本記事は、上林 周平氏の著書『部下の心を動かすリーダーがやっていること』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
「できた理由」を言語化し、チームの成功体質をつくる
成功を「分析して味わう」ことで、チームは強くなる
「このチームだからこそできた」という実感を生み出そう
人が自分だけでできることには限界があります。
だからこそ、チームで取り組み成し遂げられる成果には大きな意味があります。達成の瞬間をチームで味わうことこそが、「推せる職場」に欠かせない要素の一つです。
個人での成功体験だけでなく、「このチームだからこそできた」という実感は、組織に対する帰属意識や誇りを強く育みます。
そして、この共同達成の実感は、チームの中に“前向きな空気”をつくるだけでなく、次の挑戦を後押しする重要な心理的基盤にもなります。
その鍵となるのが、「自分たちならやれる」と感じられる力、心理学でいう集団的効力感です。これは、個人の力の総和ではなく、互いの存在を頼りながら前に進める“チームとしてのできる感”。
集団的効力感が高まると、メンバーは難しい課題にも臆せず挑み、困ったときに自然と助け合える空気が生まれます。
この力を支えているのは、個人の「自己効力感」、つまり「自分にはできる」という感覚です。リーダーからの「あなたがいてくれて助かった」「その工夫、すごく良かった」という一言や、小さな成功をチームで共有する瞬間が、メンバー一人ひとりの“できる感”を確実に育てていきます。
そして興味深いのは、こうした「信じる力」は必ずしも過去の成功だけから生まれるわけではないということです。たとえ失敗があっても、「あれは次の成功のためのステップだった」と前向きに解釈できるチームは、勢いを失わず、むしろ挑戦し続けられるしなやかさ(レジリエンス)を手に入れます。
リーダーが果たす役割は、小さな進歩を拾い上げ、意味づけ、言葉にして返す。
その積み重ねが、個人の自己効力感を押し上げ、やがてチーム全体の集団的効力感へとつながっていきます。
「このチームなら、きっと乗り越えられる」
その確信が満ちたとき、職場には自然と挑戦の気風が生まれ、共感型マネジメントは真に機能しはじめるのです。
挑戦が続くチームは、「自分ごと化」が進むチームでもある
集団的効力感が高まると、不思議な変化が起こります。メンバーはただ任された仕事をこなすだけでなく、チームを良くすることそのものを“自分ごと”として捉え始めるのです。
人は、自分が手をかけ、心を配り、工夫したものを大切にしたくなる生き物です。だからこそ、挑戦の中で積み上がった経験や努力は、メンバーに「ここは自分の居場所だ」「このチームをもっと良くしたい」という感覚を育てていきます。
その結果、チームには小さな“自走の芽”が生まれます。
困っている同僚をそっと助けたり、会議で拾われていない課題に気づいて声を上げたり、任されていない領域にも前向きに手を伸ばしたり…… それは義務感ではなく、「このチームなら、きっと良くできる」という信じる気持ちの延長線上にある行動です。
こうした小さな“自発的な動き”の積み重ねが、チームを単なる集団から、互いを支え合える共同体へと変えていきます。
そしてその根底にあるのは、制度ではなく、リーダーが日々の成功や努力を丁寧に拾い上げ、意味づけ、言葉にして返し続ける営みなのです。
大阪大学人間科学部卒業。
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア入社)。BPRや民営化に関するコンサルティングに従事。
2002年株式会社シェイク入社。人材育成事業の立ち上げを行い、商品開発責任者として従事。2015年代表取締役副社長に就任。
2017年9月エンゲージメント向上支援を目的に、株式会社NEWONEを設立。
著書に、『人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書』(アスコム)、『組織の未来は「従業員体験」で変わる――人手不足の時代にエンゲージメントを高める方法』(英治出版)がある。
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