動や挑戦が生まれます。

ここで重要なのは、「目標」が作業の羅列にならないこと。チームや組織のビジョンと接続した意味のある目標ほど、メンバーの動機づけにつながりやすくなります。
また、評価は単に成果を測るための手段ではなく、成長を加速させるフィードバックの起点となるものです。評価の場で手応えを感じ、「次はもっと挑戦してみよう」と思えるような対話の質こそが、職場の文化を前向きに進化させる鍵となります。

最初のうちは、リーダーが時間をかけて一人ひとりに丁寧に目標を立てたり評価したりすることで、この仕組みはある程度機能します。しかし、メンバーが増え、業務が複雑になってくると、それだけでは限界が見えてきます。誰が担当しても一定の質が担保されるよう、職場全体で「どのような基準で目標を立てるのか」「どういう視点で評価をするのか」を明文化し、共有しておくことが大切です。

そのためには、職場内での教育の仕組みを整えることも必要になります。評価者向けのトレーニングや目標設定のガイドライン、フィードバックのチェックリストなど、実務レベルで再現性を持たせる工夫が求められます。こうした取り組みによって、仕組みは属人性を超えて職場の文化として定着していきます。

もう一つ大事な観点が、「オンボーディング」です。新しく入ってきたメンバーが、どのようにその職場の文化に馴染み、行動し始めるかというプロセス設計は、「推せる職場」を持続的に保つ上で非常に重要な鍵となります。

特に中途社員や経験者の場合、「経験があるからすぐに馴染むだろう」と放置してしまうケースが見受けられます。しかし、馴染むことと、その職場の価値観や行動様式を体現することは別物です。価値観や背景を共有し、「この職場では、こんなふうに物事を進め、こんなことを大切にしています」といった行動規範や考え方を丁寧に伝える必要があります。

私の会社では新しく入ってきた社員に対し「うちは他社と比べてお互い率直に意見を言う傾向が強く、そこから価値を生み出そうとしているので理解しておいてくださいね」とか「人事評価では個人としての成果と同じかそれ以上にチームで成果を出すことが重視されるので、周りの人が困っていたら積極的にフォローしてくださいね」と伝えています。

ここまで、新たに入社したメンバーの話をしてきましたが、異動でチームに加わる場合も同様です。同じ会社だからといっても、チームごとにカルチャーは違います。
新たに入社したメンバーと同様に、実施することが大事です。

もっとも、こうした仕組み化には時間がかかります。取り組みで一定の成果が見え始めていると、「今のままでも十分なのではないか」「仕組み化は後回しにしよう」と感じることもあるかもしれません。しかし、職場は常に変化しています。今いるメンバーがずっといるわけではありませんし、環境や期待も移り変わっていきます。

だからこそ、「推せる職場」を一過性のものではなく、持続可能な文化として根づかせるためには仕組みを整備する覚悟が必要です。時間と手間がかかるからこそ、取り組む価値があるのです。

部下の心を動かすリーダーがやっていること
上林 周平(かんばやし・しゅうへい)
株式会社NEWONE代表取締役
大阪大学人間科学部卒業。
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア入社)。BPRや民営化に関するコンサルティングに従事。
2002年株式会社シェイク入社。人材育成事業の立ち上げを行い、商品開発責任者として従事。2015年代表取締役副社長に就任。
2017年9月エンゲージメント向上支援を目的に、株式会社NEWONEを設立。
著書に、『人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書』(アスコム)、『組織の未来は「従業員体験」で変わる――人手不足の時代にエンゲージメントを高める方法』(英治出版)がある。

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